映画「ミッシング」
監督:吉田恵輔
6歳の娘が行方不明になり、手がかりもなく懸命に探し続ける夫婦。夫婦間の温度差やマスコミの報道・SNSでの誹謗中傷によりいつしか母親は「心」をなくしていく。夫婦と周囲の人々の物語。物語なのかな?これは。属性を判断するのが難しい。見ててつらすぎるオススメしにくい映画です。
吉田監督の仕事だな〜ってまずは唸るしかない。ネタバレしたくないので展開や行方不明事件そのものについては書きません。あしからず。今作での吉田監督の人間について描いているやり口について書きておきます。
あくまで私の個人的見解で。あしからず。
当事者、関係者だけでなくその他大勢まで曖昧に描ききってる気がしました。良い意味でちゃんと曖昧に。石原さとみさん演じる母親は悲劇の真ん中にいるけど良い人でも悪い人でもない。ひたらく言うと。夫も弟も記者も全員そう。世の中マジな善人も存在するんだろうけどこの映画に善人は出てこない。それはシンプルに分からないからだと思うんです。他人の素顔なんて簡単に分からないもの。誰だって窮地に追い込まれたり、時の立場によって言動が変わることはある。
その人物や事象の何が本当で何が違うのか見極めるのは難しいのだと、、そう観客に思わせる仕立てな気がしました。
そんな人間にならなきゃなんだから俳優の皆さん大変だったと思う。とても生々しくて、痛かったです。だからこそ石原さとみさんはじめ俳優を推し出して「素晴らしい演技だった」「リアルで圧巻な俳優陣」て宣伝文句が踊るのは仕方ないんでしょうけど、、この映画の題材上その先を語りたいもの。
実際に子供が行方不明になり追い詰められている方々に俳優はなりきれないのです。今作の俳優から実際を想像することができた、、って所まで観客が掘り下げれたらこの映画の合格点なのではないでしょうか。
希望の見せ方も私はベストな塩梅だったと思います。少し塩っぱいのは都合よく進まない世の中を冷静に映しているからだと。
細かく内容書きたくないのでざっくり抽象的になってしまいました。吉田演出の好きなところを1つだけ具体で記しときます。それは意外性のリアル。いま鑑賞直後に覚えてるだけで2つのセリフで私は息を呑んで頷きました。
"あ、この人がこの言葉を言うのか""あ、ここでこの感情に達したが故にこんなこと言うのか"って。ほ〜確かにと。劇場でヒザを打ちそうでしたがこらえました。
意外な人から意外なタイミングで生まれる真理というか、ありますよね。
しかもそのちょっとした意外展開が記憶に残るもの。吉田演出にはその発見がある。それは吉田監督が1人1人の人物の感情を丁寧に考えてこんな時この人からこんな言葉が出てくるんじゃないか?と諦めずに不意の芯を捉えようとする姿勢なんじゃないかなあ。私の勝手な想像ですが。
最後にもう一度書きますが、オススメしにくい映画です。見応えはもちろんあります。身につまされます。監督が思う光もあります。それでもしんどいです。覚悟を持参してご鑑賞ください。