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小さな旅館・民宿を立ち上げるためのマーケティング戦略書(事業計画サンプル付き)

こんにちはHinotoriの大﨑です。
このnoteでは下記のような人を対象にしています。

地域おこし協力隊からゲストハウスや旅館を立ち上げた(い)方
古民家をリノベして旅館を立ち上げた(い)方
民泊や簡易宿泊所を始めたい方

また宿のオーナーが誰でもできる戦略書にすべく、オーナー1人では実行不可能なことは記載しません。具体的にどのように進めるかを簡易に書いており更に詳しく知りたい方は株式会社Hinotori お問い合わせまたは大﨑へDM下さい。

旅館・民宿立ち上げにおけるマーケティング設計図

上記を1つずつ丁寧に書いていきます。7500文字の解説になりますが、1項ずつご確認下さい。


0,自分たちはどんな宿を目指す?

奈良県宇陀市やたきや様写真

本来このフェーズは市場分析などをした後に来るケースも多いです。
でも古民家を見つけて「ここで宿をやりたい!」や「将来こんなサウナ付きの宿を作りたい」との意思があって始める方がほとんどだと思います。

なので下記の整理だけまずやることをお勧めします。

宿を決める4タイプ

自分たちの宿はどんな宿になるかを考える上で下記の表に自分の宿を当てはめてみましょう。利用状況によって自分の宿のポジショニングは変わってきます。

利用状況による4タイプ

情緒的×訪問回数(小)
・大切な人と過ごす誕生日や記念日などで利用する
・優越感に浸れる憧れのホテル・アーティストが設計したホテル

機能的×訪問回数(小)
・犬と泊まれる宿泊施設
・子連れで行けるプール付きの宿

情緒と機能的の中間に位置する×訪問回数(小)
・サウナ仲間と行ってみたかったサウナ宿へ
・大学の友人と年に1回の旅行へ

1,その地域は旅行者が来るのか?(環境分析)

宿のマーケティングの方針はまず2つの方向性を確認することから始めると良いでしょう。

①そもそも地域に観光客が多い
②地域の観光客が少ない

①の場合、まずは地域にいる人をいかに宿に来てもらうかを狙う戦略を取るべきです。
②の場合、宿目的でくる→地域に案内して地域のファンにもなってもらうことが必要です。

新たに宿を始める地域おこし協力隊の方や古民家宿をやりたい方は②のパターンが多いかもしれません。

旅行者がいるのか調べる

地域にいる旅行者の解像度を上げる必要があります。
下記情報はネットリサーチ以外にも、近くの観光スポットや観光協会と対話をしながら情報収集すると良いでしょう。

旅行者はどんな人なのか

<インバウンド>
・アジア人(台湾・中国・香港・タイ人)の動向チェック
・北米、ヨーロッパ、オーストラリア人の動向チェック

<日本人>
・属性をチェック(カップル、子連れ、老夫婦、学生向けなど)
・ジオグラデータをチェック(県内、関西、関東、全国など)
・移動手段をチェック(自家用車、飛行機、新幹線、レンタカーなど)

2,人・モノ・金を把握する(資源分析)


・自分しかいない場合
→1棟貸ししかできない/料理は外注か素泊まりのみ
日中手伝ってくれる方が3名いる→清掃が回るから5室稼働の宿にしよう
自分も違う仕事がある→無人運営にしよう

などの戦略を決める手掛かりになります。

モノ
・物件の広さ
→焚き火スペースがある/何室まで作れるか
近くの観光地や自然アセット→川があるからサウナを作ろう/桜が有名なので桜のシーズンは埋まる可能性が高い


・初期費用→
補助金や融資も含めての改装費や備品購入費、システム導入費を計算する
・毎月の費用→変動費(お客さんが何人来るかで変わる費用:食事代など)と固定費(Wifi代、システム利用料など)

※記事の最後に事業計画サンプルを付けています。

3,同地域の競合分析をする(競合分析)

・直接競合を検索する
簡単なやり方は下記です。
①楽天トラベル・じゃらん・一休・Booking.comなどで地域名を検索してください。
②室数と価格帯を把握してください。
③同じ特徴がある施設の把握をしてください(サウナ付き、温泉、ペットOKなど)

・その他競合を検索する
例えば「サウナ付きの宿」を作る場合は、近隣の日帰りサウナを把握したり、焚き火OKの場合キャンプ場など、宿で提供予定の内容を日帰りで行っている施設を把握すべきでしょう。

4, 顧客を定める、顧客ニーズ・インサイトを知る

ターゲットを設計する

必要最低限の流れとしては下記になります。下記3つを抑えれば

・いつ・どのターゲットに来てほしいか
・HPや予約システムの写真はこのターゲット像に向けて作ろう
などが明確化しますので是非考えてみてください。

①ターゲットを決める(ST、PP:下記図を参照)
②ターゲットの利用シーンをパターン化する
③オルタネイトモデルを策定する

①ターゲットを決める

実は旅館・民宿の方は「ターゲットをぼんやりとしか決めていない」ところが非常に多いです。その理由は楽天・じゃらんなどのOTAに掲載すればターゲット選定はあまり関係ないと思っているからです。

が旅館・民宿がこれを真似することは大変危険です。OTAありき、つまり戦術ありきの戦略にはならないように気を付けましょう!

