水平と垂直のパーセンテージによるポップさと難解さ Spain - Chick Corea Elektric Band /Music Log
Chick CoreaのSpain
Music Logでは最近聞いた音楽を文章化しようという試みです。
今日聞いたのはChick CoreaのSpain。
最近ギターセッションで弾くためにまずはリスニングと、参考音源にYouTubeでのいろんな演奏を漁っては聞いています。
YouTubeで見れるどの演奏も素晴らしいのですが、今回はこちらのライブ演奏を取り上げました。
2004年のMontreuxでの演奏で、キーボードにはもちろんChick Corea、ギターはFrank Gambale、サックスにEric Marienthal、ベースにJohn Patitucci、ドラムにDave Wecklのレジェンド達のバンド編成。
Eric Marienthalのアドリブ
この中でも今回取り上げた理由はサックスのEric Marienthalのアドリブ部分です。
他のプレイヤーがコードに沿って律儀にスケールを変えて弾いているところを、Eric Marienthalは朗々と歌い上げており、ポップで聴きやすい印象を受けます。
Spainのアドリブ部分のコード進行は下記になります。
Eric Marienthalはこの進行の上で基本的にはBmペンタトニック、あるいはBマイナースケールを使って歌い上げるように演奏します。
ですがEric Marienthalは基本全てのコードをBmペンタトニック、あるいはBマイナースケールでやり過ごしながら、その中でコードが変化した瞬間だけその特色音を1音だけなぞるような形で、コード進行感を出します。
そのおかげで朗々と歌い上げ小節線を感じさせずに、それでいてコードの変化を聞かせてくれます。
水平と垂直
Spainはギタリストにも愛されカバーされる曲で、ジャズやフュージョンギタリストだけでは無く、ロックやポップスのギタリストにも愛されています。
ジャズは元来コードをなぞりながら(またはコルトレーンのように自分でコードを指定しなおしながら)それに忠実に弾くので、動き的には垂直的(ヴァーティカル)になります。譜面で見ると縦の動きに支配されて、窮屈と感じてしまうかもしれません。
しかしロックのようにワンスケールでアドリブを取るのは、メロディー的で水平的(ホリゾンタル)になります。小節毎のコード、小節線を無視して、水平にメロディーを推し進めていく方法論ですね。ワンスケールだとハーモニー的な複雑さは減りますが、リズム的に発展させやすくなりますね。
Eric Marienthalは基本メロディー的で水平的(ホリゾンタル)に、弾くのですが、なおかつ垂直的(ヴァーティカル)にコードトーンをメロディアスに差し込んできます。イメージとしては80%水平的、残り20%が垂直的という感じでしょうか。
この水平と垂直は100対0になることはなく、基本的にはプレイヤーによって(あるいはコーラスによっても)パーセンテージをいろいろ変えながら弾かれます。
このパーセンテージをうまく使いこなして、難解に聞かせたりポップに聞かせたりすることが可能なので、いろんなアドリブを聞いて、自分なりに水平と垂直がどんなパーセンテージの演奏なのかをチェックして見ると面白いかなと思います。
ぜひ次に何かの曲のアドリブを聞くときはそんな聴き方をしてみてください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?