夏の盛りに、坂道がきつくなりました。 暑さのせい? と思っていたけれど、どうやら違う。太腿を触ると明らかに筋肉が落ちている。長い自粛生活で、運動量が減っていたのです。 「自転車に乗ろう」 と思い、買いに行くとめぼしいものは「入荷未定」か「2ヶ月待ち」。誰でも考えることは同じのようです。 その分ゆっくり探すことができました。買い物に便利なタイプ。真っ赤なスポーツタイプ、国産、輸入品などあれこれ検討。決められない日が一月ばかり続いたのです。 そんなある日、二子玉川「蔦
コロナ禍の第一波が収束に向い、各地域で緊急事態宣言が解除されつつあります。しかし、秋には第二波がくると多くの識者が予測。夏の甲子園をはじめ多くのスポーツ大会、コンサートなどが中止になり、私たちがかつての生活を取り戻すのは、まだまだ先になりそうです。 かつての生活。 と、私は、今書きました。書きながら「本当に、それは戻ってくるものなのだろうか」と疑いました。今回ばかりでなく、私はこれまでの人生で「かつて生活」を何度も失いながら生きてきたからです。 小学校を3回、転校しまし
定年退職には、格別な思いがありました。父が、腎臓がんで死んだのは59歳。定年退職まで、あと17日足りませんでした。以来、私の中で定年退職を迎えることが、父を超えること、そして恩返しだと思って生きてきました。 ところが、父が発病したよるも2年早く、私も同じ病を患ってしましました。定年退職が、遠のきました。「私も迎えられないかもしれない」そう思うと悔しさがこみあげてくる。謝罪の気持ちも去来しました。 幸い私は回復し、今年4月末日の退職日に向けて順調に時を過ごしていました。手帳
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【第2志望に落ちてしまった】 お母さんからメッセージが届いたのは、寒い日の晩でした。 「娘が、第2志望の中学に落ちてしまいました。受かると思っていたせいか。すっかり自信をなくしてます。ご飯も食べないし、言葉も少ない。第1志望の受験日も近いのに、親としてどう言葉をかければいいか・・・」 そんな内容でした。「すべり止め」に落ちる。私にも経験があります。なめていたわけではないけれど、落ちるとガタッと自信がなくなります。学力が届かなかった以上に、自尊心をズタズタにされます。
【ひきたはケチ】 小学校3年生のころです。西宮の小学校に通っていた私は、ある時イヤな言葉を聞きました。 「ひきたは、ケチや」 言われる覚えは全くありません。当時は、お金などふだんは使わないし、誰かに「ケチ」と言われるような話をしたこともありません。さぐっていくと、 「ひきたは、電話代がもったいないから自分のうちからは電話しない」 という話でした。自分でも意味がわかりません。しかし、夕方に下北沢のおばぁちゃんから電話があった瞬間に、その意味がわかりました。 少し前に
【すべてのルポは、ラブレター】 1980年代初頭を賑わせた事件に「三浦和義・ロス疑惑」がありました。保険金目当てに奥さんをロスアンゼルスで殺害した。今では何らニュース価値のない事件です。しかし当時は、海外での事件は珍しく、ロスアンゼルス、服飾の輸入販売業、持ち物がブランド品、女性遍歴多し!とワイドショーネタを次々を提供していきました。この事件をきっかけに、テレビは「海外ロケ」を頻繁に行うようになりました。ワイドショーが、社会的な話題を報道しはじめたのも、これがきっかけと言わ
【4年前の書き置き】 コロナ自粛になって、自炊する機会が増えました。男二人兄弟。「男子厨房の入らず」の昭和の教育で育った私は、料理がほとんどできません。最近になってやっと、簡単な料理は作れるようになった。しかし、茹で卵の正しい茹で方をつい最近知ったほどの料理オンチです。 これは4年前、母が私の家から帰るときに残したメモ。 納豆、ネギ、ヨーグルト。鮭二匹、冷凍。フライパン 中火で焼く。玉子、黒酢もずく。サラダは体脂肪減る。噛んで食べる。小松菜、ゴマ、おかかをかけて食べてく
【病室から校庭が見えた】 2016年5月に、腎臓がんの手術のために済生会中央病院に入院しました。手術は5月10日。初夏に向かう季節のときに、私は白い壁と薄いベージュのカーテンに囲まれた世界から出られなくなったのです。連休明けの混雑する時期で、個室はいっぱい。6人部屋になりましたが、幸いなことに窓辺のベッドを確保してもらいました。目の前に広がるのは都立三田高校のグランドです。少し寝返りを打てるようになると、私は飽きることなくこの景色を眺めるるようになったのです。 生徒が体育
【色を失った公園】 家から歩いて5分のところに、大きな公園があります。敷地の半分は小高い丘で、子どもたちが勢いよく駆け下りたりしています。私にとっては一番身近な「季節を感じる場所」。駅に行くには遠回りになるけれど、この公園に吹く風を感じながら通勤しています。 10年前はもっと賑やかな公園でした。桜の季節は、バーベQを楽しむ人であふれてました。大人が酒盛りする横で、子どもたちがバドミントンを興じる。平和で牧歌的な日本の春がそこにはありました。 しかし、そのバーベQが、