②ターゲットの利用シーンを決める
(これがとても重要です)

旅行者は1ターゲットである必要がありません。季節性にも左右されるため、ターゲットを複数考えることは必須です。しかしターゲットを考えるだけでなく「利用シーン×時期」をセットで考えるべきです。

③オルタネイトモデルを策定する
それぞれのターゲットはどうしたら行動してくれるかの解像度を上げるために実施すると良いでしょう。

5, 商品開発

商品開発は宿の方向性を決めておく必要があります。
コンセプトを決める過程は下記noteをご確認下さい。

自分たちのHPのトンマナ、家具(FFE)の方向性などを反映させるうえでは下記を埋めると良いでしょう。

記入例です(引用:黒澤さんnote

オープンまでに検討すべきこと一覧

【検討すべき一覧例】
・食事の提供はどうするか?/食材の調達はどうするか?
・価格帯はどうするか?(後述します)
・HPと予約システムはどうするか?(後述します)
・キャンセルポリシーの作成
・清掃はどうするか?
・緊急駆け付け人(民泊)
・旅館業法の申請
などなど

書ききれないです。
こちら立ち上げの無料相談を下記で承っております。
詳細はそちらでお話できますのでお気軽にご連絡ください。

6,販売経路作り

予約方法を知る

参考資料:一般社団法人日本旅館協会「令和4年度 営業状況等統計調査」

現在の旅行予約に関しては、約半数の45%がOTA(楽天トラベルなどの予約サイト)を利用して予約します。一方で電話などでの直接予約も17%ほどいるようです。

OTAの利用に関してはメリット・デメリットを理解したうえで掲載や運用工数を検討するべきでしょう。

今すぐ客とそのうち客

地域は旅行をする「今すぐ客」についてまず考えましょう。今すぐ客は「地域への需要」または「宿への需要」と2パターンあり、「地域への需要」がある大きなパイをどのように取るか考えるべきです。

7,今すぐ客を呼ぶための施策

①OTA(オンライン・トラベル・エージェンシー)

皆さんも旅行に行くときには楽天トラベルなどのOTAを使いませんか?
OTAは媒体ごとに特色がありますが、まずは国内と海外を分けて考えるべきでしょう。

国内OTA一覧
海外OTA一覧

②OTAのメリット・デメリット

OTA使用にはメリット・デメリットがありますが、室数の少ない小さな民宿は・旅館は使い方を考える必要があります。

小さな旅館・民宿がOTAを使うポイント

③OTAは無料だが、組み合わせるとお金がかかります。

OTAを複数使うとダブルブッキング(同じ日付の同じ部屋に2つの予約が入ってしまう)が起きてしまいます。ダブルブッキングが起きるとお客様に迷惑をかけるだけでなく、レビューの低下やオペレーション工数の増加が起きるため絶対避ける必要があります。

8,そのうち客を取るには?

PESOモデルをざっくり理解しよう

①Paid Media
=広告
だとざっくりとらえてください。
特徴:認知獲得に最適だが、広告のため邪魔扱いされたりします。
結論:認知に最適だが、広告だけで信頼感を醸成するのは困難

②Earned Media
=メディア露出
だとざっくりとらえてください。
特徴:お客さんの信頼感が高く行動変容に繋がりやすいです。一方で広告のように簡単に出稿したり、時期をコントロールすることは困難です。
結論:露出コントロールに弱みがあるが、一気に信頼獲得して予約に繋がりやすいです。

③Shared Media
=SNSでの評判やレビュー
だとざっくりとらえてください。
ここではSNSのUGC(お客さんがSNSで感想などを投稿してくれる)に触れます。
特徴:認知だけでなく、共感や友達が行ったという信頼感が醸成されます。一方でお客様のSNSの投稿をコントロールすることは難しく、効果測定も困難です。
結論:共感や信頼感の醸成に最適ですが、お客様に投稿していただくための工夫が必要です。

④Owned Media
=自社HPの記事コンテンツ
だとざっくりとらえてください。
特徴:ニーズが顕在化しており、情報収集過程で訪れる人が多いです。理解促進や購入促進につながる一方で、トラフィック数(見てくれる人の数)は少ないです。
結論:理解促進メディアですが、工数や余裕を見ながらトライしましょう。

