コレクティブ・ジーニアス(Collective Genius) - 集合天才-
最近、気になっているキーワードは"collective genius"です。日本では「集合天才」と訳されることもありますが、簡単に言ってしまうと「一人の天才に頼るのではなく、組織やチームで団結して新しいアイデアを生み出す」という考え方を意味します。
私がこのnoteという場で何度も言及している「知のイノベーション」とは、新しい基軸や新しい考え方であり、技術革新というシーズだけではないということ。つまりひらめきは、天才的才能ある人だけのものではない、まさにこの"collective genius"の力を最大限に生かす手法だと思っています。
日本人の持つ心のハードル
しかしながら実はこれが日本人にとっての強いハードルとなっていることも確かです。何がこのハードルに所以しているのでしょうか、私たちが受けてきた教育なのでしょうか。一から何か革新的なものを生み出す力がある、例えばアインシュタインやスティーブ・ジョブスのような人がいないと画期的なものは生まれない、とクライアントの方と話をしているとこう思い込んでいる節があると感じます。そんな嘆かわしいことばかりではないのに、、、。
「ビジョン思考」や「センスメイキング理論」を活用し弊社が携わってきた企業様とのプロジェクトでは、著名なデザイナーや素晴らしい経営者からだけ新しいアイデアが出るのではなく,あらゆる方によって新たなイノベーションが生まれていることをいつも実感します。全く新しい概念を突然創出するのは難しい。だけど、新しいアイデアや概念というのは天才だけができるのではなく、その母体にいる個人それぞれが自分ゴトで考える延長にあると信じているんですよね、私は。
少し前置きが長くなりましたが、、、。天才がひらめきだというのであれば、じゃあ私たちはどうやって新しいものを生み出すことができるのでしょう?今日はそんなことをテーマに書いてみたいと思います。
「あたりまえ」の呪縛 -事例-
ここで皆さんにちょっと想像していただきましょう。
このようなプロジェクトの進め方、結構ありませんか?これが実は「あたりまえ」の呪縛なんですよね。これまでの成功体験の延長線上であり、数的判断だけでプランニングをしてしまうのは、もちろん成功への最短ルートであるのかもしれません。しかしながらそれでは今までからの脱却はできないことも確かです。だって誰かがすでにやっているのだから。故にあえて「あたりまえ」を捨ててみるのです。
マネジメントチームからのフィードバックは、意外なものにあなたにはうつったのかもしれません。彼らが指摘した常識を外す、自由に発想する、「あたりまえ」を裏返す作業は、左脳から右脳への切り替えスイッチだと言えるでしょう。そしてこれが「センスメイキング理論」そのものなのです。
ここでプロジェクトリーダーの貴方が考えること、改めて自社の中にあるこのプロジェクトに対する「あたりまえ」の要素をできるだけ多くあげてみることです。
次に、ここでメンバーから上がってきた「あたりまえ」の逆を考えてみましょう。おそらく日常とは異なる違和感のある常識を考えることになります。違和感とは、身体知であって右脳で考える(感じる)ことにつながります。前述したように私たち日本人の中で社内とは「あたりまえ」が充満しているものです。アイデアの分解は、逆を考えることで独創性がかなり高まることでしょう。機械的な作業でありながら、このような「裏返す」行為は、面白いものです。
このような作業から何を導き出すことができるでしょうか?
昼間の安全に対して,夜はドキドキするような危険を感じる演出。日常では感じられない刺激的な異空間(光と闇、ジャスやレストランのプレゼンテーション)がソリューションに創出されるのかもしれません。
また、極めて人間的 とも言えるライフスタイル探しができる刹那的でもある場所、誰にとっても自由な雰囲気が感じられる場所ということもあるでしょう。さらにこれら新しいキーワードを分解した要素に、幅をつけていくことによってより独創性の高い組み替えが可能になるともいえるでしょう。
「あたりまえ」から「あまのじゃく」への脱却
弊社が行っているマーケティングに関するコンサルテーションでは、このようなステップでの導きをファシリテートさせていただくことによって、新しいアイデアやコンセプト構築をご支援させていただいています。今、皆さんが保有しているものを組み替えるという作業は、実は前述した「あたりまえ」の呪縛がどうにも邪魔をしてなかなか自身だと脱却が困難でもある故に、私たちのような第三者が介入する意味があるのかもしれません。
新しいブランドを作る作業で、イノベーションを求められるとする時、全く新しい何かを創出するのではなくて、既にある要素を「組み替える」ことによって創出することで「新結合」を創っていく。その為にはチームであるメンバーたちとの絶え間ない対話が必要なのです。
私に言わせると、一人の天才に(あえて言いますが)凡人の集団が対抗することは間違いなくできるのです。希望を失わず挑戦する、考え続ける。
実はこれもまた「認める」「決断する」ってことが難しいっていうこともあるのですが・・・。
2021年もまもなく終わりますが、来る2022年も努力し続ける凡人の一人として私もまた考え続け、挑戦し続けたいと思っています。
(完)