ぼくは保健師になれるだろうか
実習生が来たよ
先日、ぼくが働く地域包括支援センターに実習生が来ました。
めちゃめちゃ有能な学生でしたので、特にさめざめが話すことって多くなかったです。
学部で十分に学び、ケース訪問することや地域踏査、地域サークルに参加する中で、自分の学びが繋がっていくのを感じたのでしょう。
「この事業ってこういうことですか?」
「このケースではこういうことを見ていたと思いますが、この部分はどうですか?」
ってさ、
めちゃくちゃ突っ込んだ質問をしてくれます。
ありがたい。
今実習に来てくれた学生ってのは、コロナ渦に入学した学生です。
学生として遊ぶことも難しい。
看護実習も満足にできなかった。
そんな学生が、保健師実習の中で、地域での繋がりを目の当たりにして、とても心が動いたようです。
座学が繋がっていったようです。
良かった…
君たちの学習は報われたよ。
理想の保健師っているじゃん
で、
学生の一人に聞いたんです。
「どうして保健師を目指したの?」と。
そうすると、
「子供のころに、隣の家の子が虐待にあっていた。何度も警察も来ていたような家だった。そこに、保健師が介入して解決していった。今では笑顔が見えるようになった。保健師はすごいなって思ったんです」
と。
ほう。
すごい保健師だ。
虐待対応と、そこからの展開と、家族関係改善のための支援のいい落としどころに向かっている。
すごい。
それは、一般市民から見てもすごいことだったんだろう。
どうしようもなかった誰かを、どうにかできたんだ。
そこに専門性があったんだ。
それができる保健師がいたんだ。
そして、一般市民がそれをすごいことだと認め、1人の保健師学生を生んだんだ。
ありがとう、その保健師さん。
あなたのおかげでとても学びの深い保健師が生まれました。
あなたの行動を、その背中を見た学生がいます。
その学生はすごい学生だよ。
すごい学生を生んだ保健師さんはもっとすごいよ。
で、さめざめの理想とする保健師というのはなんだって言いますと。
…
……?
わからん…
保健師として勤務してもうすぐ10年になろうとしています。
たくさんのケースを見ました。
虐待も見たよ。どうしようもない息子がいたよ。
認知症の超絶悪化ケースもあったよ。周りの人みんな困っていたよ。
怒鳴り散らす精神疾患の人もいたよ。
10年間風呂に入っていない人も見つけたよ。
床が抜けかけたゴミ屋敷もあったよ。親指くらいのハエが飛んでたよ。
ずっといがみ合っている地域組織の人もいたよ。
政治的に宗教的に相いれない人も見てきたよ。
「住み慣れた地域で自分らしい暮らしを
人生の最後まで続けることができる」
地域包括ケアシステムの中で出てくる言葉です。
様々なケースの中では、「みんなが思うような穏やかな暮らし」を目指すのには圧倒的に遠い位置で生活する人たちを出会います。
この人たちに「当たり前の暮らし」はできるのだろうかと悩んでしまいます。
そういうケースに対応していき、それなりの落としどころを作って解決していき、時間がかかっても物事を動かしていく。
地域包括支援センターでの保健師の活動は、とても泥臭くて、キラキラしていません。
そうすると、
「将来はこんな保健師になりたいな!!!!!」
っていう気持ちがブレてきます。
実践が重い中では、
「このまま保健師を続けるたら自分はどんな保健師になっていくんだろう」
ってのが、なんだか重めの保健師になってきてしまいます。
このまま地域包括支援センターの保健師を続けたら、重いケースに対応し続ける、なんだか戦士みたいな保健師になってしまうような気がします。
もしかしたら戦士みたいな保健師は、重いケースを時間をかけずに解決していく保健師かもしれません。
わからん。
どうなるんや、さめざめ。
ぼくはどうして保健師になりたかったんだろう
ぼくの保健師を目指したきっかけはなんでしょう。
ぼくの母は乳がんができました。
その当時小学生だったぼくは、手術のために数か月家を離れる母を受け入れきれませんでした。
とても寂しかった記憶があります。
その母が無事手術が終わり、帰宅してから話したことがありまして。
「お医者さんはすごく上手に手術をしてくれたよ。でも、私が辛かった時に支えてくれたのは看護師さんだった。」
その言葉がとても強く記憶に残っています。
頑張って手術して帰ってきた母を守っていたのは「看護師さん」なんだ!
