仕事の役に立った学問④ 国際開発学(ESG経営とSDGsの原点)
大学で学んだ学問で、20数年の間に仕事で役立った学問をシリーズで紹介しています。第4弾は「国際開発学」です。この分野は、単に「開発学」と呼ぶこともあるようです。
国際開発学に興味をもったのは、前回に紹介した経済成長理論を学んでいた時です。その流れで、国際開発学を学ぶようになりました。
国際開発学は国家の発展を研究する学問です。主に発展途上国を対象にしています。経済の発展が主軸ですが、産業、教育、行政、人権や安全などの分野別にアプローチしている研究もたくさんあります。
では、国際開発学が仕事とどう関係するのかというと、今流行の「ESG経営」や「SDGs」が直結します。仕事でESGやSDGsに関わる度に、国際開発学を学んでいて良かったと感じます。
では、国際開発学で何を学んで、どう仕事に役立っているのかを説明します。
何を学んだのか
私が大学で国際開発学を学んだのは、上智大学の公開講座だけです。それ以外は書籍で独学です。
開発経済学の大学の教科書レベルの本、アジアのIT産業の発展についての専門書、国際機関のリーダーやエコノミストが書いた本、アマルティア・センやマハティール大統領(マレーシア)の講演録など、色々と読みました。
独学中心ですが、官僚時代に国際協力政策に関わっていたこともあり、国際開発学は実務と照らし合わせて、学ぶことができました。
そうして学んだことの一つが、国家の発展に関する様々な理論です。社会資本(インフラ)が大事、教育が大事、BHNなど最低限の生活レベルの維持が大事、政府の透明性(汚職がない)が大事、インセンティブが大事など色々なことが言われていました。
もう一つ学んだのが、人間中心の考え方です。いわゆる「人間の安全保障」です。この考え方を知った時は、衝撃を受けました。
人間の可能性の発揮を阻害するあらゆる危機を取り除く。このことを経済発展の前に優先しなければならない。そんな考え方です。
この人間の安全保障の考え方は、経営の世界で、松下幸之助やドラッカーが言っていることと、ほぼ同じなのです。
国家も会社も「社会の機関」であることは同じです。その意味で考えると、国家の発展でも、企業の発展でも必要なことは、本質的に同じなのだろうと思います。
どのように仕事に役に立つのか?
社会の機関としての国家の発展メカニズムを学べるのが国際開発学です。そこから得られる示唆は、同じく社会の機関である企業の成長戦略や経営体質強化を考える上で、とても参考になります。
企業の成長の分析に、ソローモデルを当てはめて考えるのは、前回紹介しました。これ以外にも、経営インフラの整備、社員教育、企業ガバナンス、インセンティブなどを検討する上で、国際開発学の知見を用いることができます。
さらにど真ん中なのが、ESG経営やSDGsです。
私の勤め先でも、環境やCSR関係の部門が、こうした概念を用いた取り組みをやろうとします。もちろん、企業としてESGやSDGsに取り組むことは大事です。担当社員も仕事に必要な最低限のレベルでは、ESGやSDGsを勉強してます。
でも、もともとこの分野に関心があるわけでないので、どうしても表面的な話が多くなります。ESGやSDGsに仕事で関わっても、その背後にある「人間の安全保障」や国際開発学まで遡って学んでいる社員は少ないのです。
そんな中で、国際開発学を学んでいると、ESGやSDGsについての本質的な検討ができます。そもそもESGやSDGsが自社になぜ必要かに踏み込んで、やるべきことを考えることができます。
また、他の会社の役員クラスとの会談でも、ESG経営やSDGsは、話題に上ることがしばしばあります。そうした際にも、国際開発学を学んでいれば、他社とも深い会話ができるのです。
このため、この1年くらいは、国際開発学を学んでいて良かった、と本当に思ってます。
まとめ
ここ数年、日本企業の国際競争力の低下が叫ばれ、その一方で企業はESGやSDGsへの対応も求められています。
国家の発展と企業の発展は似ているところがあり、国際開発学は基本的には企業経営への示唆があふれています。また、国際開発学には、ESG経営やSDGsの原点があります。
そう考えると、今は国際開発学を学ぶのに良い時期なのです。そして、そこで学んだことは、今の日本企業の置かれた状況を打破していくのに、大いに役立つはずです。
大学に通わなくても、公開講座やセミナーなど、国際開発学を学ぶ機会は色々あります。身近に機会があれば、一度、勉強してみることをお勧めします!
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