2022年3月23日

ハーベック経済・気候相がカタールを訪問し、LNGの長期調達を取り決めた。他の国からもLNGを調達する意向で、このところ訪問外交を精力的に展開している。

同相は炭素中立の実現に最も精力的に取り組む緑の党の党員である。非加工の天然ガスに比べカーボンフットプリントが多いLNGの輸入を増やす取り組みは当然、不本意だろう。

望まない政策を行う原因は言うまでもなくロシアのウクライナ侵攻である。これが、ロシアとの決定的な対立を避け、外交を通して欧州の安全保障を確保するというドイツの従来政策の前提を根底から覆してしまったのである。
戦略見直しの必要性はしかし、欧州レベルにとどまらない。中国もまた危険な独裁国家であり、国も企業もリスク評価と対策を改めなければならないだろう。

「中国がもし台湾に軍事侵攻したら…?」――。中国で事業を展開する企業の経営者はこの問いを無視できなくなっている。ロシアの場合と同じて、欧州連合(EU)と米国は厳しい制裁を課し、同国で事業を展開することは極めて難しくなる。世界2位の経済大国となった中国が市場、サプライチェーンともども突然、失われた場合の影響はロシアの比ではない。

VWのディース社長は2019年、中国がすでに体制上の競合と独・欧州で認識されるようになっていたにもかかわらず、「中国企業になる」と威勢の良い発言を行った。「そんなことを言って大丈夫なのですか?」と個人的に思っていたが、習近平氏が侵略者のプーチン氏ではなく対露制裁を行う西側諸国を批判していることにディース氏は懸念を示しており、目が覚めたようである。巨大組織のトップに立つ者である以上、中国喪失という最悪の事態を想定した極秘の対策を策定しなければならないだろう。台湾進攻は起きないかもしれないが、ないと言い切ることもできないのだから。ことが起きてからでは手遅れとなりかねない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?