4. 実践的なお悩み解決法『石橋を叩いて渡る哲学』
実践的なお悩み解決法
生きる意味という前提を得ることで堂々と生きていけるようになった石橋を叩いて渡る我々ですが、生きていく中で直面する問題への対処法を知っておくとより安心できます。そこで、今回は実践的なお悩み解決法について紹介します。思考の要素で表現すると、実践的なお悩み解決法とは、作業体系という知識体系に該当します。
悩み・問題
├── background
│ ├── 対処の種類
│ ├── 悩み・問題のステージ
│ ├── どうすれば良いのか決まってない状態
│ │ └── background
│ │ ├── background
│ │ │ └── 幸福である。
│ │ ├── 選択肢を知る。
│ │ └── 選択肢を選ぶ。
│ │ └── 自分の承認
│ │ └── 自己肯定感
│ │ ├── 他人の承認
│ │ └── 教養による自己肯定
│ ├── 悩んでいる度合いによって改善対象を変える。
│ │ └── background
│ │ ├── 深刻な悩みの場合は環境の改善を重視して考える。
│ │ └── 軽い悩みの場合は自分の改善を重視して考える。
│ ├── 多くの場合、自分の理想通りに問題を解決することはできない。
│ └── 大抵の場合、なんらかの妥協を選択することになる。
└── 悩み・問題への対処法
└── どうすれば良いのか決まってない状態から脱却する。
├── background
│ ├── どうすれば良いのか決まってない状態
│ └── 通常の思考を繰り返し知識体系を育てるという方法は「知識体系として育てること」と「育てた知識体系を悩みを繋ぐ」ことに時間がかかりすぎるのでNG。
├── 選択肢(対策)を知るために問題と原因を理解する。
│ └── なぜなぜ分析
│ └── 問題の言語化
│ ├── background
│ │ └── 悩んでいる度合いによって改善対象を変える。
│ │ └── background
│ │ ├── 深刻な悩みの場合は環境の改善を重視して考える。
│ │ └── 軽い悩みの場合は自分の改善を重視して考える。
│ └── 問題を紙に書き出す。
│ ├── 紙に書いた問題に「なぜ?」と問い、問題を細分化する。
│ └── 各問題の原因を探る。
│ └── 原因の言語化
│ └── 各問題に「なぜ?」と問い、自分なりに原因を書く。
│ └── 「なぜ?」と問い、自分なりに原因を書く作業を各原因について納得行くまで繰り返し行う。
├── 選択肢(対策)の立案
│ └── 対策を立案する。
│ ├── 対策を考える。
│ └── 第三者の対策を採用する。
│ ├── 対策を人に聞く。
│ ├── 対策をAIに聞く。
│ └── 対策をネットで検索する。
├── 選択肢(対策)を選ぶために自分の承認を得る。
│ └── 自分の承認を得る。
│ └── 自分の承認が得られない場合
│ ├── 代替策
│ │ └── 問題の原因と対策について他人の賛同を得る。
│ │ └── background
│ │ └── すぐに実行可能。
│ └── 正攻法
│ └── 自己肯定感に問題がある。
│ ├── 自分について他人の承認を得る。
│ │ └── background
│ │ └── 特定の人との多くの時間と関係の共有が必要。
│ └── 価値観を再定義する。
│ ├── background
│ │ └── 多くの時間が必要。
│ └── 時間を確保する。
│ └── 社会学・哲学・精神医学などの知識を身につける。
│ ├── 幸せの概念を定義。
│ └── 自分自身の意義・生きる意味を定義する。
└── 選択肢(対策)の実行
悩んでいるとはどのような状態なのか
実践的なお悩み解決法を紹介する前に、悩んでいるとはどのような状態かを定義したいと思います。ざっくりと自分の過去の体験を思い出して抽象化すると、
悩んでいるときの共通点は、
「どうすれば良いのか決まってなくて動けない状態」
ということです。これを石橋を叩いて渡る哲学と社会学の観点から考えてみます。
まず、石橋を叩いて渡る哲学における幸せとは、
