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渋沢栄一 上・算盤編 下・論語編(鹿島茂)【読書メモ】

政治家や学者メインのお札の肖像に、初めて実業家が採用されたのは一体何故だ。 そんなこと知らんけど、この本で渋沢と因縁のある藤山雷太という人が言っている。学者としては福沢先生、実務家としては子爵(渋沢栄一)あるのみと。 自分の力が必要とあらば、すぐさま動く行動量。 喜寿を超えた齢で、険悪な日米双方から意見を吐き出させた上でアウフヘーベン的結論にもってこうとする頭の柔軟さ。 渋沢栄一は、自分が何のために生まれてきたのかを明確に分かっている人だ。 それは天啓とかお導きではなく、

    • 沈まぬ太陽(山崎豊子)【読書メモとamazonプライム】

      泣く子も黙る山崎豊子の最高傑作。小説とamazonプライムのWOWOWドラマを同時平行で。 あらためて思うが山崎豊子の取材力はハンパない。まさにプロフェッショナル仕事の流儀。 それだけにちゃちな映像化だったら往復ビンタもんだと思ってたが、なかなかいいんじゃないか。昔読んだとき御巣鷹山編が衝撃すぎて後の会長室編の記憶が定かでなかったけども、複雑な利害関係が原作に近いカタチでうまくまとまっている。 長塚京三のポーカーフェイスな生真面目演技が、やむを得ず引き受けた国航トップの重

      • 時間とテクノロジー(佐々木俊尚)ほか【読書メモ】

        常識や前提だったものが大きく変わろうとしつつあるこの世界と、我々はどのように向き合うべきなのか。これからの時代について思考するためのヒントとなる書籍をご紹介! …みたいな原稿を仕事でつくることになって、勿体ないからnoteにも残すことにした。 【LIFE SPAN 老いなき世界(デビッド・A・シンクレア、東洋経済)】 「老化は病気であって、治療できる」と言い切ります。そうしたら健康寿命が飛躍的に延び、社会経済や人々の価値観は大きく変わっていく…。最新の知見から老化のメカニ

        • つくるをひらく(光嶋裕介)【読書メモ】

          芸術や創作などのアウトプットをテーマとした対談集。あらゆる角度から本質を突きまくる金言がいっぱい。 著者が自分のドローイング作品をどこで描き終えるかを決めるのに、ちょうどいいバランスのとこで一旦自分を殺して後は鑑賞者との対話に委ねるみたいな話があったけど、仕事でプレゼン考えるときも資料を何度も微修正したり順番変えたりして、もうあとはその場のノリで盛り上げりゃいいか的なぶっつけやっつけで終わらせるのと似てる。いや全然違うな。 とにかく、音楽も絵も小説も写真も「俺様の個性どう

        • 渋沢栄一 上・算盤編 下・論語編(鹿島茂)【読書メモ】

        • 沈まぬ太陽(山崎豊子)【読書メモとamazonプライム】

        • 時間とテクノロジー(佐々木俊尚)ほか【読書メモ】

        • つくるをひらく(光嶋裕介)【読書メモ】

          心が折れた人はどう立ち直るか(遠山高史)【読書メモ】

          やや釣りタイトル気味なベテラン精神科医のコラム集。 歳をとるにつれ、事件やゴシップがあるとむしろ加害者側にシンパシーを覚えることが増えてきたのは何故だろう。性格が歪なのか、少しは場数を踏んだからなのか、それともただ病んでいるのか。 法やモラルの一線を越えるのは特殊な人たちと思いがちだが、よくよく考えるといまの自分の地続きにいるよねってことに気付かされる。 明日は我が身。

          心が折れた人はどう立ち直るか(遠山高史)【読書メモ】

          フォン・ノイマンの哲学(高橋昌一郎)【読書メモ】

          ジャズのジャケ写みたいなカバーにつられ手にとってみたところ、マッドサイエンティストと呼ばれたキングオブ天才の生涯が語られる。 「いま生きている世界に責任をもつ必要はない」 環境保護団体が聞けば怒り狂うような言動でマンハッタン計画に深く携わったわけだが、道徳面では敢えて思考停止にしてメンタルを保とうとしたのだろうか。科学優先主義とか非人道的っていうのは簡単だが、人間そんなにシンプルではない。 それにしてもノイマンを取り巻く科学者たちに天才が多すぎる。天才だらけ。

          フォン・ノイマンの哲学(高橋昌一郎)【読書メモ】

          世界は贈与でできている(近内悠太)【読書メモ】

          ギブ&テイクとかウィンウィンとかインセンティブとか報われる報われないとか言ってるレベルじゃ「贈与」を受け取ることも与えることもできないらしい。 まして誰かのせいにして文句ばっかり並べてるような世界は「憎悪」でできている。(←うまいこと言った) なので見返りなど期待することなく、どこかの誰かのために何気なく良い行いをする。これを無意識的有能状態で出来るような人が、この本でいう贈与の差出人なんじゃないかと思う。 人の品性にも通じるようなお話。

