見出し画像

「地続き」になる

セッションの日は、平常運転がとても難しい。

主治医にこれまで訊かれた質問を中心に、内観して、主観的体験をここに記す、という作業を試みている。
前回、診察室で、とある記憶が自分自身と「地続き」になった背景には、この作業が影響しているとおもう。

「地続き」。

今回の体験を人に伝えようとして、最もしっくりくる表現だった。
私は、かつて彼女/彼から切り離された存在だ。そして同時に、彼/彼女を切り離した存在だ。
切り離し/切り離されて、僕は虚空を漂っていた。
切り離され/切り離して、虚空にひとり漂う彼らを見棄てようとした。
回収し/回収されて、私(ごくごく小さな断片だ)の記憶と小さな断片(ごくごく小さな断片だ)との記憶がフラットな「地続き」になった。同じ次元の、同じ地層のもの。

酷く苦しかった。
異物が自分の一部になっていく感覚。
拒食の悪化している時期に飲み込んだバターのかけらのようなもの。
もっとわかりやすく言えば、人肉。
すぐにでも吐き出したかった。
「あれ」が私の一部になっていく。侵蝕されていく感覚。
酷く、酷く苦しかった。

今も消えない。きっともう二度と戻れない。

君は純粋だね、とある人に言われた。
否定するほかなかった。それでも私は、ほんとうは無垢でいたかった。
僅かな断片の記憶と「地続き」になっただけなのに、耐え難いほど濁り汚れた己を憎む。抑えがたいほど憎む。殺したいほど憎む。

何度か自殺を図った。

私はどうしようもなく汚れてしまった、その取り返しのつかなさへの絶望にも似た感覚。

それでも、少しだけ見晴らしがよくなった。

今回は、前回の転機を振り返り意味づけるため、そして今後の道筋と方向性をすりあわせるためのセッションだったと思う。
得たものはとても大きかった。
けれども、あまりにも急激に行えば、きっと私は命を失うだろう。
それでは本末転倒、私は生きるのだ。
この人生を、私は私の責任として、生ききるのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?