2 a.m.
深夜2時を少しまわったところ。私はまだ起きている。
子どもの頃から、この時間帯がなぜか好きだった。特別な感じがしていた。
小学生の時に、家のベランダから星を眺めるのにはまっていた。深夜2時ごろ、バレないようにこっそりベランダに出ては、学校で配られた星座早見盤と夜空を見比べていた。夜のひんやりとした風が好きだった。みんなが寝静まって、世界に自分一人でいるような感覚が好きだった。
でも、そんな私の秘密のあそびは禁じられてしまう。ある日、母にベランダに出るところを目撃され怒られてしまった。夜な夜な何してるの!宇宙人と交信してるの?だからあんたはおかしくなったんだ!と。
ちょうどそのころ、私は学校に行けなくなっていた。原因は色々あるけれど、根本的な原因は病気になったことだ。病気のせいで様子のおかしい私に、母は困惑していたのだと思う。藁にもすがる思いで、精神科に連れて行かれたこともあった。そんな私のことを、宇宙人と交信してるからおかしくなったと言うのだ。宇宙人。おまえは宇宙人だ、と。
私はショックを受けた。ささやかな楽しみを否定されたうえに、この発言だ。
地球に住む私たちだって、他の惑星の生き物(私はいると信じている)から見たらきっと宇宙人だというのに。
星座早見盤は、嫌になって部屋の片隅に追いやった。ベランダは、昼の明るいうちに出ることにした。
それでもやっぱり、深夜のあの感じが好きで忘れられなかった。なかなか寝付けない夜に、ベランダから見たかったはずの夜空を、窓から眺めていた。明るい夜もあれば、帷を下ろしたような暗い夜もある。星がよく見える日もあれば、見えない日もある。
深夜2時。多くの人が寝ている時間に起きていること。次の日が仕事だと、早く寝なければいけないけれど、今日は金曜日。今日というか昨日?明日は土曜日、お休みだ!明日というか今日?
新聞配達員のバイクの音が聞こえはじめる。大通りを車がぽつぽつと通っていく。深夜2時。
私だけの夜を、もう少し感じていよう。目蓋がまだ閉じないうちに、深呼吸して、夜を感じよう。
もう深夜2時。まだ深夜2時。
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