          世界は贈与でできている(近内悠太)【読書メモ】

          想像ラジオ(いとうせいこう)【読書メモ】

          どこからともなくゴキゲンなラジオ番組がオンエアされるのだが、当のDJ本人も状況がよく飲み込めていない。そして番組を聴くことができるのは…。 ラジオって聴覚だけで受け取るので自分に向けられて発信されているような没入感があるし、リスナーたちがひとつのお題に群がってみんなで番組を作り上げるみたいなクローズドなSNS的要素もある。番組なら当然最終回もあるわけでいつまでもダラダラ続くことはない。 そういう特性あるメディアを軸に、死者と生者あるいは当事者とそうでない者との関係を掘り下

          想像ラジオ(いとうせいこう)【読書メモ】

          隠された十字架 法隆寺論(梅原猛)【読書メモ】

          謎に満ちた再建法隆寺。聖徳太子の怨霊鎮魂のため極悪一族藤原氏が暗躍する。 もうマジで頼むから成仏してくれという彼らの必死さが、金堂本尊・塔の四面塑像・東院夢殿建設・聖霊会などのミステリーにリンクしているらしい。 それなのに後半「怒れ!太子よ」などと著者が急に煽ってくる。お願いだからそっとしてあげて。

          隠された十字架 法隆寺論(梅原猛)【読書メモ】

          LIFESPAN 老いなき世界【読書メモ】

          老化は病気であって治療できるという。 そしたら健康寿命が飛躍的に延びる。 晩年の苦痛を伴わなくてもいいかもしれない。 社会も生き方も価値観も大きく変わらざるを得ないらしい。 厚さ食パン4枚切りぐらいで読むのにかなりの苦痛を伴う。

          LIFESPAN 老いなき世界【読書メモ】

          ヤクザときどきピアノ(鈴木智彦)【読書メモ】

          何この思わず惹きつけられるタイトル。 ヤクザ専門のルポライターが、レイコ先生のレッスンを通して、めくるめくピアノの世界に開眼しまくる。 「こんなふうに弾きたい」とか「あの人のような立ち居振る舞いをしたい」とか、憧れの誰かを徹底的にモノマネしているときは集中力が高まる。自分を完全に捨て去るプロセスの中で研ぎ澄まされていったものが、結局自分自身だったりする。 …みたいなことをふと思い出した。仏教的境地。

          ヤクザときどきピアノ(鈴木智彦)【読書メモ】

          日本習合論(内田樹)【読書メモ】

          いろんな文化をハイブリッド化してきた日本人ってヤバくない?的なことを、もっと知性溢れる感じで著した書き下ろし。 普通の人は、そこに書いてあることや誰かが声を出して言っていることに対して、ああだこうだと賛否論じるものだが、内田樹が凄いのは、書いていないことや抜けてることに目をつけてズバズバ斬っていくところにある。 多数派の同調圧力に息が詰まるくらいなら、逆張りの発想を持ったマイノリティーでありたい。

          日本習合論(内田樹)【読書メモ】

          地下室の手記(ドストエフスキー)【読書メモ】

          半分以上何言ってるかわかんないモノローグの激ムズ小説。 自分も含めた取り巻く世間に向かってひたすら毒を吐き続ける引きこもり男。いったい何があったのかと思えば、心底嫌いな奴等の飲み会にわざわざついて行ってマウント取ろうとするがまったく相手にされず凹んでたところにモテ期到来!みたいな回想を語り出す。かなりの偏屈ぶりを発揮している。 がしかし、そんなこの男に対して何とも言えない愛おしさを覚えるのは何故だろう。どうでもいい小さなくだらないことに縛られたり苦悩しちゃう頭でっかちで何

          地下室の手記(ドストエフスキー)【読書メモ】

          阪神でクラスターが出たというニュースに「そんな中、GoToトラベル東京再開」というニュースをつなげる朝の情報番組。 「そんな中」って余計だろ。それぞれ独立したニュースだろ。

          阪神でクラスターが出たというニュースに「そんな中、GoToトラベル東京再開」というニュースをつなげる朝の情報番組。 「そんな中」って余計だろ。それぞれ独立したニュースだろ。

          ジャズ喫茶論(マイク・モラスキー)【読書メモ】

          日本独自のカルチャーを、日本人以上に日本人的な外国人著者が論考する。 昔のジャズ喫茶は、内なる世界への没入を余儀なくされる禅寺のような、あるいは一蘭の「味集中カウンター」を彷彿とさせるような、アングラ感漂う様相だったらしいが、スタンドアローンで音を楽しみたい人にとってはそれはそれで居心地のいい空間だったのだろう。 ライブハウスやフェスみたいなイベントが軒並み苦境に立たされている今、ジャズ喫茶をヒントに、そういう寡黙でインドア志向で静かに音楽鑑賞したい層へ訴求する何かがもっ

          ジャズ喫茶論(マイク・モラスキー)【読書メモ】

          鳥肌が(穂村弘)【読書メモ】

          どんなときに鳥肌が立つか考えてみた。 夜の台所で黒光りした動くヤツを察知したとき ムクドリが群がる木の近くを通らざるを得ないとき さっきまでフレンドリーに話してたのに会議が始まった途端シリアス顔で反論カマされたとき 明らかにスベりそうな人が喋り始めたとき 笑顔のまま圧をかけられたとき 子役の演技が過剰気味なとき きれいにハモられたとき 寒いとき これでは著者のレベルに達することはできない。 類まれな観察力と想像力から編み出されるエッセイ。 鳥肌が立つのは生

          鳥肌が(穂村弘)【読書メモ】