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西野ジャパンへの根拠なき期待

5月31日の今日、ついにロシア・ワールドカップに臨む日本代表が発表された。サプライズらしいサプライズはなく、ほぼ想定内の23人でW杯に臨むことになった。

1勝すらあげられないことも予想されている日本にとって、ロシアでのW杯はとても、とても厳しい戦いになる。昨日のガーナ戦を観ても、期待することさえ難しいかもしれないと思わざるを得ない内容ではあった。

それでも、西野監督ならば、わずかにでもある「W杯で勝てる可能性」を活かせるんじゃないかという思いが、自分の中では強くある。

なぜそう思えるのかという根拠と言えるほどのものは何もない。ただ西野監督は信じるに値する監督だという確信だけはある。

もともと西野さんのサッカー観が好きで、7年前にはガンバでの監督時代のホームラストマッチをわざわざ大阪まで観に行ったくらいに、西野さんが標榜する“超攻撃的サッカー”に心酔していた(ガンバのファンとかではないけど)。

現場を離れてからもYahoo!ニュースでフォローしていたから、西野さんに関する情報にはほぼ目を通してきた。代表監督に就任してからは、数年前に読んでいた西野さんの著書を読み返していたりもした。

編集者として、というのは関係ないけど、西野さんの考え方を改めて理解しようとするならば、著書という「本」以上に有効なものはない。

もう20年以上前になる「マイアミの奇跡」を起こしたアトランタ・オリンピックについての手記『挑戦 ブラジルを破るまでの軌跡』には、こう書かれている。

私はチームを完璧にまとめようとは思わなかったし、漠然とまとまりかけて終わった。それでいい。まとめようと思ってもはみ出す人間は絶対にいる。はみだして当たり前だ。はみ出しを切って、こじんまりまとめるよりも、もっと大きなまとめ方ができればいいと思っていた。チームとしての約束事、方針は絶対に曲げない。私は押さえつけるタイプの指導者ではない。その反面で私は頑固だ。ひとたび目標とする絵を描いたらどんな妨害もはねのけてそれを追う。

あまりに時間がないと言われているなかで、西野監督はどのようにしてチームをまとめるのか。その答えのようなヒントが、ここに書かれている。どこか、ハリルホジッチ前監督のことを言っているような気がしないでもないけど…

今日発売の『Number』のW杯特集号では、川口能活が日本代表の現状に対して、「自分が選手のひとりなら、『とにかくまとまるんだ!』とチームメイトに呼びかける」と話している。

8年前のW杯では、いまと同じような状況に陥っていた日本代表に川口がチームキャプテンとして選ばれ、まとめ役の一端を担って結果を残したことからも言葉に重みがある。

W杯のような短期決戦において最も大事なのは結束力であり、監督は選手・スタッフをまとめてチームとして機能させることが求められる。そのためには、当然ながら選手とのコミュニケーションや短期間での信頼構築が必要となる。

西野さんの選手とのコミュニケーションのあり方は、2014年に出版された『勝利のルーティーン』に垣間見れる。少し長いけど、引用してみたい。

1995〜2006年までガンバ大阪に在籍し、3バックの中心として活躍した宮本(恒靖)は、いわばチームの「顔」だった。日本代表のレギュラーでもあった宮本は、2004年、ジーコ監督率いる日本代表の一員として、アジアカップの優勝に大きく貢献した。だが私は、開催地の中国から帰ってきてチームに合流した彼を、すぐにレギュラーに戻すことはしなかった。宮本不在の間、シジクレイ、山口(智)、實好(礼忠)の3バックが機能して、リーグ戦、カップ戦も含めて8勝1敗1分けで無失点が4試合続いていた。守備のリズムが非常に良かったので、最終ラインのメンバーを交代したくなかったのだ。「チーム状況がいいのは分かるけど、自分のコンディションも悪くない。なぜ出られないですか」宮本は冷静に聞いてきた。「お前のコンディションが問題だとは思ってない。ただ、今、チームのDFラインは安定しているので変えたくないんだ」そう説明をしたが、日本代表のキャプテンでもある宮本は、納得はできなかっただろう。でも、その時は、一切感情的にならずに「分かりました」と、引き下がってくれた。(中略)選手から起用しない理由について聞かれた時は、曖昧な言い方は一切しない。特にベテラン選手には、戦術的なことを含めて、個人のパフォーマンスの良し悪しについて、私自身の見解を、率直に伝えるようにしていた。選手は、監督が言うよりももっとやれたいたと思うかもしれないし、私の言ったことに同意するかもしれない。選手自身が、どう解釈するのかは別として、監督が選手のことをどう見ているかを知らせることは、信頼関係を築く上で重要なのだ。

当たり前のことではあるとはいえ、これができる指導者はそう多くない。こうした「実直さ」は西野さんの特長の一つであり、短期間でチームをまとめるためには欠かせない要素もである。

過去、W杯で結果を出した監督の多くは名将だということが主な共通点としてある。彼らはW杯で結果を出したから名将になったのか、はたまた名将だったからW杯で結果を出せたのかは自分にはわからない。

いずれにしても、西野監督はW杯で結果を出せるはずの監督であると信じている。その根拠も何もなく、あえて言うならば、西野さんへの偏愛ゆえの期待でしかない。期待したくなるような魅力が、西野朗という男にはある。

充満する悲観への反発心からこんなnoteを書いてしまったけど、今日発売の『Number』を読めば、西野監督だけでなく、W杯に懸ける選手の思いが凝縮されていて、少しは期待が芽生えるのではないかと思う。

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