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#風の強い日を走ってきた君へ 卒業式を「自由な人生」の葬式にしてはいけない

卒業する皆さんへ。

ご卒業、おめでとうございます。

卒業する皆さんのために、いや、この3年間、がんばってきた人のために、教え子たちと一緒にMVをつくりました。「#風の強い日を走ってきた君へ」です。the pillowsの名曲、”Funny Bunny”をレコーディングし。伝えたいメッセージをまとめました。

もともとは、勤務先の学部の卒業式で上映したもので(卒業生の顔写真や名前が登場します)。これを再構成、再編集したものです。ぜひ、ご覧頂きたいのです、これだけは。

動画にかける想いはのちほど書くことにして、ここでは、卒業、卒業式について書きますね。幼稚園、小、中、高、大と卒業し、会社員生活を経て、大学院に入り直し40歳になるころに修士課程を修了し、40代は大学の教員となり、毎年、学生を送り出す立場になるという。様々な立場で卒業式を経験してきました。

それぞれが思い出深いのですけど。印象に残っているシーンといえば、中学校の卒業式でやんちゃしていた「早く卒業してーな」的なリーゼントの友人たちが号泣していたことですかね。

あとは、大学の卒業式で。卒業式そのものというよりも、前の晩にゼミの先生の家に泊まり込み。みんなで、青・黄・赤の付箋でよいところ、変わってほしいところ、いますぐやめてほしいことを書き出しフィードバックし、夜な夜な語り合うという。

社会人になる2日前の3月30日に、意味もなく渋谷に出てぶらぶら歩いたり。31日は卒業を先送りにした友人2人を大学の近く、国立のバーに呼び出して飲み。帰りに桜がバーっと夜空に散り、何かが終わった感じがしました。

なんといっても、大学院の修了式はナイスで。博士課程に進む人は皆、表情が険しかったりし。不安に立ち向かう姿が素敵でした。学長のスピーチよりも、各課程、各研究科代表のスピーチが素敵で。そのうち2名は留学生で。語る言葉の強さ、美しさ、優しさに心を打たれました。

卒業に関して、残っている言葉といえば、学生時代に読んだ沼上幹先生の「卒業式を「自由な人生」の葬式だと思っている学生諸君へ」でしょうか。タイトルが印象的ですが、大学教育について考えるよいキッカケとなりました。そして、この言葉に衝き動かされて、大学時代なんかよりずっと自由な人生をおくっています。

ただ、大学生活というのは実に多様で。しかも、本人の努力「だけ」ではどうしようもないところがあり。一方、「充実した大学生活」像を押し付けるのもよくなくて。

3年前、新型コロナウイルスショックで、学内企業説明会が中断し、学生の「登校見合わせ」が要請され、実際、卒業式や入学式が中止・延期、形式変更となり、新学期スタートも遅れるという一連のバタバタを体験し。学生からも保護者からも、学費返還運動や、学生に普通の生活をおくらせろ運動が起こったわけですが。ケロっとしている学生、むしろオンライン化、登校頻度が減ることを歓迎する学生もおり。その反応の様々な様子をみて色々考えました。今回のコロナ明けモードもきっとそうでしょう。

さて、今回の動画の件です。

「世界が変わってしまった日」を目撃し、「当たり前」ができず、「理不尽」という言葉の意味を知り、3年間、マスクの下で歯を食いしばり、それでも何度でも立ち上がってきた皆さんにむけて、このMVをつくりました。

the pillowsのこの曲が世に出たのは1999年でした。それ以降に生まれた人が、もう大人になっていたりします。

みんな必ずしも「風の強い日」を「選んで走ってきた」わけではありません。ただ、「風の強い日を走ってきた」のは間違いないわけで。そうであるがゆえに、この曲の持つメッセージはより強くなっているように感じます。「君の夢が叶うのは誰かのおかげじゃないぜ」という力強い歌詞に、勇気をもらいました。

「オレたちは近道をしなかっただけだ。生まれ変わったとしても、同じ道を歩んでみせる。それが俺たちの25年間でした」 25周年ライブで、the pillowsの山中さわおさんはこう語ったそうです。

この曲をつくってくれたthe pillowsに心から感謝します。

私自身も、この曲に救われた一人でした。会社員時代からずっと聴いている曲です。いま、教員や評論家をしていますが、人生で何度もくじけそうになっても、実際、くじけてしまっても、この曲が背中を押してくれました。この曲を、教え子たちがカバーしてくれて、一緒に動画をつくることができて胸がいっぱいです。

誰もいないキャンパスの光景は、2020年3月に撮影したものです。私のスマホに残っていたものです。3年間、色んなことが起こりました。でも、今、マスクをはずし、当時の様子を見て、前に進んでいること、風の強い日を走ってきたことを噛み締めています。

学生たちとこの動画をつくる中で、一緒に青春ごっこができたような。学園祭の前の日のような感覚をともに味わえたような。そんな気がします。

「そんなに同情されたくねえよ」 と言う人もいるでしょう。それもまた、まっとうな反応だと思います。だって、まさに「風の強い日」を走ってきたわけですから。メディアが創り上げる「かわいそうな若者像」をこえ、学生たちは自分に同情せず、青春を自粛せず、前に進んでいました。この3年間は空白ではないのです。

この動画が、多くの人に届くことを祈っています。よろしければシェアを。#風の強い日を走ってきた君へ でつながってください。

私も、今日も、風の強い日を走ろうと思います。

卒業、おめでとう。


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