見出し画像

漫画「リアル」

井上雄彦先生の漫画「リアル」の15巻を読んだ。待望の。連載しているヤングジャンプは読んでいないので単行本が店に並ぶのを楽しみにしていた。理由は知らんけど2014年からずっと休載していたそうで。当然物語を忘れてしまってる部分もあり、家にある1〜14巻を読み返した、数回涙を流しながら。あらためて連載再開してくれて良かったと感じます。

井上雄彦さんといえば"スラムダンク"。言わずもがなバスケ、、だけじゃ無いなスポーツ漫画の金字塔。私なりの見解ですが、スラムダンクの優れていたポイントは敵・味方問わずキャラクターを適度に掘り下げたことだと思うんす。スポーツ題材なので当然勝ち負けにハラドキ出来るけども、登場人物の背景が分かって見る試合はより高まる。特に部活動とは時間の限られた希少性による切なさがツンと鼻に来るものだ。主役は桜木花道であるものの、三井寿や魚住純や福田吉兆などサブキャラクターに心が動いたこと。その多角度から見せた部活動バスケ漫画はいまだ色あせない。

スラムダンクで見せた多角度な手法、それを車椅子バスケットで応用してる作品が「リアル」。めっちゃ難易度は高い。なんせ車椅子バスケという競技に関して世間的に認知度が低く、ルールや大会規模やそもそも障害についての知見が無い読者にどこから伝えていくのか。ある程度の説明が要る。それをですね、、見事に進行してるのです今作、尊敬!脱帽w

実際に障害を持たない読者はほんとの意味での共感は難しい。だのに登場するキャラクターの障害度や経緯、家庭環境、心境を分けることで見事に多角形を作り、丁寧に共感へと近づけてる。主役が誰なのか1人挙げるとしたら?と聞かれた読者の意見は割れます、きっと。策略かどうか分からないけど主役の1人である野宮が健常者でプロバスケ選手を目指してる設定も効果的。もちろん実際に障害者でスポーツを行っている当事者は自分に置き換えて読むでしょうし、障害を持っていて今スポーツをしていない方々にも想像を提示できたかもしれない。理想論だと、今作を見て障害者スポーツを始めてパラリンピアンになる人が生まれるかも。

大義と感じるのは"井上雄彦さん"が漫画で実行してること。漫画ってメディアは子供から大人まで幅広く触れる。しかも名のある漫画家の作品だと影響力は大きい。車椅子バスケットの見方は変わるしファンも増えるでしょう。私も1度試合を見に行って迫力と展開の面白さを堪能しました。パラリンピックの車椅子バスケのチケットも申し込んで女子準決勝が当たり、、楽しみにしてますw 同じように興味を持った子供がたくさんいたら??車椅子バスケや障害者スポーツへの見識を深めた人々が増えることは=障害を持つ方々について考える層が広がったということ。スラムダンクでは到達できない大義がここにある。

作中で井上さんも時折触れている世間の障害者へのバリア。物理面・制度面・意識面、、どこにでもバリアは多々存在したままなのは現実でしょう。バリアフリーやユニバーサルデザインみたいなことも読者に意識レベルで浸透してくる、、可能性を感じる。高橋や清春がもがきながら前進しようとする姿を見て「自分も頑張ろう」的な通常得られる感情とは別に社会に対しても何か感じるところはある。

井上さん大変じゃろうけどリアルは何より優先して書き続けてくれることを願います。"面白い"だけじゃない物を受け取っている読者のためにも。数十年後、ノーマライゼーションを実現した日本で「リアルを読んだ世代が誰でも住み良い国を作った」と言われるような、、スケールでかい妄想しちゃうな。16巻もパラリンピックも楽しみであります。


いいなと思ったら応援しよう!