映画「あのこと」
監督：オードレイ・ディヴァン
1960年代、法律で中絶が禁止されていたフランス。教師になる夢を持ち勉学に励む大学生のアンヌは予期せず妊娠してしまう。医師や友人に突き放されても中絶しようと孤独に手段を探るが次第に追い詰められてゆく。
トラウマになりそうな物語です。エグいです。衝撃的な映像に目を覆いたくなるシーンあります。実際目を瞑りました私。時代や法的な問題で「あー、この時代だとこんな悲劇があったんだね」って回顧するための映画ではありません。考えるべきは「なぜアンヌが一人で苦しまなければならんのか」です。妊娠したことは相手男性とアンヌの2人による軽率な行動の結果なはず。なのに身体的、精神的、社会的に追い込まれるのはアンヌだけ。子供が宿るのは女性だけ。大きなリスクを負うのは女性なのです。そこに時代は関係ないです。
カメラは主にアンヌの側に構えられ、妊娠週のテロップが画面に映され時間経過のリアリティがしんどい、緊張感を煽る効果音もスリリング。観客がアンヌと同じように追い込まれる演出がいくつも施されています。こんだけ追い込まれて恐怖に晒される映画珍しいかもしれないです。映画に求めるものは人それぞれだからおススメしにくいけど、これだけ強烈な物語で演出も優れていて俳優もスタッフも志を1つにしてアンヌの物語を映した作品だと筆が進んでしまいます。
現代では人工中絶に選択の自由が与えられる国が多いけど中絶規制する国はいまだにあります。宗教観からの中絶禁止ってこともある。宗教観は否定しにくいけど女性だけが負うリスクをしっかり考慮した制度があるべきだし、公平性が保たれる社会を望みます。優しい世の中ならアンヌもここまで辛くないでしょうにって。子供っぽい言い方になっちゃったけどシンプルに思うですよ、みんな優しければなって。人間社会は永遠にそうならないのでしょうけど。
女性監督が妊娠と中絶について映画にすると女性向けってイメージ付きそうですが私はむしろ男性に突き付けてる感じもします。この映画の怖さは男女関係ないです。誰でも孤独でどうしたらいいか分からず時間に追い込まれる状況は恐怖ですから。事実を基にしたアンヌのあのこと。他人事に感じないはずです。
もしこの映画を見に行くよってチャレンジャーな方へ。
鑑賞直後にSLAM DUNKかRRRを予約しておくことをオススメします。お口直しが待ってると思えば耐えれるかもw