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【Yocco 診療所】#3|貧血治療 Vol.②|鉄欠乏性貧血を良く知ろう|血清鉄とフェリチンを知ろう|鉄の体内動態を詳しく知ろう|不足はどうして起きるの?

こんにちは!
前回に引き続き、Yocco診療所シリーズの貧血治療のお話です。
前回 、前々回 の記事はこちらになります✏️
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前回は、貧血の種類と原因を見極めていく方法を中心に、一般的な病院では何をみて診断がされているのか、そして血液検査結果の内容が自分で理解出来れば自分の貧血状態がわかるYO!という内容でした。さらに、貧血の中でも一番頻度の高い「鉄欠乏性貧血」は、さらに原因がいくつかに枝分かれしているということ、そしてその原因の見極め方を書きました。原因が内蔵などで起きている「出血」なのか、それとも体に必要なものが取り入れられていない「摂取不足」なのかをまず知ることがポイントでした。原因が出血の場合は各出血箇所の治療を進めていく、というところまでが前回の内容です(下記図・青部)。今回は、原因が「摂取不足」だった場合は、どのような原因が考えられるのかを見ていきたいと思います(下記図・赤部)。


今回の目次はこちら✏️!


◆ヒトの体 ~元々備わっているのにどうして不足するの?~


「鉄欠乏性貧血」で検索すると、鉄・ヘム・非ヘム・タンパク質・ビタミン・アミノ酸などなど、栄養素についての解説がたくさん出てきます。さらに調べてみると、栄養吸収には胃液が、胃酸が、腸内環境が、とさらに細かくなっていき、結局どうしたらいいかわかなくなる場合も多々あるかと思います。何食べりゃいいの?と。人の体内は、無限と言ってもいいくらいの化学反応が常に至る所で起きている大きな化学工場です。なので栄養学の側面からのみで貧血や体全体のことを捉えると、ある種近視眼的で、どうしても片手落ちなになってしまいます。

なのでここでは、もう少し包括的に体と鉄欠乏性貧血について捉えてみたいと思います。そして、鉄不足鉄不足と言われるけれど、なぜそう言われるのか、実際体内では何が起きているのか、どうして不足になるのか、ということを書いていきたいと思います。それを知ることにより、病院の提案に従うばかりではなく、どうやって治療、改善をしていくかを自分で選択出来るようになればいいと思っています。


前回は、赤血球は約120日間の寿命を迎えると、脾臓等にあるマイクロファジーの貪食によってヘモグロビンが放出され、ヘモグロビンはヘムとグロビンに分解され、さらにヘムは鉄とビリルビンに分解される、というところまで書きました(下記図参照)。

画像:"ゴロ−@解剖生理イラスト"より


鉄欠乏性貧血の場合、ヘモグロビン値が低いから鉄分を取りましょう、と定型分のように言われるわけですが、では単純に鉄分を摂れば体内のヘモグロビンの量が増え、ヘモグロビンを内包している赤血球が増えたり大きくなり、貧血が解消する、すなわち血液の質と量と巡りが元に戻るということでしょうか?まず、そもそも体内の鉄分はどこから来ているのかを考えてみたいと思います。

それを知るために、遡り過ぎかもしれませんが(笑)、まず我々ヒトの体のいーっちばん始めの、人体が作られていくところからイメージしてみたいと思います。DNAやゲノムあたりまで遡り過ぎるとこんがらがるので、ここでは視覚的にイメージしやすい受精卵からスタートします!😊

まず最初に、精子と卵子が結合して受精卵が形成されます。

受精卵は1つの細胞です。

ちなみに受精卵は、ヒトの細胞のなかで最も大きな細胞です。

細胞とは以下の要素を含んだものを指します。専門的に定義すればもっと要素がありますが、ここでは基本的な概念を挙げます。


<細胞とは>
・生物を構成する最小の構造上の単位。
・細胞膜に包まれた原形質の塊で,原則として自己増殖能をもつ。(そのためそれ自体を生命体と言うこともできる)
・すべての生物は「細胞」と「細胞が作ったもの」で構成されている。
・生物の構造と機能の基本単位は細胞である。(細胞説)

画像:MSDマニュアル・家庭版より
上の絵は細胞の基本的な構成を表しています。下は細胞の様々な形態の例です。
もっと細胞について知りたい!という方→参考資料(北海道大学Webサイトより)

