ゴミから肥料。畑でつながる:山﨑 紀奈里
--- 私の選択・私の行動 ② ---
「これ、何かおかしいんじゃないか」
「この状況、なんとか変えたい」
素直な気持ちを、行動に移す。
大規模じゃなくても、自分の手と足を動かして。
今の社会に必要なのはそんな若者なんじゃないか。
これは自分で選択し、自分で行動する若者のストーリー。
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今回紹介するのは、とても元気で笑顔が印象的な山﨑紀奈里(やまさき・きなり)さん!岡山県日生(ひなせ)町で新しい肥料を開発し、農業と食事を通じて地域が明るくなるきっかけ作りをしたと聞き、インタビューしてきました。現在は慶応大学の3年生として勉強していますが、高校生時代に取り組んだとてもユニークな「あまvege(あまベジ)」という活動についてお話ししてもらいました。
——— まずは活動内容について教えてください。
あまvegeは廃棄処分される、牡蠣の殻やあまもと呼ばれる海藻を肥料として使うことで、エコで高品質な日生(ひなせ)独自の野菜を育てることができる農法です。小学生から70代まで、様々な世代と一緒に野菜を栽培しました。できた野菜を収穫、調理し、食事会を開催することで町での交流の場を作りました。
——— 活動のきっかけは何だったんですか?
きっかけは、私の違和感です。私は幼少期を日生で過ごし、小学生からは別の場所で育ちました。高校生になって、ボランティア活動で日生を訪れたのですが、その時に違和感を感じました。昔の日生は様々な声が響き、活気がある様子でしたが、久しぶりの日生は、人が少なく、町が暗くなったように感じたんです。
実は平成の大合併で、日生は備前市に編入したのですが、イベントの管轄等を町ではなく市が担うようになり、町で人々が集まる機会が減ってつながりが希薄化して行ったのだと思います。
「これは私の知ってる日生じゃない!」と思い、幼少期にお世話になっていた婦人会の方と話したら、「どうにかしたい気持ちはあるけど若さがたりない」と言っていて、「私が若さは担うぞ!このおばちゃんを喜ばすぞ!」という思いで活動を始めました。
——— どうして牡蠣の殻とあまもに着目しようと思ったんですか?
日生が暗くなってしまった根本的な原因は、「住民の地域への無関心」だと考え、面白い活動をして、地域の関心を集めようと思いました。まず活動を考えるために、はじめに地域のいろいろな人に話を聞いてアイデアを練りました。
日生は牡蠣が有名なのですが、大量の殻がごみとして廃棄処分になります。同じように、網にかかって取れる「あまも」も、実は生態系にとってはとても大事な存在なのですが、漁師の人にとってはただのゴミでした。そして、町には持ち主がいなくなったり、継ぐ人がいなくて使われていない畑がたくさんありました。そこで、廃棄処分されているものを資源として使って肥料にし、畑を使ってみんなで野菜を育てればいいんじゃないかと思ったんです。別々の場所で聞いた話がどんどん繋がって、頭の中で綺麗な仕組み図ができた時の興奮は今も忘れません!玉ねぎや二十日大根など、色々な野菜を栽培したのですが、どれも普通のものより甘くておいしい野菜になりました。
——— 面白いですね!活動の結果として、何か変化を感じることはありましたか?
あまvegeで育てた野菜を使った食事会が、今までなかった町での交流の場の役割を果たし、人々をつなぐことができたと思います。料理や食事を一緒にしながら、町で困っている事を話し、それに対して色々なポジションの人がアイディアを出す。その結果として、町を活用し活動を始める人や地域へ関心を持つ人が増え、地域での活気が取り戻されつつあるように感じました。
また、地域の壁を壊すこともできたと思います。合併の影響で、山側と海側、2つの地域が一緒になっていた日生でしたが、交流はなく、「山の人の鈴木さん」「海の人の佐藤さん」という風にお互いを呼び合っていました。しかし、あまvegeは両地域のリソースを使わなければ成り立ちません。山側が畑を提供し、海側が牡蠣の殻やあまもを提供する。お互いのリソースを出し合って、一緒に野菜を栽培し、食事会をすることで2つの地域をつなぐことができたと思います。
——— 周りの反応はどうでしたか?
日生には祖父母や親戚も住んでいて、最初はいとこたちと「一緒に畑仕事しよう!」「おう、やろうやろう!」という感じでした。そのうちに家族や地域の方も加わって大きくなり、祖父母は今でもあまvegeを続けています!
高校生の時は、周りにそういう活動をしている人がいなかったので、「変わった子」って見られていました。先生方からも、周りと同じじゃないことや目立つことを指摘されることがあり、かなり気にしていたと思います。でも成人式の時に、同級生から「活動を見て、自分も何かやりたい、もっと外に出ようと思った」と言われて、良い影響を与えてたんだなと感じました。
そして、親や先生ではない大人に認められたり、自分のアイデアに対して面白いねって言われて、「みんな同じじゃなくていいんだ」と、自分の中の芯が強くなったと思います。
——— ありがとうございました!
(少しおちゃめなところもあるきなりさん。ニューヨークにて。これから海外でも時間を過ごして、違う価値観や考え方にも触れたいと話していた。写真:本人提供)
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<インタビューを終えて>
話を聞く前は、捨てられているものから新しい肥料を作るって、「いい意味でめっちゃぶっ飛んでる!」と思っていました。でも、実際に話を聞いてみると、地元に対する愛着、なんとかしたいという思いを元に、しっかりとリサーチをした上でのアイデア・活動だったと知り、工夫が面白い!と感じました。
大事にしていることは、「おもろい!と思うかどうか」。難しいことやハラハラすることを前にすると火が付く性格だそうで、強い好奇心を原動力に行動しているのが伝わってきました。
話を聞いているだけでこちらもワクワクし、自然と笑顔になるような、行動力と好奇心に溢れたきなりさんでした。
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