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映画「キャロル・オブ・ザ・ベル」

監督:オレシア・モルグレッツ・イサイェンコ

1939年。同じアパートに住むウクライナ人、ポーランド人、ユダヤ人の3家族が第二次大戦に巻き込まれ翻弄されながらも子供達を守ろうと必死に生きる物語。

ソ連軍やナチス軍に侵攻される様子は現代のウクライナとも通ずるのです。 民族や信仰が異なっても子供たちを愛し、守ろうとする心は同じなので家族同士が団結するんですね。今後戦争というものが無くなるとしたらこの心情に帰結するんじゃなかろうか。 演出・脚本は極端に振ってます。善悪と悲劇をくっきりと描いてる。極端な演出は私の趣味ではないけど反戦に重心を置くならば賢明な差配です。ナチスから隠れる子供にハラハラし、死が迫った時のウクライナ人の表情に観ている自分を重ねてもらわなければならないのです。生前の大林宣彦監督の言葉を借りるなら「戦争に対して過剰に怯えなければならない」

映画タイトルであるキャロル・オブ・ザ・ベルはウクライナ民謡がルーツ。人々の幸せを願う歌であり、ウクライナがここにあるという誇りの曲です。劇中ではキャロル・オブ・ザ・ベルが何度も響きます。子供たちの美しい声で。その声から思い起こされるのです、これは過去の話ではない。今もウクライナで「ここにいるよ」と歌う子供たちがいること。この映画の出演者やスタッフで今なおドイツやポーランドに避難している方もいる悲しき事実を知ってほしい。「戦争はいつ終わるの?」というセリフは本当に過去のものではないのです。

備忘録として追記→ある大きな悲劇が起きて家に走って帰り、何も言わず黙々と洗濯をするシーンがある。とてもリアルだった。受け入れられない出来事が起きた時に人は日常を取り戻そうとする心理なのか不思議な行動を取る。実体験のようなリアリティ。秀逸だった。

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