ちなみに赤血球は脱核をした核を持たない細胞です。それにより効率的に酸素を取り込むスペースが出来、さらに形をより変形させられるようになり毛細血管を流れることが出来ます。



1つの細胞であるこの受精卵が、2倍、4倍、8倍と細胞分裂や細胞分化を繰り返して、目、鼻、口、臓器など体の各パーツが作られていきます。細胞分裂と細胞分化については、前回の記事の「血液の基本構成 ~血液の成り立ちを見てみよう!~」の章で触れていますので読んでみてください。簡単に言うと、細胞分裂は同じ細胞が増えること、細胞分化は違う役割の細胞に変化することを言います。

分裂、分化を繰り返した自分の体って、いったい何個の細胞からできているのだろう?と考えるかもしれませんが、ヒトの体の細胞の数というのは現時点では測定することが出来ません。私は現代の技術なら簡単に数えることが出来るんじゃないか?と思ったのですが、どうやらまだ不可能だそうです。なのであくまでも推定で、体重3kgの赤ちゃんでは約3兆個、60kgの大人は約60兆個と言われていました。ただ2013年には、ヒトの体の細胞数はおよそ37兆個であるという試算がなされ、今の段階では60兆個、37兆個、どちらの説もあるそうです。いずれにしても、最初は1つの細胞だったものが、何十兆個の細胞となり、それぞれがくっつき合ってひとつの体を形成しているというわけです。皮膚も臓器も血管もその中も何もかも、みんな細胞がくっついて物質形成しています。教科書では習ったけど、改めて今、実際ここにあるこの体が1つの細胞から出来たそれだと思うと、なんだか不思議な感じです。

画像:亀田メディカルセンターサイト「精子と卵子のお話」より


こうして始めは1つの細胞だったものが、見た目も働きも違う細胞に次々と変化していくわけですが、では、ヒトの体の細胞の種類はいくつあるかというと、約270種類と言われています。前回の記事に登場した「造血幹細胞」や「赤血球」もそのうちの1種類です。つまり、受精卵から分裂と分化を繰り返し、造血幹細胞が出来て、そこから赤血球が出来たわけです。なので、ヒトの体には生まれながらに赤血球が備わって(自ら作り出して)いて、当然、その中のにあるヘモグロビンや、さらにそれを構成する「ヘム・グロビン・鉄・ビリルビン」も、元々体に備わっている物質ということです。



では鉄というのは、元々体にあるものなので、出ていかなければ補う(摂取する)必要はないわけですが、不足するということは一体どういうことなのでしょうか?


それは、下記の図で示している通り、月経のほかに、皮膚の脱落、汗、便、尿などで体外へ放出されるからです。これを鉄の喪失と言います。生きている間、この喪失が常に行われているために、体内に必要一定量の鉄分を保持するには、外部からの摂取が必要というわけです。

画像:ウイメンズ・クリニック大泉学園サイト内「鉄代謝について」より


では実際、鉄が体の中でどのように流れ、動いているのかを詳しく見ていきます。体内における鉄の一連の流れを表したものを「鉄の体内動態」とか「鉄代謝」と言います。貧血治療にはキーとなる部分ですので、ぜひ鉄の気分になって体内を巡っていきましょう(笑)。


◆鉄の体内動態・鉄代謝  ~吸収・喪失・貯蔵・再利用~


まず、最初に知っておきたい鉄(Fe)の特徴があります。それは、鉄は酸素ととても結合しやすい物質ということです。鉄が錆びるのも、この原理が働いているからです。鉄のこの性質により、体内では酸素の運搬を補う分子としてとても重要な役割を担っています。これが前回お話しをした「赤血球は酸素の運搬屋」の理由です。前回は、赤血球に酸素がくっついて全身を巡ると言いましたが、より正確に言うと、赤血球の中のヘモグロビンの中のヘム鉄に酸素がくっついた状態で、体内に酸素を運搬しているということになります。

また、もし鉄の分子が他の物質と結合せず体内でフリーの状態でいると、活性酸素種などが産出されて他の細胞にダメージを与える可能性があります。細胞が酸化するということですね。鉄が雨ざらしになって錆び広がっていくのを想像するとわかりやすいかもしれません。なのでそうならないように、体内の鉄のほとんどは他の物質と結合した状態で存在します。特に血液中では、他の金属とは違って、フリーの状態の鉄(正確には鉄イオン)は存在しません。常に他の物質(後に出てくるトランスフェリンやフェリチン)とくっついて存在しています。

では、鉄が結合しやすいことイメージしながら、赤血球が破壊し分解されて鉄になった後の動きを見ていきましょう。

分解された鉄はこのあとどうなる?



