「グノーシア」ループする世界でアルゴリズムが物語を紡ぐ

※このエントリにはごく序盤のネタバレが含まれています
 端的に言うとグノーシアは一人用の人狼ゲーム。ただし、パラメーターによる成長と議論に使えるスキルがあり、人狼ゲームを繰り返していくうちに物語が進む、と言うもの。

 ルールは以下
・グノーシアは毎晩一人、人間を襲撃して消滅させる
・人間は消されないように毎日一人、グノーシアと思われる人間を冷凍冬眠させる
・エンジニアは毎日一人、メンバーがグノーシアかどうか調べられる
・ドクターは冷凍冬眠させたメンバーがグノーシアかどうかわかる
・守護天使は毎晩一人、グノーシアの襲撃からメンバーを守れる
・AC主義者は人間だがグノーシア陣営に加担する
・留守番2名は必ず人間だと分かっている
・グノーシアは過半数になれば、人間はグノーシア全員を眠らせれば勝ち
・ただし勝敗が決した時に「バグ」が残っていると宇宙が消滅して負け

 過去の作品で言うと「ダンガンロンパ」はかなり人狼を思わせるが、こちらは人狼そのもの。人狼をうまくシステムに落とし込んでおり、ある程度人狼のノウハウも通用する。
 人狼に詳しくない人に説明しておくと、人狼は口頭のやりとりだけで進んでいくゲームで基本的に自分の陣営を勝たせるために議論をし、邪魔なメンバーを排除していく。グノーシアで言えばドクターやエンジニアなど、誰がグノーシアか確定させられる役職のもあるが、そもそも名乗った本人が本物とも限らない。役職者が本物と信じてもらうために弁を振るうし、グノーシアなどの反人間陣営は自分が本物のふりをして議論をミスリードしていく。

 人狼ゲームそのものは長くても15分。ゲーム内でも5日程度で決着がつく。が、この人狼ゲームは何度も何度も繰り返すことになる。主人公はこの数日間、人狼ゲームが始まってから終わるまで記憶を保ったままループしているからだ。このループを抜け出すため、登場人物15人の情報を集めていく、というのがゲームの主旨となる。ここでポイントとなるのは、ループと言っても同じ時間を繰り返しているわけではないと言うこと。リセットされると人狼ゲームの参加者、役職などは全て変わってしまう。前回エンジニアとしてグノーシアを追い詰めたメンバーは今回グノーシアで自分を狙っているかもしれないし、なんなら自分もグノーシアで一緒に人間を消滅させていく仲間かもしれない。

 同じ人物でもシチュエーションが変わると様々な側面が見えていくる。正直最初はほとんどのメンバーに好感が持てないが、繰り返すうちに理解は深まっていく。すると感情移入して人狼ゲームがやりにくくなるか、というとそうでもなく、人物理解が深まることで人狼ゲームは有利になり、むしろ冷徹に対処できるようになってしまったりする。この感覚。人間を駒のように感じてしまう、そしてそこに葛藤してしまう、でも楽しい。これこそが「グノーシア」のいちばん面白いところかもしれない。

 実は主人公は孤独ではない。15人のメンバーのうちわずか1名、セツだけは主人公と同じく何度もループを繰り返している。しかしセツのループの順番は主人公と異なっており、出会うセツは昨日のセツではないかもしれない。そしてセツ自身もグノーシアだったり違ったりする。シチュエーションを共有する仲間だが、同時に人狼ゲームでは敵だか味方だかわからなかったり、そもそも敵だと分かっていて相対したりすることになる。このセツとの束の間のやりとり、そして成長した主人公をセツが頼り、時には恐れ、となってくる頃には自分もすっかり人狼マスターになった気分になれる(パラメーターとスキルのおかげなのだが)

「グノーシア」は非常にシステマチックでリソースも少ないゲームだが、そこから感じるストーリーの壮大さ、そして動かされる感情の総量は相当なものだ。プレイ時間はおそらく十数時間程度だが、確かに自分はセツとともに宇宙と様々な時空を旅し、メンバーの人生に触れ、宇宙の終焉を見てきている。これだけの体験をわずかなスタッフで作りあげた開発会社には敬意を評したい。

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