「自由」を前提として「知識の探求や哲学的思索などにおける精神的な快楽」「創造的な活動によって人との関係の中で役割を果たすこと」「人間関係」を求め、得ること。
でした。であるならば、幸せの前提条件は「自由」であるということになります。
社会学の観点からアイザイア・バーリンの積極的自由を再び参考にします。
自由とは、
・選択肢がある
・選択肢を選ぶ権利がある
・選択肢の知識があり、それを選ぶ能力がある
でした。自由の中に、選択肢がある、選択肢の知識があるなど、どうすればよいのか分かっていることが条件として定義されています。
つまり、悩んでいる状態とは、
「自由がない故に、動けないでいる状態」
と言えます。
実践的なお悩み解決法における前提
実践的なお悩み解決法はあくまでも「自由がない故に、動けないでいる状態」を脱する手法です。多くの場合、発生している問題を自分の理想通りに解決することはできません。結果として、なんらかの妥協案を選択することが多いと思います。また、問題の把握には作業体系だけではなく、人間関係や業界の構造といった知識体系を持っていると有利な場合が多いです。これらの前提があるものの、「どうすれば良いのか決まってなくて動けない状態」さえ脱することができれば、延々と悩み続けるストレスからは解放されます。必ずしも、理想通りに解決するとは限らないという注意書きでした。では、解説に戻ります。
解決するための条件
悩んでいるとはどのような状態か言語化し、自由がないという原因が分かったことで、必然的にその状態を脱するための条件を定義することが可能になりました。
「自由がない故に、動けないでいる状態」から脱却するには、
・選択肢を作る。
・選択肢を選ぶ権利を持つ。
・選択肢の知識を手に入れ、それを選ぶ。
が必要になります。選ぶ権利に関してですが、我々はそもそも選ぶ権利を手にしています。
よって、
・選択肢を知ること
・選択肢を選ぶ能力
が必要です。
選択肢を知ること
悩みにおける選択肢とは対策のことです。
対策を得るまでのプロセスは、次の3つです。
・問題を理解する
・原因を理解する
・対策を考える
これら3つを可能にする作業体系として、「なぜなぜ分析」という方法論があります。なぜなぜ分析とは、問題に対して「なぜ?」と自問することで問題を深堀りしていき、原因を見つける手法です。このなぜなぜ分析の良いところは、複雑な事象の1つ1つが「なぜ?」という自問を通じて因果関係で結ばれることによって、問題の事象が体系化されるという点です。また、問題の言語化に役立つ、なぜなぜ分析の補助となる作業体系として、「問題を言語として紙やPCにアウトプットする」ということを推奨します。
なぜなぜ分析の詳細な手順は作業手順の図によって把握してもらうため、ここでは実践する際のコツを1つだけ述べておきます。
そのコツとは、
悩んでいる度合いによって改善対象を変えるということです。
具体的には、
・深刻な悩みの場合は環境の改善を重視して考える。
・軽い悩みの場合は自分の改善を重視して考える。
です。重要なことですが、必ずしも改善対象と問題の原因が一致するとは限りません。上記のコツは、あくまでも改善対象の話であり、原因を特定する際に使えるコツではないということを述べておきます。問題の対策は、基本的にできる範囲で自分が適応する方が楽です。しかし、深刻な悩みの場合はおそらく適応できない環境にいる事が多いと考えられるため、環境を改善する方向で考えるというわけです。それに、大抵の人は追い込まれている状況で飄々と適応することは難しいでしょう。
選択肢を選ぶ能力
さて、これが問題の対処におけるとてつもなく重要な要素です。問題の言語化による原因の把握、そして対策の立案までは作業なので作業負荷は高いですが、実践可能です。しかしながら、その後の工程として、立案した対策を選べるのかどうかということが非常に大きな壁となります。
わかりやすい例として、退職代行というサービスがあります。退職代行とは辞めるという方針が定まっているのにもかかわらず、辞められないという人のために代行して退職の手続きをしてくれるサービスです。ちなみに、私はこのサービスには肯定的です。不幸を回避するためにお金を支払うのは正しいお金の使い方だと思います。