脾臓で分解された鉄は、まず血管に溶け出します。ここから順を追って鉄の動きを見ていきましょう。(参考動画のリンクが章の終わりにあります。言葉だけだとわかりにくいのでぜひ見てください)

     ↓

  1. 脾臓で分解された鉄は、血管に溶け出してトランスフェリンというタンパク質にくっつきます。鉄とトランスフェリンが結合された物質を「血清鉄」(トランスフェリン結合鉄)と呼びます。

  2. 血清鉄は血液に乗って全身に運ばれます。

  3. 骨髄(骨の中心部にある)に到着した血清鉄は、鉄の部分が切り離され、骨髄の中にある赤芽球(赤血球の前身)に取り込まれヘモグロビンの材料となります。そして赤血球を作るのに利用されます。

  4. 多くの血清鉄は、3.の骨髄の赤血球の産生に利用されますが、ここで余った血清鉄は肝臓に運ばれます。

  5. 肝臓に到着した血清鉄は、肝臓にある「フェリチン」というタンパク質の入れ物に貯蔵されます。フェリチンは「鉄欠乏性タンパク質」と呼ばれ、その名の通り、鉄が欠乏しているので鉄を貯められるよ!という機能を持ちます。

  6. 鉄は、肝臓の他に、膵臓、骨髄、筋肉などにも貯蔵されます。この体内に貯蔵されている鉄のことを総じて「貯蔵鉄」と呼びます。つまり、色々な場所に貯められている貯蔵鉄のうち、肝臓に貯められる鉄のことをフェリチン鉄と呼ぶということです。


ちなみに、よく鉄欠乏性貧血でタンパク質不足が原因のひとつと言われることが多い理由は、ヘモグロビンも、そしてこのトランスフェリンとフェリチンも全てタンパク質だからです。なので仮に鉄を一気にたくさん摂取したとしても、それを運ぶ物質や貯める物質が不足していれば、鉄は吸収されることなくそのまま便や尿に混ざって出て行ってしまいます。さらに場合によっては、体内の不要な場所に溜まってしまい、別の不具合を発生させることもあります。


さて、以上のことをまとめて体全体を見てみると、鉄は以下の3つに存在することになります。

  • 赤血球内のヘモグロビンにくっついて血液中を流れているヘモグロビン鉄

  • トランスフェリンとくっついて血液中を流れている血清鉄

  • 各所に貯蔵されている貯蔵鉄

割合としては、体内の鉄の60〜70%は血液中にあるので、ヘモグロビン鉄と血清鉄が全体の鉄分の多くを占めているということになります。


さて、このように存在する鉄は、何もなければ貯蔵鉄を使う必要性も出てこないのですが、ひとたび体内の鉄が不足すると、体はこの貯蔵分を利用し始めます。運び屋のトランスフェリンが「鉄が荷台に乗っていないよー」と言って、貯蔵庫のフェリチンから鉄を持ち出します。そして荷台に乗せて血清鉄となり、再び血流に乗って骨髄へ鉄を運びます。骨髄では、鉄はヘモグロビン→赤血球の産出に利用されます。この繰り返しです。足りなければ貯蔵庫から持ち出し、逆に余ればまた貯蔵庫で貯めます。こうして常に必要一定量の鉄が、絶妙なバランスを持って保てるような仕組みなっています。


この鉄の一連の動きは、この動画の前半部分を見ると非常にイメージしやすいです。ぜひ見てみてください。↓


さて、このように体内では鉄が貯蔵、再利用されるミラクルな循環が行われているので、単純に考えれば、月経や尿などの喪失分を補えば、体内の鉄分やヘモグロビンは不足しないことになります。

ただ、鉄の体内動態を見てわかるように、単に鉄分が足りないからヘモグロビンが少ない、というわけではなく、一緒に働くトランスフェリンとフェリチンが十分にあるのかがとても大切になります。ぜひ血液検査の血清鉄やフェリチンの項目も見てみてください。

