「遊び方」を伝えられる人が稼げる時代に
令和。新しい元号を記念してヤフーがインタビュー特集を公開していた。
どれもすごく面白いインタビューだったが、共通点があるインタビューが2つ目にとまった。
AIによる代替で可処分時間が増えることによって、人はもっとアートやスポーツやエンターテインメントや料理といった、より人間らしいことに時間を費やし、生きがいを見いだしていくことができる。 孫正義
AIを活用して一人ひとりの労働時間を短縮できれば、1日の労働時間は2〜3時間になるというイメージです。誰もがクリエーティブに楽しく働いているし、余った時間で自分の趣味を楽しんだり、家族と過ごしたりできるようになる。 平野未来
間違いなく、これから10年で人々の余暇が増える。それも、AIが大幅に増やしてくれる。孫さんが言うのだから間違いない。ぼくは、令和はその余った時間を豊かに過ごす方法を教えてくれる人に価値が生まれてくる時代になると思う。
いま世の中にはエンターテイメントが溢れている。ネットフリックスやアマゾンプライムは無限に映画やドラマを見せてくれるし、ぼくは最近数年毎年10万円以上マンガをアプリで購入しているが、マンガや書籍も以前よりずっと簡単に買えるようになって、やろうと思えば何時間でも楽しくインドアライフが送れるだけのコンテンツがいつでも手に入る。
ネットフリックスはコンテンツに1年で1兆円投資をしている。インターネットに乗せて世界中に配信できる映像コンテンツを作ることができるクリエイターが価値を認められて、稼げる時代は平成の時代にもうやってきている。
では、スポーツやアウトドアの楽しさを伝えられる人、つまり「体を動かすエンターテイメント」を提供している人はどうだろうか。
ぼくは個人的に2012年にバックカントリースキーを始めて、2014年から強くコミットしているFreeride World Tourの仕事を通じて、普通の人よりはずっと多くの山岳ガイドさんやスキーインストラクターの方など、「山での遊び方を教えてくれる人」と話してきた。
ガイドは、他の人が知らない場所、1人では行けない少し背伸びした場所に連れて行ってくれ、見たことのない景色を見せて、感じたことのない体験をさせてくれる。スキーインストラクターは、いつも滑っている場所がもっと楽しくなる方法を教えてくれる。それぞれ、これからの時代に必ず価値が見直される仕事だと思っている。写真や映像でそれぞれのスポーツの楽しさやカッコよさを伝えられるアスリートも、アクションカメラやスマホが普及した時代には、大きなスタジアムが無くても何万人もの人に伝える力を持てる。
しかし残念ながら、いまはそのいずれの職業に就いている人も、自分の業界全体に対してポジティブな未来が描けている人は少ないと思う。
令和の時代、というとだいぶ大層な感じになってしまうが、これからの自分の仕事は、山で遊ぶのが楽しいということをできるだけ多くの人に伝え、その遊び方を知っている、そして伝えられる人の価値を高めることだと思っている。
日本には、アジアのどこの国にもない豊かな自然がとても都会から近いところにあるし、そこで遊ぶカルチャーが100年以上前から有り、その上に最新の理論を身に着けた遊びのプロフェッショナルも存在する。
飛行機で5時間圏内に「山の遊び方」をまだ知らない国がたくさんある。中国に、日本はGDPだけでなくテクノロジーや研究開発の分野でもボロ負けしているが、外で遊ぶ技術は日本の圧勝だと思う。外で遊ぶやりかたを伝える新しい事業をはじめるのに、日本はいま世界で最も適した場所だと思うのだ。
もちろん、外で遊ぶのは山に行くだけではない。例えばぼくが10歳から大学卒業までやっていたテニスのインストラクターやトレーナーなども、同様だと思う。自分がまず取り組むのは「山」特に雪山をテーマにしているが、川とか海など他のフィールドや、他のスポーツの業界の人にも、お手本になるような仕事をしたいと思っている。
フリーライドスキー/スノーボードの国際競技連盟、Freeride World Tour(FWT)日本支部で、マネージングディレクターおよびアジア事業統括をやっています。