実際の運用例

下記はおすすめのやり方ですが、時間が取れるかなどを考えながらチャレンジしてみてください。(この領域はいわる旅行コンサルの方が苦手としている領域だと思います。)

①SNS運用(難易度★☆☆☆☆/おすすめ度★★★★★)

Instagramでの運用を始めましょう。普段からリール・フィード・ストーリーを普段から運用しましょう。

・アカウントの方向性
・投稿頻度
・フォロワーとのコミュニケーション
・投稿の型を作る

②広告戦略(難易度★★★★☆/おすすめ度★★☆☆☆)

「宿目的で選んでもらう」認知施策にはMeta広告(Instagram/FBなど共通)で写真付きのクリエイティブで訴求するのはおすすめです。

③PR戦略(難易度★★★☆☆/おすすめ度★★★★☆)

オウンドメディアやメディア露出をするための取り組みです。PRは非常におすすめです。理由はPRを行う宿が非常に少ないため、地方では特に記事やテレビ露出が可能です。そして効果も非常に高く、信頼度も上がります。

④LINE構築とCRM(難易度★★★☆☆/おすすめ度★★★★☆)

LINEでのコミュニケーションと予約獲得ができた場合、リピーターのファンを作り広告費0円のお客さんを獲得できます。
LINEの友達登録を促すおすすめは下記のようなものがあります。

・ツアーなど地元の体験をご案内してあげる
・集合写真を撮ってあげる
・公式LINEに登録していただけ●月●日の「名前」ですというLINEを送ってもらう
・写真を送付する

オーナーとの触れあい×LINEの追加は効果絶大です。
・ブロックされづらい
・顧客満足度が高い
などのメリットがたくさんあります。小さい宿ならではのコミュニケーション戦略を取りましょう。

初期と3年後のPESOモデルの理想

初期はお客様がまだついていませんが、下記だけはしっかり行ってください。

①SNSでオープンまでの道のりを公開
②リリースを出してオープンするメディア露出を作る
③予約の受け皿(予約システム・電話・HP)を作っておく

そのうえで初期は認知を獲得するために広告を使うことがありますが、SNSやメディア露出や自社HPのコンテンツを拡張して、徐々に広告費を落として利益率を改善するようにしましょう。

9,土台作り(その他必須項目)

HPの構築について

最後に旅館や民宿を行う上では欠かせないHPの構築に関して書きたいと思います。HPは費用がかかるは今や間違いです。無料でかっこいいサイトを作ることもできますし、自社予約を取るのに欠かせない存在です。

共通してやらなければならないことがあります。
・ドメインの取得
・写真撮影

①自分で作る場合
自分で作る場合はテンプレートを利用して綺麗に作りましょう。

①STUDIOやWixで無料で構築する。
②Chillnで予約サイトと一体型のHPを作る
どちらを選択するべきか規模や内容によっても異なるため是非ご相談ください。

