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特集 職場のアルコール問題の解決

 生活習慣病を引き起こすような飲酒~重度の依存症まで様々な問題を抱えた方が現役世代の中にも大勢います。
 産業精神保健学会が発行する『産業精神保健2024 年 32 巻 2 号』で、「特集 職場のアルコール問題の解決」が6月20日に公開されました。全文がPDFで無料でダウンロードできます。
 臨床の現場と同じく、産業保健の現場でも、飲酒問題は以前から重要性が指摘されているのの、学会誌で、こういった特集が組まれることは稀です。本学会では、2011 年の第19 巻2号以来になるそうです。

 当センターに入院される方の平均年齢は50歳代半ばで、現役世代の治療を行う経験が私も多いこともあり、依頼を受けアルコール使用障害の入院治療と職場連携」を寄稿しました。
 
 私以外の11名の筆者も、第一線で活躍している人ばかりで、いずれも実践的な内容です。 
 特に、臨床ではなく、新日鐵住金株式会社 鹿島製鐵所で専属産業医として働いていた経験のある田中完先生「職場のアルコール問題と予防教育」は、産業医ならではの職場の飲酒文化への介入が興味深かったです。以前、田中先生が講演で「製鉄所は、仕事が終わったら飲むが当たり前の世界ですが、ノンアルコール飲料だけしか出さない飲み会なら職場から援助が出るようにしたら、意外に好評でした」と話していたのを記憶していました。
 今回の寄稿では、職場でノンアルコールパーティー(Non Alcohol Party; NAP)を経験してもらい、その前後にアンケート調査(n = 2,915)を行った結果が示されています。それによると、「アルコールがない宴会はありえない」が、26%から4%と6分の1に減少。「あっていいと思う」が39%から84%と倍増していました。
 NAPを経験して「意外に良い」と感じた人もいるでしょうし、アルコールのある宴会が好きではないことを言い出しにくかった人が、機会を与えられたので、率直な意見を表明した人も少なからずいたのではと推測します。
 NAPへの支援額はしれたものですので、コスパの良い飲酒文化への介入ではないかと考えます。
 皆様の職場でもいかがでしょうか?