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【童話 #26】おくじょうにさく花

※こども向けのおはなしです

今日、たっくんは大すきなお友だちとあそぶ日です。

あそぶ場所は小学校にしました。
たっくんたちはうんどうじょうにあつまりました。

日ようびのごごです。
天気もよくて、青空が広がっています。


たっくんのお友だちは空をながめて言いました。
「あのくもはわたがしみたいでおいしそうだね。」

たっくんはこたえます。
「ほんとだね。あれって食べれるんじゃない?」

おともだちもいいます。
「あんなにおいしそうにしてるから食べれるにきまってるよ。」

たっくんはうんどうじょうにあった、ちょうれい用の台をゆびさしました。「あの台にのったらくもがとれるかもだよね。」


たっくんとおともだちは、台にむかって走っていきます。

きょうそうするつもりはなかったのですが、みんな思いっきり走るので、
いつのまにかきょうそうみたいになってしまいました。

台までどれくらい走ったでしょうか…。
たっくんもおともだちもぜいぜいと言いながら、台のそばにすわりこみました。

たっくんとおともだちは台にのるじゅんばんを決めるために、じゃんけんをしました。たっくんは3ばん目になりました。

おともだちは台のうえにのって、あのおいしそうなくもをつかもうとしますが、まったくとどきません。

たっくんの番になりました。台のうえにあがってきましたが、とどく気がしません。たっくんは2回、3回とジャンプをしました。たっくんの手はくもにとどきそうにありません。


たっくんとおともだちは、どうしてもあのきれいでおいしそうなくもたべるためにかんがえました。

お友達がいいます。
「そうだ。こうしゃのおくじょうにいったらとどくかもよ。」

たっくんとおともだちはこっそりとあいているまどからきょうしつに入りました。
きょうは先生はいないとわかっていても、なんかドキドキします。

きょうしつにこっそりしのびこんで、おくじょうへつづくかいだんを、音をたてないようにすすんでいきます。


おくじょうにつづくドアのかぎはあいていました。
たっくんとおともだちは、ドアをそっとあけるとおくじょうへすすんでいきます。


たっくんがドアからおくじょうへすすもうとしたとき、あしもとに花をみつけました。コンクリートのひびわれたすきまから、ちょこんとさいている小さな花です。赤色の花びらがたっくんの方を向いてほほえんでいるようにさいていました。


たっくんはすこし気になりましたが、おともだちが先にいってまっているので、立ちとまらずにおくじょうへすすんでいきました。

次の日、たっくんはおくじょうにさいた花が気になりました。

休みじかんにおくじょうまで一人でいきました。
昨日見た花は、すこしだけげんきがなさそうにしています。
赤色のはなびらが少しだけ年をとったようにしわになっているところがあって、うつむいています。

たっくんはきょうしつへもどると、先生のつくえのよこにあったえんぴつをいれている小さなびんからえんぴつをとりました。
空になったびんに水をいれると、おくじょうへむかいました。


たっくんはおくじょうに1人ですんでいる花のことを気にかけるようになって、毎日水をもっていくことにしました。たっくんのおかげもあって、赤色の花びらはいつも元気で、たっくんの顔をみてほほえんでいます。たっくんはとてもとてもうれしい気持ちになりました。

ある日、たっくんが屋上からもどろうとしたときにかべのわきにひとかげがみえました。1人でおくじょうへ行くのも少しこわいのに、ひとかげに気づいたときはいっしゅん体がかたまってしまいました。


ひとかげに気づかれないようにきょうしつまでもどろうとしたとき、後ろから声がしました。


「わたし知ってるよ。毎日たっくんがおくじょうまで水をもって行ってお花に水をあげてるの。」その声は、おなじクラスのゆきちゃんでした。

ゆきちゃんはそういうと、たっくんのところまでかけよってきました。

たっくんがすこしおどろいたようすでいると、ゆきちゃんはたっくんのほっぺにかおをちかづけ、くちびるをたっくんのほっぺにふれるかふれないかくらいのかんじで「チュっ」としました。

ゆきちゃんは何もいわずにそのまま先にきょうしつにもどってしまいました。



ここから先はたっくんのおともだちにはないしょのお話です。

その次の日からは、たっくんとゆきちゃんはふたりでいっしょにおくじょうの花へ水をもって行っているようです。


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東田純平
ありがとうございます。気持ちだけを頂いておきます。