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映画「VORTEX」

監督:ギャスパー・ノエ

心臓に持病を抱える夫と認知症が重くなってきた妻。老老介護の末に人生最後が近づく2人のドキュメントのような物語。
12/8公開の今作ようやく観てきました。これは凄い!観た方がいいって言いたくなるヤツです。タイミング遅いですが。

凄いと言いつつも。最初に書きますが、この映画は誰かの批評や感想を気にするもんではありません。観た人の環境・状況で感じることが異なりすぎるはずなので。私の感想はあくまで私の背景での感想。人間ドックD判定の45歳独身おっさん、仕事に忙しく趣味に楽しく毎日を過ごし、両親は病気持ちだけどまだ頑張って2人で生きてて、、、って人の1/1データなので。

※以下ネタバレも含みます。
夫と妻を2分割画面で見せる手法。手法自体は珍しくないのですが、最も効果的な分割画面映画と言ってもいいでしょう。それも深いところで。何かが起きそうな緊張感を煽るし、人間本来の孤独というか一緒に暮らしていてもあくまで人は1人であることの確認というか。様々な効果を生んでるのは間違いない。認知症が進行する妻はフラフラと徘徊してしまったり家の中での生活でも様々支障をきたす。その一方(の画面)で夫は仕事に没頭しながらも浮気相手との関係にも必死。2人の様子を見にくる息子はどうやら生活に困っていて子育てやら他やらで手一杯。

症状が異なる夫婦は歪な老老介護の状態。大仰なドラマがあるわけでもなく普通の設定、中流の環境、リアルな家族関係。この物語は私達の隣の家の出来事なのです、まるで。社会問題を提起するわけでもなく、むしろ"社会問題映画じゃないよ"とフタをすべく施設入所の話が出たり親身になってくれる訪問介護士の存在もわざわざ表している。

いよいよ死期が迫る老夫婦が主役だと涙涙のエンディングがあるのか?なんて想像して鑑賞したお客さんもいらっしゃったじゃろうけど、、どう感じたんでしょうね?それぞれでしょうけど気になります。感じそうなことは怖さ、生々しさ、家族愛、夫婦とは、介護、死んだ家族のこと、無常感、生きること、死ぬこと、、、受け止めきれないっす!!どれだけのことをぶん投げてくれたんすかギャスパーさん。凄すぎるんだけどヒドいw
ただですね今作は生きている人が見るわけです。この映画を観て何かを思い立ったり、誰かを大事にしたり、介護に対する考えが変わったり、、行動変容を促しそうな気がします。私としては出色の出来だと思うけどこんな映画好きじゃないって人が多い気もするからオススメは出来ないなあ。そういう意味では東京で公開が終わった今この感想書いてて正解かな。忙しくて書くの遅れただけだけど、すいません。

蛇足として。もしも今作を観た方にだけ分かるように私的な好みを。
冒頭のシーン。過去の幸せな時期の二人のシーンから始めてるやつ。
僕はですね。全てを観終わった時に冒頭を思い返してこう思ったんですね。「いや、この2人は決して孤独な人生ではなかった。2人しか知りえない幸福があるものさ」って最初に予防線張ってたのかな、と。

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