子供ながらにその言葉はとても深く残りました。
あと、人の話を聞くのが好きでした。
ぼくは話すのが上手な子ではなかったので、話を聞いているのが好きでした。
他の人が話しているのを聞き、悩みを聞き、なんとなくで相槌を打ち、意見を求められたら話の要約から自分なりの意見を話す。
自分が求められている返しができると、なんだか上手く聞けたような気がしていました。
そして、さめざめなりに想いを持って看護師になりました。
それでも、卒後1年目のぼくのバタバタと忙しい中では、人と話すのも10分取れれば長い方です。
タスクを終わらせることに終始して、人に寄り添う余裕が無かった。
それは、ぼくがなりたい「母を支えた看護師」ではなかったんです。
その中で、
「人の話をゆっくり聞ける」
「その人のしんどいところを支える」
「気持ちに寄り添う」
「思い出に残るような人になる」
ってなった時に、
それは、つまり、
「保健師って仕事なんじゃないか?」
と思った次第です。
ぼくは誰かの話を聞きたい。
そして、困っていること、しんどいところがあったら支えたいor解決したい。
誰かの人生に深く関わり、その中でその人が「良かった!」と思っていただけるようにしたい。
それで保健師になった。
そうだよ。
ぼくはそんな保健師になりたいんだよ。
本当は、問題ケースの問題だけを見て、それを解決していくような保健師じゃなくて、その人によりそう保健師になりたかったんだよ。
最近さ、だんだんと困難ケースの対応パターンが見えてきて、「こういう風にすれば解決するはず」ってのが見えてきてしまっていました。
それって、その人の問題をタスク化して、そのタスクを1つずつ解決していけば解決するって話なだけです。
そこに、
本人から話をゆっくり聞くことでのこんがらがった情報を入れて、ちょっと複雑にして、ゆっくり時間をかけて解決していくって要素が入ってもいいと思うんです。
話を聞いて、表面的な問題ではなく、深い問題を見ていく。
それは個別ケースだけじゃなく、地域問題についても深堀りしていく。
面倒だけれど、その面倒な部分を楽しむ保健師がいいな。
ケースの、問題の、特に面倒な部分をファシリテーションして全員が「良いな」って思う落としどころにしていく。
そんな保健師になりたいなって思う。
ぼくが保健師をやるのは、あくまでもぼくのエゴの部分なのかもしれない。
でも、それで誰かがうまくいくならいいなって思います。
保健師になって大事にしていることもあります。
保健師として生きることを大事にする。
保健師として死ぬことを予防する。
それはこれまでの様々なケースを通して大事にしていることです。
聴くことも大事。
生かしていくこと、活かしていくことは大事。
でも、もっと根本的に死なないことは大事。
それを最低限確保してやりたいことをやっていく保健師になりたいなと思います。
ぼくは憧れられる保健師になれるかな
ぼくは、保健師としてはとても浅い人間だと思います。
なんかね、言葉にすると薄っぺらい気がするんです。
気のせいでしょうか。
なんかさ、めちゃくちゃキラキラした保健師さんっているじゃないですか。
ぼく、そんな保健師になれるイメージがわかないんです。
例えばさ、
開業保健師のいくらちゃんはすごいんですよ。
エネルギーと知識と繋げる力がすごい。
どこまでもズンズンと進んでいくんじゃないかって思います。
いくらちゃんから繋げていただいたお仕事もありまして本当にありがたい限りだし、そのお仕事が回ってくるってのもこれまでの繋がりを大事にしていった結果だと思うんです。
すごい。
憧れる。
例えばさ、
ときえさんもすごい。
地域包括支援センター勤務から開業してやりたいことに進んでいくときえさんはカッコいい。
とても広く、いろんな人に信頼されているから、こんな保健師になれるんだと思うんです。
すごい。
憧れる。
例えばさ、
川岡さんもすごい。
行政保健師としての活躍もすごいし、全国の保健師を繋げる力もすごい。
みんな川岡さんをきっかけに繋がっていく。
すごいよ。
憧れるよ。
例えばさ、
えんどーくんもすごい。
えんどーくんのおかげで助けられた新卒保健師が増えてきている。
新卒保健師なんて、右も左もわからない中で、保健師としての背中を見せてくれる。
いいな。
すごいな。
憧れるな。
なんだか、たくさんのキラキラ保健師がいます。
もっとたくさん保健師はいて、ここで紹介しきれないキラキラ保健師はたくさんいます。
その皆さんが後輩たちから憧れられている。
良いな。
ぼくも、もしかしたら誰かから「キャー!さめさん!キラキラ保健師!」って言われてるのかもしれません。
でも、ぼくはあまりキラキラしていない気がします。
なんでしょうね。
卑下ですね。
ぼくも、いつかは学生に憧れられるような保健師になりたいな。
地域での活動をみた学生がいつか「保健師っていいな」「保健師になりたいな」って思ってもらえるような保健師になりたいな。
ぼくはそのために、「解決する保健師」ではなく、「深い部分に折り合いをつけるのを助ける保健師」になりたいな。
あんまりかっこよくないな。
でも、ぼくはカッコいいと思うんだ。
いいじゃない。
そうするよ。
最近、マネジメントの仕事をする中で、プレイヤーとしての仕事ができていません。
保健師らしい仕事ではなく、文書作成とか運営するための支援をしています。
なんか、キラキラしていません。
あかん。
それじゃあ、ぼくが楽しく働けない。
キラキラしているってのは、もしかしたら、ぼくが保健師として、保健師らしく活動出来ていて、うまく動けている中で生まれるものなのかもしれません。
それなら、ぼくはぼくらしく動こうと思います。
ぼくらしく、ぼくが楽しく保健師をやっていこうと思います。
いいな。
なんかキラキラしているな。
そんな保健師になりたいな。
専門職が専門職らしく働けるってめちゃくちゃ大事だと思います。
ぼくが個人事業主でやっている保健師オフィスyocahiってのは、この「専門職が専門性を発揮する」ってのをデザインの部分からお手伝いできないかとやっているところです。
専門職が専門性を発揮できればそれがキラキラになると思うんだな。
そうだよ。
みんな専門性出していこうぜ。
専門性をしっかり出して、キラキラしていこうぜ。
いろんな場所で、いろんな仕事の中で、ぼくたちの専門性は萎んでいきます。
うまく専門性を発揮できなくて悔しい思いをする保健師さんをたくさん見てきました。
それなら、その専門性が発揮出来るような支援ができたらいいなって思うんです。
めちゃくちゃ難しいですよね。
難しいよ。
なんとかうまくやっていきます。
キラキラしたいな。
そのためには専門性を出して、ぼくらしく保健師をやっていきたいな。
がんばろう。
やってみよう。
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