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もしかして、これが「スナック的」?

僕が「木戸の小料理 結のはじまり」を知ったのは、2019年の秋。
近くで行われた本屋イベントでJヴィレッジに宿泊していた夜。
出てくる料理が美味しくて常連客でにぎわっていた記憶があります。

2019年、楽しくて写真を撮り忘れた「結のはじまり」

かおりママは僕にとってのお姉ちゃん的な存在で、会うとたくさん自分の話をしたくなる人です。
先月「シェアハウスと食堂kashiwaya」に行ったときも、いまやっていることの話をしてとまらなくなってしまいました。

もしかして、これが「スナック的」?そんなことを思ったりしました。

コシヒカリ+黒米で「ハートの田んぼ」をつくって稲刈り

20代の頃、新潟市の外れで農業サークル的活動をやっていたとき、家を借りていた大家さんや当時お世話になっていた町の観光課長とお酒を飲む機会がありました。その2次会は決まってスナックでした。その名もスナック「卑弥呼」。

20代の僕にとって、スナックは衝撃的な空間でした。ボトルが入っていれば1人1000円(カラオケ込)という破格料金なそのスナックでは、推定50代のおねえさま(卑弥呼ママ?)がウイスキー水割りをつくってくれて、カラオケを適当に歌い盛り上がる空間。

僕には何が面白いのかさっぱり分かりませんでした。友人と2人で行っては、大家さんのボトルを勝手に飲み、尾崎豊を熱唱したり、ラスト1曲でブルーハーツ「Train-Train」をノーマイク絶叫して店の雰囲気をぶち壊して「お会計で」って言って2000円払って出てきてました。ごめんない。

Train-Trainをノーマイク絶叫中の貴重な映像。あ、画像か(笑)

「なぜ、おじさんたちはこの空間(時間)にお金を払うのだろう?」
そんな問いが自然と生まれました。

ある日、気がつきました。おじさんたちは卑弥呼ママに話をしに来ていたのです。

日々のどうでもいい話を、誰かに聞いてもらいたい。
そんなおじさんたちがスナックに来ていたのです。もしかすると、そうやっておじさんは、自らの存在を確認しているのかもしれません。


今回、余白をデザインする新スナック学講座 第1期を募集するにあたり、かおりママから薦められた課題図書がこちらです。

BRUTUS「スナック好き」(2015年11月15日号)

読んでみたら、本屋で余白をデザインしてきた私にもたくさんの刺さるキーワードが。

まずは糸井重里さんが30歳前後に通ったスナック<ホワイト>について語ります。

「行けば誰かがいる、誰かと無駄話ができる。それが面白かったし、居心地がよかったんです。(中略)スナックの真骨頂は無駄話です。一生心に残る話をすることもあれば、ただ忘れる話もある。その場で咄嗟に考えた作り話や遊びもある。要はアドリブです。(中略)スナックでの会話はアドリブだらけのフリージャズです。「それってジャズなの?」というギリギリのところでしゃべる。それが楽しい。だから、ママという監督のもとフリージャズのキャストとして最良の客であることがスナックでは大事なんです。カウンターの隅でニコニコしながら話を聞くだけの人もいるけれど、そういう人も大事。ジャズを楽しむ観客もいなくちゃいけないんです。」

BRUTUS「スナック好き」(2015年11月15日号)

おお!急にスナックが深くなる感じがしますね。コミュニケーションデザインの舞台としてのスナック。
今回の新スナック講座のテーマである「余白をデザインする」に通じるものがあります。

糸井重里さんはこうも言います。

「あの頃の僕には、若者特有の闇があって、報われない何かが、行く先もなくとぐろを巻いていたんだと思う。ただ、そんな日々でも、「どこまでも自由でいいんだ」ということを実感させてくれる場がスナックだった。だから毎晩通っていたんだと思う。」

BRUTUS「スナック好き」(2015年11月15日号)

ああ、スナックって、そういう場所なんだな、って。若者だけじゃなくて、多くの大人の中の闇や、報われない何かがグルグルとしていて、それを受け止める場所がスナックだったんだなと。

その他、この雑誌に出てくるグッとくるセリフを。

「バーにはこだわりが必要だけど、スナックには必要ない」
「日本はスタバ以前に独自のサードブレイスを発見していたんですよね。それが、まさにスナック」
「スナックはそうじゃねえんだ。コミュニケーションツールなんだから、カラオケは。場を壊さない曲を選ぶことが大切でさ。」
「結局、スナックって疑似家族だからね。うん。お父さんたちもさ、真っすぐ家に帰りたくないわけさ。職場で嫌なことがあったりするわけだから、それを持ち帰っちゃったら家ん中に嫌な空気が入っちゃうわけ。それを、スナックに寄って置いてくんだよな。」
「ママ業の秘訣はお客さんに好意はあるけど興味はないってことかな。私はゲストのあれこれに興味はないし、知らなくてもいい。でも、その人を大事にしたいっていう愛はあるよ。」

BRUTUS「スナック好き」(2015年11月15日号)

すごいですよね。「スナック」から始まって、「場」とか「コミュニケーション」とか「家族」とか、考えさせられます。

もっと言うと、愛ってなんだっけ?みたいなの。そんな問いがスナックには詰まっていると僕は思っています。

ということで、僕は、上に出てくるような「スナック的」なキーワードにヒットする20代・30代のみなさんと、かおりママとで一緒に話すことで生まれるものを見てみたい。感じてみたい。それが新スナック講座を僕がやりたい理由です。

余白をデザインする新スナック学講座は、4月16日(日)~募集開始予定です。

▼結のはじまりのインスタグラムはこちら

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