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【日常系ライトノベル #3】ラッキーはアンラッキーの始まり
※PCで表示したときに読みやすいように改行されています(スマホの方は読みづらくてすみません)
「先輩、応募来ていますよ」
「採りたいよな」
バッグを持つと指定した面接場所へ向かった
表参道で降りることにした
渋谷のイメージって「ラフな」感じだからだ
地下を通る電車の窓には嫌でも自分の顔が映ってくる
どうみても…疲れている顔だよな
周りを見てもスマホをいじっているか、寝ているかの変わらないいつもの様子
良くも悪くも歯車の1つというのが実感できてしまう光景だ
出口から明るい光が見える
ようやく美味しい空気が吸える
美味しいといっても淀んだ空からばらまかれたものだ
贅沢なんて言っていられない
渋谷のカフェで面接をするために足早と向かった
電車の中ではモノトーンで映えないファッションが
地上では急に個性豊かな華やかなものに変わる
立ち止まって見る余裕なんてないけど、ほんのわずかな目の保養にはなっている
青学だっけ?表参道のとこにあるのは…
学生が歩いている
高い建物の間に学生同士が仲良くお喋りしている
片手にはスタバのフラペチーノ
悔しいけど絵になるよな…
地方にはない絵だよな(ポツリ)
店内に入る途中、段差でつまづきそうなになるものの、
何とか鍛えた体幹で見事にセーフ
店員さんを見ると気づいていないようだ
ラッキー
こんなことで運を使うともったいない、そう感じてしまう
アメリカンを2つ注文した
振り返る暇もなくトレイが目の前へ
気づかれていないとはいえ、
目を合わせないようにして逃げるように店員さんから見えない死角になる奥の席を選んだ
「ここを使いたいので宜しいですか?」
隣でノートPCをカチカチしているOLさんのコートが邪魔なのだ
(面接時間の30分前)
時間までは仕事でもしながら待つことにした
途中で気になったので面接に来る子の情報を見て頭の中にインプットする
特に名前を間違えるといけないなと紙に何度か書いて覚えてみる
特に難しい漢字があるわけでも読み方に特徴があるわけでもない
むしろ特徴がなくて覚えにくいくらいだ
隣のOLさんが帰りかけることに気づいたので、
ふと時計に目をやると「ちょうど面接をする時間だ」
その子は来ていない
仕方ないのでショートメッセージを送ってみる
すぐに返事があればいいのだけれど…
10分後くらいに返事があった
「申し訳ありません。時間を勘違いしていて...いま電車で向かっています。」と
普通に考えれば、この時点でアウトだよなと思いたい
それでも面接をしたいのには理由がある
単純に人不足なのだ
AIが人に変わって仕事を奪うと言われているにも関わらず、必要なのだ
もちろん、人不足で悩むこともないところもあるだろうな
それだけ投資できる資金もないのが実情で人が欲しいのだ
心の中では「おいおい」と思いながらもショートメッセージには大人の対応で返事をする
その子は申し訳なさそうな顔つきで、
「すみません、遅れてしまって。本当にすみません。」という
面接前に何だか雰囲気がドヨーンとしている
世間話でもして雰囲気を変えようとするがどんな話題がいいのか悩んでしまう
結局、その子の耳からぶら下がっているイヤホンに助けられたと思ったが…
「来るときにどんな曲聞いていましたか?」
「あっ、これですか?いや、曲は聞いてなかったです」
…(沈黙)…
心の中で思う
「えっ、曲を聴いてないってことはそれはファッションなんですね」
「そっか、じゃあ時間も遅れたことだし、面接を始めましょうね」
「宜しくお願いします!」
若さってすごいなと思う
先ほども「ごめんなさい」の連呼で申し訳なさそうな顔をしていたのに
すっかり立ち直って元気のいい返事だ
(面接もほぼ終わり)
「今日はありがとうございました。 コーヒー飲んで帰ってくださいね。
明日の午前中までには連絡します。」
「ありがとうございます。じゃあ、連絡を待てばいいですね。」
「そうですね。 明日は掛け持ち先の牛タン屋のアルバイトは入っていますか?
もし入っているなら電話ではなくてショートメッセージを入れておきますけど」
「あ、どちらでも大丈夫ですよ」
「わかりました。お気をつけて帰ってくださいね」
時計に目をやると、30分くらいで終わる予定の面接が結局1時間くらいになっていた
これまでにない疲労がドッと襲ってくる
何かうまく表現できないけど、疲れてしまっている
なんか自分の会話力の無さに疲れた感じなのだ
わかりやすく説明する、いや説明したはずなのに同じ質問を繰り返されるのはなぜだろう
モヤモヤとした感じでカフェを出た
「で、今日の面接どうだった?」
「まあ、時間の勘違いで遅刻もありましたけどね。伝票に文字書いたり、数字の計算は出来る。
あとスマホは使いこなせていたのでハンディもすぐに使えそうなので一応採用しようかなと」
「それより人柄的にはどうだったの?」
「それが、ふわっとした感じでつかめなかったですね…」
「まあ、いいや。続きはメシでも食べながら聞くわ。
どこで食うよ?」
「なんか疲れたのもあるので、帰る途中がいいですね。
中華とかどうですか?」
「よし、じゃあ、中華にしよう」
「先輩、ここですよ、ここ」
ちょっと重たいドアを開ける
「ギ―、ギー、ギ、ギ、ギー」
何やら聞きなれない感じで店員さんがえっという感じで
こちらを見てる
「欢迎、多少人?」
「あっ、君は」
まてよ、俺って2つも嘘をつかれていたんだ
いや3つだ(きっと)
アンラッキーだ
(終わり)
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