「龍が如く7 光と闇の行方」RPGで展開する骨太な人間ドラマ

※最後にストーリーのネタバレがありますが結論として「龍が如く7」は過去作をプレイしたことがない方にも強くお勧めできます。

 実のところ正統派の龍が如くはまったくやったことがなく「北斗が如く」でなかなかやるなという感想になり、「Judge Eyes 死神の遺言」で完全にはまって7が初ナンバリングタイトルプレイとなります。過去、体験版は遊んでいるのでこれまでの主人公桐生一馬とストーリーはほぼ把握しているという程度。

 今回、RPGになるということで最初に感じたのは「なぜそうしてしまったのか」でした。プレイした二作はやや作業感はあるもののゆるいアクションRPGとして良い出来と思っており、壊してしまうのはもったいないという感想。また、プロモーションなどを見ていてもコミカルに寄りすぎて馴染めない。と、思いつつもともとシリアスなストーリーなのにケンシロウや桐生一馬、八神……というかキムタクがしょうもないクエストに巻き込まれたりするのが常なので、まあまあ許容範囲。じゃあどうなったか見てみよう、というのがプレイの動機。

 今回主人公となる春日一番はソープランドで生まれ、その店長に育てられ、成り行きでヤクザになった陽気で熱い男。おやっさんと慕っていた組長の頼みで若頭の身代わりに殺人の罪を着て刑務所へ……というのが序盤の展開。しかし刑期を終えて出てみると迎えもなく、神室町の勢力図は書き変わり、おやっさんのところへ乗り込んだら撃たれてしまう。重症で目を覚ました一番はなぜか横浜におり、ホームレスとしてその日の糧を得るところからやりなおす……という物語になってくる。陽気で熱いがバカな春日一番、元薬剤師のワケありホームレスであるナンバ、元刑事で免許センターに飛ばされた足立と、通常のRPGではありえない平均年齢、そしてしょぼくれた中年男性だらけのパーティでゲームはスタートする。

 さて、この春日一番という主人公、バカキャラという印象は変わらないのだけど、話が進んでいくと無学だが頭はなかなか冴えており、物事を理解する努力は怠らないのだとわかってくる。ではなぜバカな印象のままなのかというと、正しいと思ったことには損得を考えずあらゆる知恵と手段を駆使しようと足掻き、あきらめないからだ。要するに心がバカなのである。ナンバも足立も、その他の仲間たちも最初は一番をバカだと思っているがつきあいが続くとみんな一目置くようになる。一番は恩を忘れず、最初に助けてくれたホームレスや不法労働者などの居場所を守ろうと奔走する。そして自分を撃ったおやっさんのことも決して悪くは言わず、信じると言い放つ。こうなるとどうしてもその後の裏切られる展開を想像し胸が痛むのだけど、行く末を見届けなければという使命感が芽生え、どんどんゲームを進めてしまう。

 基本的にゲームは横浜の異人町、現実でいうと伊勢崎町周辺と中華街、山下公園までを舞台に展開。元横浜市民なので土地勘があり親しみが持てる。歩いていると敵に絡まれ、戦闘になるというのはこれまで通りなのだが、今回はシステムが行動順制のRPGとなっている。喧嘩するのにRPG? と思っていたのだが、実のところこのゲーム、敵が火を拭いたり謎の武器を使ってきたり、ホームレスが回復魔法を使ったりとめちゃめちゃな世界。なぜそうなるのかというと、この戦闘シーンは「現実が一番の頭の中ではこう見えている」という心象風景だからだ。ドラクエ(そのままドラクエと言っている)が大好きな一番の人生は常にRPGなのだ。そしてこの順番に行動するRPGというシステムが、仲間と共に戦うという物語にとてもマッチしている。実のところドラクエのような老舗のRPGと比べると作りは甘く、同じ技を連発しがちだし、勝ちが見えた状態からちまちまと体力を削る作業時間が長くてボス戦はダレたりもするのだけど、新しい技や武器、新しい敵、そりゃないよという極み技の数々がなかなか飽きさせない。なお、ボス戦が単調なのは元からなのでそれはRPGになったのが原因ではないと言える。

 さて、ここからストーリーのややネタバレ。何もかもなくなりホームレスからやりなおすという本作は、どん底とは何か、やりなおすとは、そして取り返しのつかないこととは? というのがテーマである。異人町は行き場のなくなった人々が集まって複雑怪奇な力関係を築いているが、それらも法の庇護を受けられない人々が生きていく術として描かれる。そのグレーゾーンを脅かすのが権力の裏も面も支配する都知事、青木遼なのだがその青木でさえ弱い立場から立ち上がるためにあらゆる手段を使い、のし上がってきている。「光と闇の行方」はまさに一番と都知事の対比である。一番はバカなので人を信じるのはやめないが、それで自分が傷付いたりはせず、相手を救うまできちんと信じ続けるのでプレイヤーがイライラさせられることはあまりない。コミカルな戦闘や軽妙なやりとりには重厚で骨太な物語に胃もたれしないためのエッセンスとしてよく効いている。こういうドラマをテレビでも見たいと思うが、実際のところ「Judge Eyes」と同様、現実に解決できないような問題は殴ってなんとかしてしまう、というリアリティラインの下げ方はゲームならではとも言える。

物語の展開的に次はどうするの?というところがあるものの、新しくなった「龍が如く」の次回作にも期待したい。もちろん「Judge Eyes 2」もあれば大いに期待したい。本作をプレイすると、現実世界の隅に存在する様々なグレーに少し優しくなれるかもしれない。おすすめ。

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