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宝物


高校生の時に教室でマリークワントが流行っていた。
黒い凹凸のある頬紅ケースに目が釘付けだった。
見るだけ見るだけと思いながら百貨店のマリークワントに入った。
緊張していてほとんど何も目に入っていない中
ひとつのポーチの側を離れられなくなった。
丸く連なる膨らみが透明ではなくほんのりグレー。
店員さんに話し掛けられたが何も答えられず値札をこっそり見てその場を離れた。
ドキドキしながらお財布を確認したら
小説を買う用に少し多めに入っていてポーチの価格ピッタリだった。
急いで戻り「これ下さい」と言い手に汗を握り締めお会計を済ませた。
高揚感。
うん十年使っている宝物のひとつ。

2023年4月14日(金)
マリークワントの訃報に寄せて Twitterより


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