コーヒーを淹れる(台所珈琲の足どり②)
コーヒーを淹れるための道具は数えきれないほどありますが、共通して必要なものは「湯(水)」です。湯は材料でもあり、道具のひとつでもあります。
この湯の使い方という観点から眺めてみると、コーヒーを淹れる方法というのは、たったの2種類しかありません。それは、「湯をためる」か「湯をとおす」かです。
「湯をためる」とは「静」のイメージ、たとえば風呂に栓をすることです。そこにコーヒー粉を浸して、成分を引き出します。流れがないので、安定感があり、分量をはかれば同じ状態を再現しやすい方法です。
一方、「湯をとおす」とは「動」のイメージ、風呂の栓を外して流すことです。コーヒー粉でつくられた道を、湯が流れていく最中に、成分を引き出します。動きがあるため、安定させるにはちょっとしたコツが必要ですが、慣れてしまえば、より豊かな味わいをつくることができます。
きちんとした言い方に直せば、すべての道具がこの2種類にスパッと振り分けられるのではなく、ふたつを組み合わせることも多くあります。
また、コーヒー粉は、砂糖や塩のようには溶けないので、飲みやすさを考慮して、一度混じり合った粉と湯を再び分ける工程が入ります。抽出をちょうどいい状態で止めたい、という理由もあります。この工程を「ろ過」といいます。
①どの程度、湯をためるのか、とおすのか
②どの程度、ろ過をするのか
人間が淹れるにしても、機械が淹れるにしても、「コーヒーを淹れる」とはその中にあり、いろいろな道具のそれぞれの特徴は、ここからつかむことができます。無理のない使い方ができれば、どれでも、それぞれのおいしさがあると考えています。
もちろん、コーヒーの味はコーヒー豆に含まれており、淹れ方によって新しく生み出すことができるものではないので、おいしい(好みの)豆選びは肝心です(そのあたりは『台所珈琲の手びき』を読んでくださいませ)。
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