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映画「死体の人」
監督:草刈勲
死体役ばかり演じるうだつの上がらない俳優吉田広志(奥野瑛太)。ある日家に呼んだデリヘル嬢のカナ(唐田えりか)が忘れていった妊娠検査薬を何気なく使ってみるとなんと陽性反応が出る。
あらすじを読むと飛ばした設定のSF恋愛コメディか?と想像しちゃってた。が、、いい意味で裏切られた!というかある意味ではファンタスティックなコメディかもw ジャンルなんてどうでもいいか。
"友達"とか"恋人"みたくツルッと言い表せるモンじゃなく、ザラついて巧く言い表せない人間関係が見れます。生きてりゃこんくらいの関わり合いもあるよねってリアルが。風俗嬢とのエピソードって他人に語りにくいし裸の2人の空間に特殊な依存が発生することがある。映画で語るのに適してるかも。「以前自分の相手をしてくれた風俗の女性一人一人にお礼をして周りたい」ってオードリーの若林さんが言ってた。私も感謝してる風俗女性いまして。その辺の特別な、、説明できない何かをいじくられる物語だった。
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妊娠という大きな岐路で俳優と風俗嬢の人生が交差して転がってく物語だけで興味深いのに"死体役が多い俳優"って設定が面白い。端役の現場での扱いあるあるはスマンけど笑っちゃうし、いちいち切なくて気持ちは入ります。両親との会話もあるあると小ネタが効いてる絶妙なライン。ネタバレしたくないけど、、母親のあれは、、全俳優が泣けちゃうんじゃないかなあ。売れない時期を長く経験してる俳優は特に。良いシーンでした。よく考えられた設定で、リアリティを保ち、笑いも適度に挟んで、誰かの人生を肯定する。とてもよく出来ています。これら私の勝手な考察ですけど。
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唐田さんはもちろん烏丸さんやきたろうさんも素晴らしい芝居でした。ただ特筆すべきは主演の奥野さんでしょう。売れない俳優役ってどうなんじゃろう?かなり難しい気がして。OKもらえない芝居、見てて滑稽なやり過ぎ芝居、巧く出来てる芝居と演じ分けなきゃいけない。完璧に演じてたから我々は笑えたり泣けたり出来たんだと思うなあ。この映画全く話題になってないのが残念。鑑賞した人の満足度は高い気がしますよ。広く世間に伝わってほしい秀作!