喪失分を補えるだけの鉄の摂取があり、トランスフェリン(血清鉄)とフェリチンも必要量あるのに、ヘモグロビンだけが足りていない場合があります。血液検査項目に照らし合わせると、血清鉄・フェリチンの値は正常範囲内、でもヘモグロビン値だけが低い、という場合です。鉄もタンパク質もたくさん摂取しているのに、なかなかヘモグロビン値が上がらない状態です。そうなると、ここで考えられるのは、口から入れた栄養素を消化吸収する機能がうまく働いていない、ということになります。

まず次の章で、この血清鉄とフェリチンの数値について検査結果の見方をお話していきます。その次に、消化吸収について考えてみましょう。


◆血液検査の見方  ~血清鉄とフェリチン!~


貧血治療で病院へ行くと、ヘモグロビンの数値を見て診断はされますが、血清鉄やフェリチンについては、あまり説明されない場合もあります。前回お話ししたように、血清鉄とフェリチンの測定は、一番ベーシックな「抹消血液一般検査」には含まれない追加の検査項目となるので、最初の精密検査では測定しても、例えば2ヶ月、3ヶ月など経った治療途中の検査では、検査項目に入れられないこともあります。なので例え治療途中の検査だとしても、せっかく採血するのであれば「血清鉄とフェリチンの検査も入っていますか?」と聞いてみて、含まれていなければ「知っておきたいので」と項目追加を依頼するのも良いと思います。

↑診療明細書の例
赤血球、ヘモグロビンなどの基本的な項目は「抹消血液一般検査」に含まれます。
鉄(血清鉄)は、総蛋白、血糖、尿酸などを検査する「血液化学検査」に含まれます。
フェリチンは、さらに別の「フェリチン定量」として単独の検査になります。
それぞれ採血するわけではなく1回の採血で全て測定可能。


ではさっそく血液検査結果の「血清鉄」の項目を見てみましょう。血清鉄、鉄、Feなどで表記されます。前述したように血清鉄は、鉄とその運び屋のトランスフェリン(タンパク質)が結合した物質です。単位は「μg/dL」で検査されます。「血液1デシリットルの中に血清鉄が何マイクログラムあるか」という量を意味します。

(↑単位の分母のdLが省略されている場合もあります)


次に「フェリチン」です。フェリチン、血清フェリチンなどで表記されます。意味がわからないと血清鉄や血清フェリチンで一瞬こんがらがりますね。フェリチンは、肝臓に貯蔵されているタンパク質の量を示しています。鉄の量ではありません。単位は「ng/mL」「ng/m」などで書かれ「血液1ミリリットルの中に何ナノグラムのフェリチンがあるか」という意味になります。


ちなみにμ=マイクロ、n=ナノと読みます。μgは1mgのさらに1000分の1、つまり100万分の1gという重さを表す単位で、さらにその1000分の1がng(10億分の1g)です。超小さい単位、ということです(ざっくり笑)。

血清鉄はタンパク質と鉄が結合したもの、フェリチンはタンパク質ですので、この2つはそのまま鉄の量を表しているわけではないですが、これらの増減は直接鉄量の増減に反映するので、体内の鉄の量を知る重要な指標となります。


さて、それでは血清鉄やフェリチンがどういうものかはわかったけど、貧血治療において、この数値をどのように参考にしていけば良いのでしょうか。

次の章では、実際に体の中で鉄がどのように減り、摂取したらどのように増えていくのかを解説します。これを理解すると、血液検査結果を見て、自分のその時の血液状態がより良くわかってきます。



◆生命維持が最優先!  ~鉄が減る・増える順番~


赤血球は体全体に酸素を運ぶ役割を担うので、生命活動にとって非常に重要です。重要というか、酸素がないと私たちは死んでしまいます(ほんと?たぶんきっと?笑)。これはメカニズム的に言うと、酸素がないと細胞が死んでしまい、結果的に体が死に至るということです。なので、体にとって酸素を全身の細胞に運ぶことが最優先事項となります。これを鉄の立場から見てみると、自分が担当するいくつかの役割の中で、赤血球を減らさないことが最優先の仕事となります。

赤血球は、その中のヘモグロビンに鉄と酸素がしっかりとくっついた状態で全身を巡るわけですが、体が鉄の不足を感知すると、体内にあるヘモグロビン鉄・血清鉄・貯蔵鉄の内、どの鉄を利用するかを考えます。酸素を運搬する赤血球を維持することが生命維持の最優先なので、そうなるとまず最初に、酸素輸送にすぐには影響の少ない肝臓のフェリチン鉄を使うことになります。

そしてそのフェリチン鉄も限りなく使い果たしてしまうと、今度は血清鉄を利用します。

そして、最後の最後、どうにも足りなくなってしまうと、赤血球のヘモグロビン鉄を使い始めます。なのでヘモグロビンが減っているというのは、実は体からの大きなSOSサインが来ているとも言えます。う〜む、ぜひ元気な血流、元気な体にしたいところです!

