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地元の神獣

ガキの頃の遊びってば
カブやクワとり
穴場があって木を蹴ったら
落ちてくるレベル

田舎よねぇ

ザリガニ釣りも究極よね

ドブ川にスルメくくった糸おとして
ザリはさんだのを
引き上げるだけの超イージー作業

やっぱ
アメザリ狙い

赤くて硬くてカッケーの

ドブザリはアウトオブ眼中

地元のありとあらゆる川に
糸を落としましたよ

ガキなんぞチャリあったら
何処にでも行けますわな

とはいえ
結局はココやなって場所がきまるんよ

チャリで5分くらいの神社の前
神社を道で挟んだトイメンの田んぼ
その田んぼに沿って流れてるドブ川

一年中水量が安定してて
何より次期が来れば田んぼで
カブトガニやオタマジャクシもっ

結局こんな楽園はココだけだった

いつものようにスルメを食いながら
スルメを垂らして待つ取る待つ取る

ほんと良くとれる
ツレも相変わらずに大量

しかしガキの集中力で極短

飽きて田んぼのヘリを
枝持ってウロウロ

すると大きい木があり
その下にひっそり井戸

木の存在は知っていたが
井戸は見逃していた

ツレと2人で目をキラキラ

大発見は大冒険です

ワクワクが止まりません

ツレがいいます

『スルメ落とすけ?』

僕がいう

『やろけ』

木の影で光は入らず
なんかジメっとしている感覚

井戸の中の漆黒の水にスルメをおとす

5分ほどか

引いた

影と濁りで水の中は確認できず

引き上げるしか無いが
究極に思い

2人で引かねば持っていかれるほど

ググッとゆっくりあげてゆくと

コレ、マジなんすけど

顔がワニで身体が亀の生き物が…

僕は
『ワニやんけっ』
と叫びました

ツレは
『でっかい亀やんけっ』
と叫んでいました

尻尾までは確認できぬまま
その生物は糸を食いちぎり
井戸に戻っていきました

『今のなんやねん?』
『亀け?ワニけ?』

『ワニガメやんけ』

今でこそ、噛みつきガメを
ワニガメなんて言いますけど
ワタクシらが小学生のときは
そんなもの知らず

しかも噛みつきガメとは明らかに違う

顔がしっかりとワニ

次の日、その次の日と
ツレとワニガメを捕まえに行きました

無理でした

僕たちは神社さんの近くの井戸なので
あのワニガメは
神様の使いだとおもっていました

いつしか
ワニガメを捕まえる気持ちも薄れ
その存在すらも薄れていきました

それから20年ほどたち経ち
私は芸人になっていました

ある番組で
私の地元を案内するという企画

私は地元の懐かしいご飯や
やっていたバイト先
たまっていた公園などなど
打合せで話していると

ふと
思い出したんです

神様の使い

『ワニガメ』のことを

僕は、その話をスタッフさんに話すと
面白半分ではあると思いますが

『是非、そこに行こう』という話に

当日

神社の30メートルほど手前で
ロケスタート

その時のことをゲストに話しながら
神社に到着

神社を紹介しつつ木の方を見る

すると

あの頃はなかったヤグラが
まるで井戸を祀るように組まれている

『えっ?えっ?』

と言いながらヤグラに近づく

ヤグラには菱形の連なる紙が
御神木のようにかけられている

井戸には木で作られた蓋
装飾は無いが何か重みを感じる
まるで封印しているかのような

明らかに
あの頃よりも丁重に扱われている井戸

神様の使いはいるのだ

確信中の確信

スタッフさんがいう
『蓋を開けてみましょうか?』

僕は固唾を飲んだ
『はいつ』

20年前の記憶が
一気にフラッシュバックし
僕は泣きそうになった

蓋の取手を掴み

『いきますっ』

蓋を開けた

カメラさんとゲストがグッと覗き込む

すると

井戸の中にはミチミチに
コンクリートがつまっていた…

『ん?』

カメラさんもグッと寄る

スタッフさんが言う
『コンクリートっすか?』

僕は理解できないが

『コンクリっすね』

『ミッチミチにつまってますな』

ゲストはケタケタ笑ってございました

あの頃、僕たちが見たワニガメ

彼は…

どうやらコンクリの中で
カチンと…

いやぁーよねぇー

実話っすよ
マジでマジで

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