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時間とテクノロジー(佐々木俊尚)ほか【読書メモ】

常識や前提だったものが大きく変わろうとしつつあるこの世界と、我々はどのように向き合うべきなのか。これからの時代について思考するためのヒントとなる書籍をご紹介!
…みたいな原稿を仕事でつくることになって、勿体ないからnoteにも残すことにした。

【LIFE SPAN 老いなき世界(デビッド・A・シンクレア、東洋経済)】


「老化は病気であって、治療できる」と言い切ります。そうしたら健康寿命が飛躍的に延び、社会経済や人々の価値観は大きく変わっていく…。最新の知見から老化のメカニズムを説明。生体のアナログ情報である「エピゲノム」の変化こそが老化の原因なのだと熱弁します。
著者曰く、癌とか心臓病とか糖尿病とか個々の病気にフォーカスをあてるのはもはやナンセンスで、老化それ自体が病気であると。老いなき世界は夢の話ではなく、いまや仮説の域を脱して実証段階にさしかかっており、近い将来において「老化の治療」が医療界のパラダイムシフトになるかもしれません。
で、結局老化を遠ざけるにはどうすればいいかというと、「食べる量を減らせ!」「くよくよするな!」「カラダを動かせ!」と、至極あたりまえのことになるのですが、本書ではその結論に至るまでの説得力がすごい。約500ページ、厚さにして食パン4枚切りくらい。読み応えある一冊です。

【時間とテクノロジー(佐々木俊尚、光文社)】
著者の圧倒的筆致力に引き込まれ、ページをめくる手が止まらないこと請け合いです。思考の補助線の引き方もスマート。さすが。
「過去があって今があり、それまでの経験を活かして未来へ向かっていく」…といったように、時系列に沿った因果関係をもっているのがフツーの感覚だと思うのですが、のっけからその概念が覆されます。
人工知能AIとかディープラーニングとか、何となくのイメージしかなかったことついても丁寧に理屈から解説。
AIというのは「人間には見つけられない要素や特徴を見つけ出し、数字でそれらを淡々と出力する」らしいです。そうすると私たち人間の頭脳の働きかたとは根本的に異なるわけで、AIが弾き出す答えには十分な効果はあっても、そこに人間が期待する“意味”や“因果関係”はないということになります。AIと共存する世の中になったとき、人間側がそれを受け入れることができるのか。そんな本質的な問いも投げかけられます。なんだか哲学的です。

【2040年の未来予測(成毛眞、日経BP)】
無人店舗、洋上風力発電、手のひらをクレジットカード代わりに決済、新聞販売店を物流拠点として活用…などなど。20年後の私たちの生活の変貌ぶりに驚かされはしますが、今現在の国内外の状況やテクノロジーの進み具合など正確なファクト(事実)に基づいた予測なので「ああ、きっとそうなるんだろうなー」と妙に納得できます。
私たちはどちらかというと自分がいる業界や内部環境のほうに目を向けがちですが、不確実性の高い近未来を見通すためには、異分野から学びや気づきを得たりすることも大事かもしれません。


以上。




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