ここでひとつ「隠れ貧血」について。「隠れ貧血」と言われる血液の状態は、鉄欠乏性貧血の前段階になります。どういうことかと言うと、ヘモグロビンは必要量あるけれど、フェリチンが減っている状態のことです。つまり、血清鉄とヘモグロビン鉄には手をつけていないけど、フェリチンの貯蔵鉄が使われ始めてる段階で、このまま体内の鉄不足がさらに続くと、血清鉄→ヘモグロビンという順で減っていき、いずれ鉄欠乏性貧血になるよ、隠れてるよ、という状態です。う〜む、ほんと、ぜひとも元気な体にしたいところです(再)!(参考動画4:15~を見ると理解しやすいです。ぜひご覧ください)

ということで、鉄が減っていく順はこうなります。↓

▪️体内で鉄が減っていく順番▪️
貯蔵鉄 → 血清鉄 → ヘモグロビン鉄


それでは逆に、鉄はどのような順で増えていくかと言うと、同じ理由で、赤血球維持が生命維持の最優先事項なので、まずはヘモグロビン鉄が増えていきます。そしてヘモグロビン鉄が十分になると、血清鉄、フェリチン鉄、という順で鉄が蓄えられていきます。

▪️体内で鉄が増えていく順番▪️
貯蔵鉄 ← 血清鉄 ← ヘモグロビン鉄

こちらはこの内容の参考動画です。またまた受験生チックになってきましたね(笑)!。鉄の減少と増加の順番については4:15~あたりからです。全編を通して見ても、これまでの内容が含まれいるのでおもしろいと思います。



一般の病院で鉄錠剤の治療をしていて、いつまで飲むのかを聞くと「フェリチンが正常値になるまでがんばりましょう」と言われたりしますが、それはこのメカニズムのためです。フェリチン値が、30や40、医師によっては60くらいになるまで飲み続けた方が良いと提案されます。このフェリチン値の目標設定は医師によって全く違い、ばらつきがとてもあります。どの目標設定値であれ、要は、全身の鉄分が貯蔵分まで補うことが出来たら、その後は食べ物などからの摂取で大丈夫であろう、という見解で治療を進めるということです。


ただ、この「鉄分だけ摂取すればOK」という治療パターンには、体全体のメカニズムを考えると考慮されていない点がたくさんあります。

ひとつは、口から摂取したものが体全体に栄養分として行き届くには、消化吸収の機能がきちんと働いているかが重要だからです。それが出来ていないと、いくら摂取しても意味がないことになります。とてもシンプルなロジックなので、消化吸収については次の章で見ていきたいと思います。


そしてもうひとつ、人の「個体差」についての考慮が含まれていないということです。ヒトの体は見た目だけでもわかるように、何一つ同じものはなく、内臓の大きさも、細胞の数も、血液のpHも、生きている環境も、そこで起きているストレスも、何もかも違います。もっと言えば染色体に含まれる遺伝子情報も全員違うので、誰一人同じ体というわけではありません。なので一律で同じように施すのは、大まかには有りだし効果があるかもしれませんが、やはり個人によってアプローチは違って当然という「視点」が大切になると思います。

他には、処方された薬についてです。鉄錠剤と言っても薬です。鉄錠剤を止めたらまた貧血状態に戻った、そもそも鉄錠剤を飲むと吐き気や便秘など具合が悪くなる、サプリを試してみたけど治らない、などなど。「結局何をしたらいいの?」というような経験をしている人も多いかと思います。鉄錠剤による吐き気を減らすために、吐き気止めや胃薬も一緒に処方される場合もあります。それでも気持ち悪くなり飲めないなら、シロップ剤や鉄剤注射に変更する、ということもあります。もともと鉄剤は副作用が出るのが前提の薬なので、こうなるともう、何が原因で何による不調なのか、わけがわからなくなってしまいます。それが詰まるところ、Yocco診療所シリーズの初回でご紹介した、医薬品添加物とも関係してきます。鉄剤といっても、他の薬と同様に石油を精製して製剤されており、たくさんの添加物が入っています(薬の成分の調べ方は初回の記事で紹介済み)。そして体内の様々な化学反応により吐き気、下痢、便秘などが起こり得るというわけです。


