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臨床医から大学院へ3:MCRコース

前回のつづきで、救急医である自分が大学院生活を振り返っていきます。大学院進学を考えている臨床医の参考になればと思います。

この記事では京都大学大学院 社会健康医学系専攻の臨床研究者養成コース(Master of Clinical Research: 通称MCRコース)について振り返ります。

前回の記事:

臨床医から大学院へ1|Yohei Okada(救急医) 

臨床医から大学院へ2:学位とは?|Yohei Okada(救急医)

4つのコース

前回までに記事に書いたように、京都大学大学院 社会健康医学系専攻には以下の4つの課程があります。

専門職学位課程(1年)= MCRコース
専門職学位課程(2年)
後期博士課程(3年)
博士課程(4年)

MCRコースとは本来、専門職学位課程(1年コース)のことを指していました。この専門職学位課程(1年コース)に在籍する人のことを学内では「MCR専科生」と呼ばれていました。一方、他の課程からもこのMCRコースと同じカリキュラムで勉強することができます。他の課程からMCRコースと同じカリキュラムで勉強する人たちは「MCR受講生」と呼ばれます。

MCR専科生とMCR受講生の違いはMCRコース終了時にMCR専科生はMPH(Master of Public Health)の学位がもらえるのに対し、MCR受講生はMCRコース修了証のみです。

MCRコース

このMCRコースでは1年かけて臨床研究を遂行するにあたって必要な色々なことを学びます。

医療統計、疫学、文献の検索や評価の方法、医療倫理、社会疫学、感染症疫学、臨床試験の計画、システマチックレビューとメタ解析、診療ガイドラインについて、医療技術の費用対効果の評価方法、医療の質の評価方法などバラエティに富んだ授業や実習内容でした。

聞くだけの授業もありますが、グループワークなどの課題ベースの授業も多くありました。例えば、臨床試験の計画書をグループで作成する、診療ガイドラインの質をグループで評価する、といった実習もありました。

またこれ以外に臨床研究計画演習(通称プロマネ)という演習もありました。これは各々学生が自身の研究計画と解析概要についてプレゼンテーションして、学生同士、また臨床研究の経験豊富な教授陣を交えてよりよい研究のための議論をする演習です。毎週2回(学生のみの回と教員含める回)ありました。

これらの授業+予習復習+レポート課題などで、入学から最初の半年はかなり忙しく、月曜から金曜まで8−18時は机に向かう日々でした。

MCRコースは20人ちょっと在籍していて、毎日顔を合わせ、班でグループワークするので、なんだか高校のクラスみたいな趣きがあります。試験が終わって飲みに行く、という大学生みたいな部分もありました。医師になってからは基本的に同じ診療科の医師との生活時間が多くを占めますが、バックグラウンドも、診療科も年齢も出身地も異なる医師同士でお互いの研究について議論しあい、一緒に勉強するのはとても良い経験となりました。

秋からはあっという間

秋になると授業が少なくなるので、多少時間的にも余裕がでてきます。授業を聞いてレポートを書くと、あっという間に年末となります。

年が明けると課題研究発表会があります。

専門職学位課程1年コースのMCR専科生はこの課題研究発表会で、自身が考えてきた研究計画について発表し、質疑応答を経て、臨床研究の計画ができるようになったと認められて卒業となります。

*MCR受講生はこの時は発表の必要はありません、それぞれ自分の修行年限の最後の年に審査会があります。(MPH2年コースだと2年目)

研究の計画

多くの受講生がこのMCRコースの1年をかけて研究計画書を準備します。そして、その次の年から研究を開始しデータ収集を開始する、といったスケジュールで進行します。二年制コースの人はそれでもデータ収集して2年目終了時の課題研究発表会にギリギリのようです。

(私の場合、1年目の冬に研究主幹施設の倫理委員会に提出し、2年目の春頃には研究参加施設の倫理委員会から研究実施の承認がでました。これでも早い方でした。しかし、自施設だけの研究だと自分の気合いと根性で解決する問題も多施設研究だとそうもいかず、なかなか思うように進行しないことにやきもきしました。)

1年が終わると

MCRコースの一年が終わって2年目以降は、MCR専科生(1年コース)の人は臨床に戻るか、後期博士課程に進学します。実際に1年終わると、臨床医の頃と格段に臨床研究の知識は増えているのがですが、なかなかそれだけでは自分の研究を進めるだけの知識経験にならないので、後期博士課程に進学するという方も多くいます。

MCR受講生(1年コースではない人)は各々の研究室をメインに引き続き研究を進めることになります。最初の一年目と違って各々の個人戦となりますが、時々勉強会をしたりしてお互いに刺激しあっています。

まとめ

MCRコースの一年の概要を紹介しました。疫学、医療統計など基本的な内容の授業、実習をうけ、1年かけて研究計画を議論します。もし興味があればMCRコースを受講してみてはどうでしょう。

続く


MCRコースのWebsiteへ

参考)


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