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太巻き。が、今日の彼女の主たる朝食。
バイタリティーあふれる彼女は、朝食を欠くことが無い。まるで、一食たりとも逃すものかという勢いで食事に臨む。世界を股にかけ、仕事をするビジネスパーソンは、男女問わずこれくらいでなければやっていけないだろう。
しかし、なぜ、太巻き?
リーマンショックから少し景気が上向きだした最近、接待もまた少しづつ増えてきており、昨夜も彼女は2件、都内の美味しい小料理屋でお客様と打ち合わせだったらしい。
彼女がお土産として持って帰ってきた品のある酢飯をほおばると、「いろいろな意味を含め、商社で働くことが羨ましい」と感じてしまうこともあるけれど、戦えるフィールドは人間それぞれ。僕は僕の戦場を選んだわけだ。と、彼氏が彼女を家で待つ通常の真逆のパターンで成立している僕らの関係を酢飯が埋めてくれているという塩梅。
今日の彼女の朝食は、
「太巻き+シーザーサラダ+お味噌汁」
なんて食べ合わせが悪そう!という一般的な感覚はとりあえず横において、僕が見る限り彼女はほぼ99%完璧なのだが、たまらなく愛おしいのは、このアンバランスな食事をとても好んでいること。
「お米+シーザーサラダ+お味噌汁」
食後はブラックコーヒーを飲み、途中でミルクをつぎ足しカフェオレへ。
歯を磨き、メイクを完了させて彼女はさっそうと会社へ向かっていった。
「行ってきます」の代わりに「もう働きたくない!(笑)」と言って。