今回は、この考慮すべき2つの点の、消化吸収について、まず見ていきます。そして次回は、鉄剤の成分について医薬品添加物の観点からも考えてみたいと思います。次回詳しく書きますが、結論としては、やっぱり鉄錠剤、シロップ剤、鉄剤注射でその場しのぎの対処をするのではなく、体自身が本来持つ力を最大限に発揮出来る状態、そしてそのことが実感できる状態に戻した方がいいよね!ということです。そしてそれには、食事の仕方(内容ではなく取り方)を変えることや、包括的な視点から個体差も含めて体を捉えている漢方など伝統医療が力強くサポートしてくれる、というところに私は着地しました(まだ経過中ですが実感あり)。


◆消化・吸収の話  ~ちゃんと吸収出来ている?~


さて前述の通り、鉄欠乏性貧血は、体の普通の(本来の)パワーがある状態よりも鉄が足りていない状態なので摂取が必要となるわけですが、その摂取したものがうまく消化・吸収されていなければ全身に行き渡ることなく排出されます。鉄錠剤を飲んでも、ヘモグロビン値やフェリチンもなかなか上がらない場合(体内のどこかに「出血がない」のが前提)は、消化吸収の機能を疑うことになります。


鉄に限らず他の全ての栄養素は、口から摂取された後、各消化器官でそれらを消化・吸収させ、血液にのって全身の細胞に行き渡ります。ちなみに点滴と注射は、この消化・吸収のプロセスをすっ飛ばして、直接血液の静脈にに栄養を入れることをしています。


体の消化・吸収のメカニズムについては、私たちは中学校の理科で習っていたようです(笑)。懐かしいですね!ここではおさらい程度に、とても簡単に書きます。

<消化管>
口 → 食道 → 胃  → 小腸 → 大腸 →肛門 
この1本の管のことを言う。この管を通って、消化吸収された栄養は全身へ、不要な排泄物は肛門へと送られ排出される。

<消化器・消化腺>
唾液腺・肝臓・胆のう・膵臓
消化管に付属して消化活動に関係する器官のことを言う。

こんな感じの配置です😊↑


口から入れた物は、まず咀嚼とだ液によって口腔内で細かく分解され、食道を通った後、胃で胃酸などによって消化が進められます。その後、分解された栄養素は小腸で吸収されたり、肝臓で蓄えられます。残りは便や尿として排出されます。

こちらの動画は11年前のものですが、3Dでその様子が描かれています。4:21~あたりからです。イメージしやすいので良ければどうぞ。 ↓


とてもシンプルに書きましたが、鉄錠剤を飲んで鉄やその他の添加物の成分が消化吸収される過程もこれと同じです。薬やサプリの場合は、口での咀嚼と唾液による分解はありませんが、胃で分解され、腸で吸収されるというのは同じです。ただこの咀嚼と唾液というのが、鉄剤を飲まないで治療してく方法では実はとても重要になるので覚えておきましょう。

消化吸収がうまく機能していない場合、現代医療と栄養学的な見解では、消化管のどこかで炎症を起こしているのではないかと考えます。例えば以下のようなものです。

胃:消化のための胃液や胃酸が出ているか。胃の粘膜の炎症(慢性胃炎、ピロリ菌による粘膜の炎症など)がないか。胃を切除したか。これらがあれば、食べ物は消化されにくく、消化機能が低下している状態である。

腸:腸内細菌のバランスが取れているか。腸内にカビがないか。リーキーガット症候群(腸の膜にわずかな穴が空いていて漏れる)などの吸収を妨げる炎症がないか。それらがあれば十分な吸収は出来ず、吸収機能が低下している状態である。


こうなると、次にやることは、胃や腸など消化管の炎症を見つけてそれを治してから、鉄を始めとした栄養素を吸収させる、という話になりますが、では「炎症」とは何でしょうか?

