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“こだわること”のススメ
青森への一人旅。
10連休のゴールデンウィークを贅沢につかって、青森までの誰にも気を遣わない一人旅をしてきた。
一人旅で悩むのが夜ごはんをどこで食べるか、である。
せっかくだから、コンビニではなく、その土地のものを食べたい。でも女子ひとりでも耐えられそうな空間のお店がいい。
その結果、いつも駅近の定食屋になるのだけど、
その夜は食べログの評価の高さに負け、勇気を出して、駅から少し離れた「居酒屋」の引戸を開けた。
カウンター席。板長さんの目の前だ。
周りが酒とあてを嗜む中、少し緊張しながら、弘前のご当地料理の定食を注文する。
カウンター隣の灰色Tシャツのおじさんもひとりのようだ。
板長さんと灰色おじさんの話をきいていると、
おじさんは学校の先生、テニス部の顧問らしい。
「生徒がYoutubeを見る意味がわからん」
そのことばを耳にしてから、なんだかうずうずし、結局、その話題に参戦。
気づけば、タブレットや動画コンテンツの便利さを先生に諭していた。先生は、家に帰ってまでも、画面とにらめっこなんかしとうないわ、と言っていたけど。
板長さんは、夜中、家に帰って、Youtubeで、かわうそと、ねこの動画を観るのが、日課らしい。
意外だ。
嫁さんと向かい合って話すより、並んでかわうそやねこをみて、かわええなあ、と言ってる方が嫁さんとうまくいくらしい。
そんな板長さんが、弘前のごはん屋さんでおすすめしてくれたのが、「三忠食堂」
美味しんぼの東北編でも、津軽そばの名店として、登場する。実際に美味しんぼの該当ページも読ませてもらった。
板長さん曰く、「コシがなくてボソボソとしているが、一年に一回は食べたくなる、不思議にクセになるそば」、だそうだ。
それがその店の”こだわり”、と板長さんは言った。
「なんでもこだわらなあ、面白くないからなあ。こだわりは大切や。」
何気ない一言だったが、はっとした。
———大人になるうちに、こだわらなくなっていた。
中高大と進むうちに、自分が興味ないことを好きな人もいるし、いろんな考えが世の中にあることも知って、自分の意見を容易に変えるようになった。
人に対する許容範囲は広がったが、浅く付き合うようになった。ひとりひとりに対する興味もうすくなり、職場で働いてる人の好きな食べ物、趣味など、飲み会で話したはずなのに全然覚えていない。覚えてないけど、その場だけは楽しい。
服も、中学校の頃は安くて一番かっこいいものを求めて休日探し回っていたが、いまは、サイズがあって、ある程度ちゃんとして見えたらそれでいい。だから楽だ。
毎日の昼ごはんも、お腹に入ればいい。
生活も、まあまあ楽しければいい。
人にもそこそこ好かれればいい...
でも気づいた。
こだわりがなくなったのではなく、実は妥協と楽にこなすことを覚えただけなんじゃないかと。
中学校の服選びは、購入した店の照明など、その時の光景を覚えている。小学校のとき、バレーボールで1位にこだわったときも校庭の砂の感じを覚えている。
こだわっているときは、どきどきして、頭も身体も活性化しているからその時の感触が記憶に残るのかもしれない。
そんな気持ちをもう一度味わいたい。
だから、もう一度こだわってみよう。