1. ヨーガってなんだ?
• 「ヨーガ」を意味する言葉の表記法はいろいろある
• 「ヨーガ」の内容もバラエティに富んでいる
• 「ヨーガってなんだ?」に対する明確な答えはない
• 「ヨーガ」のつかみどころのなさはその複雑怪奇な歴史ゆえ
ヨガ、ヨーガ、YOGA。書き方はいろいろありますが、とりあえず今はどれもある程度「同じようなもの」を指していると仮定して、ここではサンスクリットのカタカナ表記の伝統にならい「ヨーガ」と記すことにします。
ヨーガが国や文化圏を問わず人気を博しているというのは、改めて言うまでもないことかもしれません。現在、世界の総人口77億人(2019)のうち、「ヨーガ人口」は3億人とも言われています。日本に限ってみても、月に1回以上ヨーガ(ピラティスを含む)を行う20〜60代の男女は590万人と推定されています(ヨガジャーナル日本版調査より)。これは、同年代の日本人の約10%にあたります。
これだけ多くの人がヨーガと接点を持っているにも関わらず、あるいはだからこそかもしれませんが、ヨーガと言われて思い浮かべるものはおそらく十人十色、人によって大きくイメージが異なり、統一されたヨーガの定義、つまり「ヨーガってなんだ?」という問いに対する誰もが納得する答えはないように思われます。その理由として、現在ヨーガにはさまざまに異なる背景のもとで発展した多様な流派や派閥があるから、ということがまず挙げられるでしょう。ただ、それだけではなく、ヨーガは歴史的にみても輪郭をはっきりとさせることの難しい、やや曖昧な存在として、長い時の流れの中で姿を二転三転させてきたということもあるように思うのです。
とはいえ、曖昧だからといって歴史上、存在感がなかったわけではありません。むしろその逆で、曖昧がゆえに色々な文脈に適応することができ、結果的にかなり広い領域で影響力を持ったのではないかと想像しています。それがまたヨーガの姿をくっきり浮かびあがらせることを難しくしているのですが。
そんな曖昧模糊としてつかみどころのないヨーガを、それでもわかりやすく理解したいというのが人間の性なのか、ヨーガを腑分けして定義づけようと模索してきた先人たちがたくさんいますし、今も現在進行形でその作業に情熱を傾けている人々がいます。これは、そうした人々の研究の成果をつまみ食いする形で、ざっくりとではあっても、私なりにヨーガの輪郭を把握してみようという試みです。