<炎症とは>
「物理的刺激(火傷や凍傷など)や、化学的な刺激(化学薬品接触など)や、ウイルスなどの微生物の感染に対して起こす生体の防御反応の一つ。発赤、熱感、腫脹、疼痛を炎症の4兆候といいます。急性炎症と慢性炎症に区別されることもあります」(難病情報センターより)

つまり、とても曖昧、というよりも、不調や不具合がある状態全部…ですね(笑)。さらに自覚症状のない体内で起きている炎症もたくさんあります。そこで現代医療では、炎症の有無を、白血球数、血小板数、総蛋白質、AST、ALT、尿素窒素、γ-gt、アルブミンなどの血液検査結果を指標に、これらが標準値から大きく外れていないかを見て検証していきます。大きな疾患や炎症は、これらの血液検査の数値と、さらなる細部の検査を繰り返すことで原因を絞り、有効な治療へ繋げられる場合も十分あります。ただ実際は、体内で起きている小さな不具合全てをピンポイントで物理的に見つけるのはほぼ不可能でもあります。例えば「風邪」や「発熱」という症状の直接的な原因がわからないように。逆に言えば、体内で起きている全ての出来事を知ることは出来ないけれど、体は自らの多種多様な機能を使って、常に自ら修正し、自動的にバランスを保ち、生命維持をしているとも言えます。

このように、限りなく細部を詰めていきつつ、根本原因がわからない場合でも、統計とおおよその仮定を通して治療を行うのが現代医療の特徴のひとつです。どうしてそうなったかではなく、症状に対してそれを消すなり軽減するための対症療法が行われているという意味もよくわかってきます。


◆選択肢を考える ~どの方法が自分の体にマッチする?~


ここまで血液の成り立ち、体の成り立ち、血液検査が示すもの、などを中心に貧血について話を進めてきました。これまでの記事の内容も含めて簡単にまとめてみました。↓

”Here”が現在地。ここからは赤い矢印の先へ進みます。


ここからは、色々なアプローチがあるけれど、自分だったら何を選ぶ?何がお好み?という創意工夫のフェーズに入ります(ここまでのロードマップ、長かった!(笑))。

鉄欠乏性貧血に限らず、あらゆる体の不調、不具合、疾患が出た場合、何を選択するかは自由です。そして実際、たくさんの改善方法、治療方法があります。


これまで詳しく見てきた現代医療の方法でそのままいくのも当然ありです。他にも今回は波動療法でいってみよう、日本の自然療法でいってみよう、ホメオパシーのレメディでいってみよう、チャクラ調整でいってみよう、食事療法を完璧にしてみよう、DNA医療でいってみよう、好きなことを思い切りするだけで勝手に治るはず、意識を使って治そう、徹底的な腸活だ、ヨーグルトとレバーだ、サプリ一択だ、などなどその人の好みひとつだと思います。

もちろん全てあり、全てOK、という中で、ここから(次回以降)は私が実践している方法の紹介になります。体内に大きな出血は見られない鉄欠乏性貧血に分類され、一度鉄錠剤を数ヶ月飲んでみたことがあったが、止めたらまた貧血っぽくなり、そして再び治療をすることになった(現在進行形)、という人のケーススタディです。とても個人的ではありますが、でもこれまで書いたヒトの体の基本的な成り立ちを踏まえ、割と多くの人に当てはまり、そして多くの人が実践出来るという面で、今実践している方法はすっごくいいんじゃないかな、と思っています。

私の考え、好みは、体って本来の状態に戻る力がとてもあるので、不調が出た時は色んな治療や栄養や薬を「加えていく」よりも、むしろそうなった理由をなんとなくでも感じ取り(最近ストレス多いな、食事が偏ってたな、変なもの食べすぎてるな、睡眠出来てないな、とか)、元に戻る力を邪魔してしまったものを「辞めていく」ほうが、現代の環境では有効なのではないかと思っています。なぜなら食や医療システムなどに対して意識的にいないと、気が付かないうちに、あっという間に体に不具合が出る、もしくは出やすい環境だと思うので。折角の体のスーパーミラクルな機能を邪魔するのではなく、邪魔しているものを辞めて本来の機能を活かすようにする方が、たくさんの薬や添加物やサプリにより迷宮入りするよりもはるかにシンプルで楽で効果的だと思います。そして根本的な機能が復活してくると、忘れかけていた元気な感覚が実感出来ると思います。

次回以降、私の体の状態や血液検査の結果も参考に、今実践してみていること、取り入れている漢方や方向性、医薬品がどうやって石油から精製されて出来るのか、添加物が体にどう作用するか、そして漢方も薬であるけどその違いは何か、などを書いていこうと思います。


