初の百貨店でのポップアップショップ

2015年6月10日
4月の展示会から二か月後の開催となった初のポップアップショップ
4月の展示会で、静岡松坂屋の矢島さんにお声がけいただいときに、割と即答した。
ポップアップショップは自分が勤めていたブランドでもラフォーレ原宿の一階入り口でやったことがあった。
声をかけてもらうまでは、とにかくセレクトショップに置いてもらうことしか考えてなかった。しかし、売らないと、売り上げを作らないと会社を、ブランドを経営、継続していくことはできない。だから売れる場所ができた。それだけでも嬉しかったし、自分の考えてもなかった新しいことに挑戦するということに単純に楽しみになっていたのだ。

そして話を進めていくと、売り上げ目標が150万円ということになり、そして在庫数はその三倍用意する必要があると言われた。
この常識は全く知らなかったものだった。この理由はどの商品が偏って売れても、最終日まで全部のデザイン、型が店頭に出ている状態を保てるという手法である。そう説明されたわけではないが、自分で考えてそう解釈した。

150万円分の商品がそもそもない。それを三倍作るなんて、ものすごいリスクだし、原価もものすごいかかる。この在庫を作るからには残った在庫は必ずどこかで売らないといけない。ということはこれを決断した時点でポップアップショップを継続的にやっていくということは決まってしまったようなものだった。

どんな波だってまず飛び込んでみる。そしてどうにかして乗りこなせるように、頑張る。そんな感じの考え方だった。
ポップアップショップを一回やって、継続しないブランドが多いのは在庫を作るリスクが一番の理由だ。
ハイリスクハイリターンというが、やはりしっかりと利益を出すにはある程度のリスクを取らないといけない。しかし、それも工夫次第だ。取ったリスクもあとからリスクでなくなるような工夫が考えられればよい。

6月の開催に向けて、確実に結果を出すために、事前に現場をリサーチする必要があると思い、静岡松坂屋へ行った。正直に言うと、ものすごいショックをうけた。
今まで同世代としか関わったことのなかった自分的には衝撃だったのだが、百貨店内を歩く60代以上の方がほとんどだった。
この方たちに売るのかと。うちの服が受け入れられるわけがないと思ってしまったのだった。特に今からでは想像がつかないと思われるが、当時はかなり短いミニスカート的なものも出していたくらいで、メンズもレディスも細い形がほとんど、見るからに若い感じのデザインになっていたのだった。

これらの服が売れるわけがないと思い、スカートはまず膝より下の丈にし、カットソーの形も襟ぐりをせまくしたり、袖丈、身幅を広くしたり、今あるデザインを少しでも着やすい形にしようと思って大幅に修正を加え、それを450万円分も作ったのだった。売れる保証は全くない。大きな賭けだった。

しかし、どこかで、良いものは年代世代時代を問わず評価されるはずという思いがあった。普遍的なものを作っていくという考えがあった。
このポップアップショップが始まる前に2015AWの撮影をしていて、そのテーマは凩-kogarashi-というかなり渋いものを作っていたので、こういった変化にも対応できたのだと思う。

■ポップアップショップ前日の設営ではお客様の流れを意識して、ハンガーラックの位置を何度も入れ替えて、あーでもない、こーでもないとこだわっていました。
初のポップアップショップでしたが、壁に貼る大きなポスターや、天井から墨染めの布を垂らしたりなど、(後になってから、ここまで頑張って協力してくれる百貨店はあまりないことを知る)かなりこだわって装飾していただいた。

ポップアップショップ初日。お店で、完全にフリーのお客さんに現物を販売したのはこれが初めてだった。
一階正面入口の目の前のかなり大きなスペースでやったので、かなり大勢のお客様が観て下さり、とても嬉しかったのを覚えている。
この時沢山売ってくれたのがReiだ。彼女は最初のころは店頭に立ち販売を頑張ってくれた。未経験にもかかわらず、ものすごい勢いで売っていた。

自分はこれまでの展示会などで同世代の方々には沢山売ってきて販売をそこまで苦に思ったことなかったが、ミセス相手の接客はどうしていいかわからず、最初はかなり苦労した。そしてミセスのお客さんは悪気なく、商品に対しての指摘をバンバンしてくる。

デザイナーであり、作った本人であり、そういうミセスに対する耐性のなかった自分は少し傷ついたりしていたが、ミセスはそういう言い回しをするのが普通なんだと理解して、数をこなしていくと、慣れてきて普通に会話ができるようになった。今となっては全く苦手意識なく、どんなに強烈なお客さんでも仲良くなれる。むしろ強烈なお客さんの方が自分の顧客さんになりやすい。

今までの展示会では主に知り合いや、うちの顧客さん相手にやっていたが、こんなにもトラフィックがある(人通りが多い)場所でやったのは初めてで、不特定多数の方に
見ていただくという経験は初めてだったので、貴重な経験となった。

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