メリット

  1. コスト削減: 自分で制作することで、業者に依頼する場合に比べて大幅にコストを抑えられます。

  2. 柔軟な更新: 小さな変更でも自分で簡単に対応でき、必要なときにすぐに情報を更新できます。

  3. 独自のデザイン: 自分のアイデアをそのまま反映させたデザインが可能です。

  4. プラットフォームの機能利用: STUDIOやWIXの豊富なテンプレートや機能を利用して、短時間で効果的なサイトを構築できます。

デメリット

  1. 専門知識の不足: デザインやSEO、ユーザー体験に関する専門的な知識がないと、見栄えや使い勝手の面で劣る可能性があります。

  2. 時間の確保: 自身で作成するため、他の業務の時間を割く必要があります。

  3. 機能の限界: テンプレートベースのため、カスタマイズの自由度や高度な機能には制限があります。

②依頼する場合
相場として100万程度(10ページ前後)と認識してください。

下記に注意してください。
・保守、管理費がいくらになるか?
・HP制作会社を解約した場合のHPの権利について
・サイトの更新を自分でできる部分を作れるか

メリット

  1. プロの品質: プロのデザイナーや開発者による高品質なデザインと機能性が期待できます。

  2. カスタマイズの自由: 業者に依頼することで、テンプレートにとらわれない完全なカスタムデザインが可能です。

  3. SEOやマーケティング対応: SEOやマーケティングの専門知識を持つ業者に依頼することで、検索エンジン最適化やマーケティング戦略がしっかり反映されたサイトが作れます。

  4. 時間の節約: プロに任せることで、オーナー自身は他の業務に集中できます。

デメリット

  1. コストが高い: 初期費用が高額であり、運用や更新にも追加費用が発生する可能性があります。

  2. コミュニケーションの問題: オーナーのビジョンや意図を正確に伝えるために、業者との十分なコミュニケーションが必要です。

  3. 更新の手間: 小さな変更でも業者に依頼する必要があり、時間とコストがかかる場合があります。

②予約システムの導入

予約システムの選定はかなり気を付けるべきでしょう。

決め手となる変数
・価格
・相性の良いOTAやサイトコントローラー
・見やすさ
・扱いやすさ

ご自身で選定する場合は上記のようなまとめ記事をご参照下さい。
こちらの導入に関しても、御社の最適なシステムをゼロベースで検討してアドバイスさせていただきます。


③シーズナルな価格表を決める

ざっくり上記のような表を用意しておくと便利だと思います。
コツとしては
①予めカレンダーパターンを決める
②埋まり方を見て価格をコントロールする

またもし運用に余裕が出てきたら
「早割り90日前プラン」などを作ってみるのも良いと思います。

④事業計画を作る

最低限下記を抑えると事業計画は作れます(サンプルシート添付)

【売上】
・ADR(1室あたりの売上)=1部屋あたりの宿泊人数×単価
・稼働率=月の埋まった室数/日数×室数

【費用】
①変動費
・食事/飲み物原価費用
・清掃のアルバイト人件費
・リネン・アメニティー原価など
②固定費
・家賃
・社員人件費
・水道光熱費基本料金
・火災保険費用など

コピーして使える事業計画サンプルはこちらです。


ご相談について

弊社では下記のようなメニューをリリースしました。
基本的に全て期間を定めて、自走できるように知識を移譲することを目的としております。そのため初期は運用代行や制作を行いますが、オーナーやスタッフの方に運用ができる体制作りをいたします。
まずは無料相談からお待ちしております!

どのプランもHinotoriメディアでの取材付きであり、必ず現地を訪問させていただきます。

①週1回 オンラインMTG 壁打ち(5万円~)

対象はこんな方
小さな旅館(5室以下や一棟貸し)限定
・宿をこれから立ち上げる方
・立ち上げて3年以内で集客に困っている方
#立ち上げ期

具体的に・・・
・戦略のご提案とアドバイス
・運用方針のご提案とアドバイス
・運用や数値管理のアドバイス

②マーケティング支援+週1回 オンラインMTG 壁打ち(15万円~)

対象はこんな方
HP比率が低くOTAに頼りきり
・SNSやPRなど何をすればよいかわからない
・ターゲットの解像度がわかっていない
・ブランドの方向性がわからない

具体的に・・・
・戦略のご提案とアドバイス+実装
・運用方針のご提案とアドバイス+実装
・運用や数値管理のアドバイス+実装
・そのうち客をとるための施策の実行と知識移譲


②戦略策定とシステム構築(入れ替え)の3か月プラン(60万円~)
外部パートナーの佐藤さんと3か月間みっちり伴走させていただき、写真撮影やHP構築までついて、3か月合計60万円程度となる破格のサービスです。

対象はこんな方
・部屋タイプ6タイプまで/30室以下の旅館・民宿
・これからHPとシステム導入を検討している方
・既にシステムやHPを持っているが、運用会社に搾取されて利益率が悪かったり、集客の成果が出ていない方
・システムが古くて使いづらい/HPや写真が綺麗でない
・担当者が動かない
・HP/写真/システムがリース契約になっている
・手数料が異常に高い/契約期間が異常に長い/保守費用が高い

具体的に・・・
・最適なシステムの選定
・違約金がかかりづらい解約タイミングでの移行作業
・HP構築と撮影
・OTAやサイトコントローラーの立ち上げ
・ターゲット設計と価値設計のマーケティング戦略
・宿のコンセプト設計
・SNS・MEO・広告運用のノウハウ移譲

株式会社Hinotoriについて

2024年3月1日に「地域のまごころが報われる世界を創る」をミッションに掲げて創業しました。

≪事業内容≫
・地域観光と旅館のマーケティング支援
地域観光と旅館のショート動画旅メディア運営(立ち上げ中)
・地域観光と旅館の予約システム開発(開発中)

コーポレートサイト

創業エントリーnote

書いている人
大﨑庸平(株式会社Hinotori CEO/マーケター)

慶應義塾大学商学部卒。学生時代にUSJ・森岡さんの講演とインターンを経てマーケターの道へ。シンガポールにてインターン後、PwCコンサルティングに新卒入社、その後コロナ禍に立ち上がったテーマパークSMALL WORLDS・アートアクアリウムでマーケティング部に参画。熊野古道に宿を起点に地方創生事業を展開する不動産ディペロッパーで、最年少事業部長としてマーケティング・広報活動に従事。2024年3月1日 株式会社Hinotori創業。
趣味はキャンプとサウナと地域旅館巡り。NHKおはよう日本や日経XTREND等のメディアで熊野古道関係の取材出演。


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