しかし、なぜこのようなことが起こるのでしょうか。退職代行で言えば、職場の上司がヤバいという可能性や退職する本人の体調やメンタルの状況が芳しくないということが関係していることは往々にしてあると思います。しかし、要因はそれだけでしょうか。私は、それだけでなく選択肢を選ぶ能力が関わっていると考えています。選択肢を選ぶ能力は尊厳によって獲得できます。尊厳とは、自尊心・自己価値です。その中には、自己効力感も含まれます。自己効力感とは、自分だったら何でもできる。とか何とかなる。という謎の自信です。このような尊厳は、哲学や信頼できる人の承認から得られるものでした。
退職という自分に相応しい選択肢を持っていても、尊厳がなければ、
・自分が本当にそれを選んでも良いのだろうか
・自分がそれを職場の人に言う権利があるのだろうか
と考えてしまいます。もちろん、堂々と言う権利がある!!と応援したいところですが、私はそこにいません。そこで、幸せの条件でも出てきたように、尊厳が必要になってきます。尊厳は、幸せに直結する要素のため、どの問題であっても多少なりとも関係してくるのではないかと思います。この本を読んで哲学を構築して尊厳を獲得したという場合は、著者としては嬉しい限りです。しかし、この本をじっくり読む暇もなく問題の中にいて、落ち着いて哲学を構築するのが不可能な場合、尊厳を支えるだけの哲学になっていない可能性もあります。また、この作業体系だけを誰かに共有された場合には、そもそも哲学を持っていないこともあるかもしれません。その場合は、図にも書いていますが、一時的な代替手段として尊厳の代わりに他人の賛同を得るという方法があります。他人の承認・賛同といってもこれは自分に対してではなく、あくまでも対策に対しての承認・賛同です。正攻法ではないですが、他人からの承認・賛同が選択肢を選ぶ後押しになります。コストでいうとこちらのほうが低いので、ある意味正攻法と言えるかもしれません。
実践編
実践する際は、作業手順の図を載せているので、それに従ってください。また、この方法論とは別に、人に相談するという方が簡単でもあります。信頼できる人に相談するなど楽ができる場合はそうしてみましょう。ただ、自分で解決したいという場合もあると思います。そのような状況でぜひ使ってみてください。
問題の解決とネガティブな気持ちは別
思考の構造を利用した問題の対処法について述べてきましたが、問題を解決することとネガティブな感情が消え去ることは必ずしも一致しません。もちろん、抱えている問題が少なければ少ないほどネガティブな感情を抱く機会が減ることは間違いないでしょう。しかしながら、感情の問題を理性によって軽減することはできたとしても、ネガティブな感情を完全にゼロにはできないのです。
これは、
「ネガティブな感情は生存本能によるものである。」
という仮説から説明することができます。どんなに完璧な理屈で世界を定義したとしてもある程度のネガティブな感情を受け取るという本能としてのアラート機能、またはある機能を保つために存在する不可抗力のようなものは消し去ることはできません。ある一定程度の将来の不安や、身の危険の不安を解消することはできますが、感情という人間の防衛機構を消すことはできないのです。では、どうすれば良いのかというと問題を理屈で理解し、対処した後でも残っている負の感情は、そのままじんわりと受け止めようということです。悲しい気持ちを理解した上で受け入れてあげましょう。人はどうしても悲しさや怒りなどの負の感情を否定しようとします。しかし、それに蓋をして受け止めずに放置しているといつか爆発してしまうか壊れてしまいます。
ただし、ここでいうネガティブな感情とは直面する問題によって現在進行形で受けているものを指すのではなく、漠然と感じる感情を指します。対処できる問題はすべて対処した後の話です。もしも、生活に支障をきたすレベルの悲しい気持ちを抱いて悩んでいるのであれば医療機関の受診をおすすめします。医師からの安全な処方により科学的に感情の調整を行う方法もあります。
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