◆まとめ・感想


前回の記事を書いた後、予約をしていた漢方薬局へ行きました。予約がいっぱいなので、問い合わせをしてから数週間経っての訪問だったのですが、予感していた通り、とても根本的と感じる話(問診)と共に今の状態を診てもらいました。その見立てを元に、私の体の状態に合わせて調合してもらった漢方の煎じ薬をスタートしました。今3週間くらい経っています。私の体の状態だと、おそらく6ヶ月くらい続ければ元の(つまり体が本来持っている機能が働きだす)状態に戻るだろうということでした。

この漢方に至った経緯などは、貧血に限らず、現代において、特に医療の薬漬けになっている人(高齢者含む)にとってもとてもポイントになると思うので、次回以降引き続き書いていきたいと思っています。

現代医療(西洋医学)と伝統医療(ここでは漢方)では、体を観る視座が大きく違うため、当然アプローチも変わってきます。私は現代医療が最大に発揮されるのは、救急医療と検査だと感じています。救急医療はいわずもがなですね。死なずにすんだーーーというケースがたくさんあります。検査は例えば今回の貧血であれば、内蔵のここに出血があった、子宮がこうなっている、などがわかります。ただそれを改善するためのアプローチは、現代医療だと一瞬は効果があっても後々余計にこんがらがってしまうと感じています。なので伝統医療のもつ包括的視点を取り入れて、体が本来もつパワーを発揮できる状態に戻す、というのが健康的で一番スムーズではないかと感じています。なぜなら結構な不具合は、現代医療そのものが作り出している場合も多いと思われるので。


今回も長くなりました!

長くなりついでに、最後におまけ!血液検査でなんで赤血球やらタンパク質やら色々な成分量がこんなに瞬時にわかるのはなぜ?っていうのをご紹介。


それではまた次回!See ya!😊


◆おまけ  ~比色法~

採血した血液から沢山の成分が一瞬でわかるのってすごいですよね。大きな病院だと、採った血を検査機関に送らずとも院内に機械があり、30分くらいで分析結果が出ます。これってどういう技術なんだろう? ちなみに1970年中頃までは顕微鏡で血球数とかを数えていたのだとか。それもすごい話です。

血液分析は、採血のときに血が入るあの小さなガラスの試験管みたいなものを何本か取りますが、これは血清分析、血漿分析、全血目視、その他の目的によって注入する試薬や検査機器が異なるためです。試薬を入れて攪拌や遠心分離をして、液体の成分を分離させるまではイメージ出来ますが、そのあとどうやって赤血球だのタンパク質だの鉄だの血糖だの量がわかるのだろう?と思いました。

で、調べてみたら・・・。

ひとつは「自動血球分析装置」と言って、血液に含まれる細胞の数を測定する方法。主に赤血球,白血球,血小板の数がわかったり、白血球の分類が出来ます。これらは様々な原理で求められるそうですが、一番使用頻度が高いのは「電気抵抗式」を使った測定だそうです。血球は電気を通しません。この特性を使って、アパーチャという通過点を血球が通るときの電気抵抗を測定し、各血球の数を算出します。赤血小板 < 赤血球 < 白血球はそれぞれ大きさが違うので、電気抵抗も違ってくる、それにより各細胞の数がわかる、というわけです。


もうひとつが「生化学検査」と言って、これは血清について詳しい分析が出来ます。血清とは、血液を凝固剤で固めるか、もしくはそのまま放置したときに出来る液体部分です。血は凝固作用により血清(液体)と血餅(固まった部分)に分かれるので、この液体部分を分析するわけです。この検査では、糖やコレステロール、タンパク、酵素などが測定出来ます。使われるのは「比色法」という水溶液の濃度を算出する方法で、計算式はランベルト・ベールの法則というのを使います。ランベルト・ベールの法則は、血液に限らず水溶液の濃度分析には欠かせない計算式だそうです。比色法の原理は簡単に言うと、液体に特定の光の波長を通して、その液体がどのくらい光を吸収するか、もしくは減衰させるかという波長の差を観て液体濃度を計測するというものです。つまり血の場合は、凝固作用によって分けた血清(液体)部分に光を通して糖、コレステロールなどの濃度を計測するわけですね。

いやはや interesting、すごいですね!

この他にも、免疫比濁法でトランスフェリンを測定したり、ECLIA 法(電気化学免疫測定法)でフェリチンを測定したり、様々な技術があるようです。

体の総細胞数はまだ測定出来ない。。。けれどもけれども、血液分析には人類の進化と人々のアイディアがたくさん詰まっていますねっ😊✨

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