紫陽花

 何年か前に、枯れかけた紫陽花の鉢を購入した。

 確か、母の日のプレゼントとして店頭に置かれていたものだと思う。
 花はもうなくて、茶色く枯れかけた枝葉は、誰かを喜ばせる瞬間が過ぎたことを物語っていた。

 けれども、紫陽花の生命力が強いことを知っていた。
 葉がひとつあるだけでも、根が生まれ、大きく育つ。

 それで200円くらいの値段で、紫陽花を購入して、庭の端に植えた。
 その頃の庭は、雑草が生い茂り、わたしも手をかけられる時間も余裕もなかった。片隅に植えた紫陽花がどうなるかも、実際は不安があった。

 今年の春。
 紫陽花の枝は明るい緑を増やしていた。雨風雪にも、猛暑にも耐えて、鉢にいた頃よりも枝をぐいぐいと伸ばした。枝は、わたしの腰丈にまで届く。
 枝々には蕾がたくさんついている。去年は薄青の花が咲いて、一輪だけ花瓶に刺した。紫陽花に毒があるので、あまり家に持ち込まないようにしていたが、一輪だけ玄関に置いた。
 今年の花は、去年の倍以上になった。どんな景色をみせてくれるのだろうかと、想像するだけで心が明るくなる。

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