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アイデア創出プロセス (IDEATION) 前半

以前の備忘ログでも触れましたが、ID (イリノイ工科大学デザインスクール) には、以下4つの学科があります。

-① Master of Design (MDes) :
専門職としてのデザイナーを目指すプログラム (2年)
*サービスデザイナー / UX (インタラクション) デザイナー / プロダクトデザイナー など
*デザインバックグランド (グラフィック / インテリア / プロダクト/ UX (インタラクション) / デザインリサーチ / 建築などの経験) があり、新たなデザイン領域の知識の得るために学びに来ている人が多い

-② Foundation :
デザイナー経験の無い人が、デザインの基礎を学ぶプログラム (半年) 
*終了後は、上記MDesカリキュラムに合流

-③ Master of Design Method (MDM) :
ある程度の職務経験のある人が、必要なデザイン方法論の知識を学ぶプログラム (1年)
*ビジネスバックグランドがあり、デザイン方法論やマネジメントを学びに来ている人が多い (選択できる科目はMDesと共通)

-③ Phd : デザイン方法論研究の博士課程
*エコシステムデザイン 、サステナビリティデザイン、未来 (スペキュラティブ) デザインなどの領域

全体的な年齢分布で言うと、大学を卒業して直ぐ大学院に来ている20代前半から、ある程度職務経験のある30代前半までの学生が一番多いです。(*若い留学生は、Masterの学位を取得してそのままアメリカで働きたい人が多い。)

私が所属している Master of Design Method (MDM) の学科は、もう少しマチュアな感じで、年齢層は20代後半から50代中盤と幅があります。アメリカの大学院は、学びたい人が誰でも学べるオープンな環境が良いなと思います。現在のMDMの生徒数は、私を入れたフルタイムが5名、働きながら通うパートタイムが10名ほどです。バックグランドは、スタートアップ経営者・マネージャー / 企業の経営企画・マネージャー・マーケター・インハウスデザイナー / 広告クリエイター / デザインコンサルタント / ITエンジニアなどバラエティに富んでおり、大学院で学ぶ目的も人それぞれです。 

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さて本日ですが、私が学んでいる目的の一つである、アイデア創出方法について備忘したいと思います。どうすれば、クリエイティブなアイデアを創出することができるのでしょうか?

冬休みで少し時間があるので、デザインのプロセスを学ぶべく "㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画" という展示会に行って来ました。著名なデザイナーたちの制作過程を公開しているイベントで、彼らがどのようなプロセスを辿って最終アウトプットに至ったかを伺い知ることができます。(*2019年11月22日 (金) - 2020年3月8日 (日) まで)

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この展示イベントに参加して、私が最も感じたことは、彼らがアイデアを次から次へと試作 (Prototyping) していることです。その量は半端なく、ある意味狂気を感じさせられるものでした。メモ / 図表 / スケッチ / モック(模型) などあらゆる形態で、頭の中にあるアイデアを現実世界に落とし込み、視える化しながら試行錯誤の検討をしています。このプロセスは、本来であれば門外不出、非常に貴重な体験をさせて頂きました。

デザインスクールの教えの一つに、"Build to Think" という言葉があります。これは文字通り、考えるために作る、または作りながら考えるということを意味します。上記の展示イベントで私が感じたのは、まさにこの "Build to Think" の哲学が、デザイン過程におけるアイデア創出の王道であるということです。

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私はビジネスバックグランドから来ているので思うのですが、一般的なビジネスプロセスは、"Think and Build" です。企画フェーズから始まり、先ずは時間をかけて戦略とコンセプトをしっかり考え練ります。その後、企画決裁プロセスを通し、予算承認後に実行フェーズ (やっとMake) がスタートします。しかし、私も多くの苦い経験をしましたが、企画フェーズで打ち上げた抽象的で理想的、決裁を通すための言葉巧みなコンセプトは、実行フェーズでは役に立ってくれません。当初、意気揚々と掲げた理想は萎み、軌道修正を余儀なくされ、企画フェーズで全体の時間を取り過ぎているため時間切れとなり、前例と似たような陳腐なアイデアに着地してしまうのです。

この傾向は、日本企業のビジネスプロセスで特に顕著な気がしています。私は大学卒業後に、アメリカ系のコンサルティング会社で働いていたことがあるのですが、実は最初に教えられた仕事の進め方が "Build to Think" でした。とにかくその日の結論を一回出せ、そしてそれを叩き台にしてまた次の日に考え直せという教えです。その後、日本の企業に転職したのですが、仕事の進め方は全く異なっていました。結論は安易に出さずできる限り先延ばしする、慎重に企画を練り、最終的に論理的に美しいコンセプトを作り上げます。一見、資料は整然として美しく見えますが、考え過ぎている気がします。組織の決裁プロセスを通すために、ロジック作りが目的化しているのではないかと感じてしまうのです。

ちなみに、日本企業で主流の "Think and Build" は、上流過程から下流過程に進めるStep by Stepの手順を大事にするので、高低の水流を比喩してWaterfall Model (ウォーターフォールモデル) と呼ばれます。
(*一概に、Waterfall Model が悪いと言えないこともあるようです。例えばスペースシャトルの開発など、膨大な予算と人命を預かる類のプロジェクトで、リスクが異常に高いため、Waterfall Modelが適しているという話もあります。)

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しかしながら、一方の "Build to Think" の哲学で一世を風靡した日本の企業があります、リクルートです。私は今でもこの行動規範が好きなのですが、創業者である江副浩正氏によって作られた旧社訓、"自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ" です。 (*1989年に公式な社訓としては姿を消した) まさにこの言葉は、"Build to Think" を言い換えており、自ら作り出した試作品 (Prototype) によって、己の思考を刺激し、試作品とアイデアのCo-evolution (イノベーション創出への好循環) を作り出していくことを示唆する名言だと思っています。(*他にも調子が良かった頃の日本の製造業は、まだ町工場だった頃の古き良き時代の文化である "Build to Think" を実践していたように思われます。)

この "Build to Think" 哲学ですが、実は思考をドライブ (刺激) していくという重要な意味を持っているのです。(続く)

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