「君と歩いた、この場所」「あなたと歩いた、あの場所」
「君と歩いた、この場所」
満開の桜並木が、すっかりと新緑に様変わりしたある日。
私は、その樹の下に立ち、しばらくの間見上げていた。
今年は、 この桜並木の下を歩き、 秋を越え、 冬を越え、 春を越えて、 過ぎ去っていく季節を見届けてきた。
今も思い出す、あのころの記憶。
君と歩いた、この場所。
一歩一歩が危なかしい君の歩みを、 笑いながら、私は見守っていた。
そばに来て、繋いだ君の手は、私の心を温めた。
その時の君の笑顔はかけがえのない大切な宝物。
決して形にはならない、心の中で鮮やかに光彩(ひかりいろど)る宝物。
そして今、私はその場所に立っている。
そこに、君はいない。
思えば、君はいつも私を見て笑っていた。
ずっとずっと柔らかな笑顔で笑っていた。
そんな笑顔が、 私の頭の中で、まるで陽の光のように輝いていた。 元気にしているかい。
楽しく過ごしているかい。
安心しているかい。
そう思ったその時、一陣の薫風が私の頬をかすめていった。
まるで柔らかな君の手が、私の頬を撫でていくかのように。
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「あなたと歩いた、あの場所」
元気にしてますか。
きっとあなたのことですから、大丈夫だと思っています。
私が危うい足取りで、あなたと歩いたあの場所、 満面の笑みで私を手を引いてくれた、あの時の温もり。
まだしっかり覚えていますよ。
あれからもう、ずいぶんと時間が経ちました。
それでも記憶は鮮明で、 まるで、ついさっきのような感覚にさえ思えます。
あなたはいつも私を元気づけてくれました。
いつも笑顔にしてくれました。
そしていつも安心をくれました。
あなたは、そろそろ、 歩みを変えてもいいと思います。
心配しないで。
あなたがもっともっと笑顔になってくれるのが 私にとって何よりの宝物です。
でもちょっとだけイタズラをしてしまおうかな。
ほんの少しあなたの頬を撫でさせてください。
あなたの温もりを少しだけ感じさせてください。
それだけで私は満足ですから。
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