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ECPRの予後を年齢、初期波形、搬送時間でまとめてみた。

ECPRとは?その実施基準は?

ECPR(Extracorporeal cardiopulmonary resuscitation)は膜型人工肺(ECMO)を用いた蘇生で、通常の心肺蘇生で自己心拍が認められないときに用いられます。しかし、侵襲的で医療資源を必要とするため、誰に行うべきか、その基準はまだ確立されていません。

SAVE-J研究という日本発の研究で「75歳未満、初期波形がショック適応、病院搬送まで救急覚知から45分」という三つの基準が参考にされていることが臨床上多いのですが、これらの基準を満たした場合、また満たさなかった場合、どの程度の神経学的予後となるのか参考になる情報は十分ではありませんでした。

我々はこの疑問を解決すべく以下の研究を実施しましたので、その内容の要約を紹介します。

Clinical outcomes among out-of-hospital cardiac arrest patients treated by extracorporeal cardiopulmonary resuscitation: The CRITICAL study in Osaka. Resuscitation. 2022 Jun 14:S0300-9572(22)00568-8. リンク

研究内容の要約

【目的】Extracorporeal CPR(ECPR)は難治性の院外心停止患者に対して行われ、日本ではSAVE-J研究以来、初期波形,病院到着までの時間45分以内,年齢75歳以下の3つの基準をもとに対象が決められることが多い。
本研究では、ECPRを実施した院外心停止患者を対象に、これらの3つの基準をもとに神経学的予後を検証した。

【方法】 本研究は大阪府の院外心停止患者を対象とした多施設共同前向き観察研究であるCRITICAL研究のデータを二次解析したものである。2012年7月1日から2019年12月31日の間にECPRで治療された成人(18歳以上)のな陰性院外心停止患者を対象とした。3つの基準(初期波形がショック適応、病院到着までの時間が45分以内、年齢75歳未満)に基づき1ヶ月間の神経学的好転転帰を検討した。

【結果】 CRITICAL研究のデータベースの18,379人の患者のうち、ECPRによって治療された517人の院外心停止患者が含まれた。そのうち311人(60.2%)が3つの基準をすべて満たした。良好な神経学的転帰は以下の通りであった:基準を全く満たさないか1つしか満たさない患者: 2.3%(1/43)、2つの基準を満たす患者:8%(13/163)、すべての基準を満たした患者:16.1% (50/311) であった。

【結論】 本研究では,ECPRを行った患者の約60%が3つの基準(初期波形ショック適応、病院到着までの時間が45分以内、年齢75歳未満)を満たしており、基準を満たす数が多いほど良好な神経学的転帰を認めた。

著者のコメント

結果の通りで、3つの基準が満たされていない場合でも一定数はECPRは実施されているようです。しかし該当基準が少ないほど神経学的予後は不良の割合は高いようです。全く満たしていない、または一つしか満たしていない例ではかなり成績は悪そうですので、実施は慎重に検討した方がよさそうです。

今回はECPRを実施した症例の中での検討で、他の要因(目撃の有無など)を全く考慮していないので、今回の結果だけでECPRの実施を決めるべきではないですが、少なくとも実施を検討する材料にはなるかと思います。
参考までに。

文献

Clinical outcomes among out-of-hospital cardiac arrest patients treated by extracorporeal cardiopulmonary resuscitation: The CRITICAL study in Osaka. Resuscitation. 2022 Jun 14:S0300-9572(22)00568-8.

Extracorporeal cardiopulmonary resuscitation versus conventional cardiopulmonary resuscitation in adults with out-of-hospital cardiac arrest: a prospective observational study. Resuscitation. 2014 Jun;85(6):762-8.

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