令和6年予備論文 民事訴訟法再現
第1 設問1
1 裁判所は相殺の抗弁を却下するべきか。相殺の抗弁は「時期に遅れて提出した攻撃又は防御の方法」(157条1項)といえるか。
2 157条の趣旨は裁判の遅延の防止という点にある。そうであれば、当該抗弁の提出により、新たな証拠調べ期日を設けなければならなくなるような場合には、「時期に遅れて提出した」といえると解する。
本件でも、相殺の抗弁は、結審が予定されていた口頭弁論期日において提出されており、これを審理するためには、自働債権の発生原因事実についての新たな証拠調べ期日を設けなければならないといえる。そうすると、本件相殺の抗弁は時期に遅れた攻撃防御方法といえ、裁判所は却下するべきとも思える。
しかし、相殺の抗弁は訴求債権とは別個の反対債権の存在を主張して、対等額で消滅させるものであり、実質敗訴を認めたうえでの抗弁である。よって訴訟の早い段階での主張は期待可能性がなく、「時期に遅れて提出した」とは言えないと解する。
これに対しては、本件貸金債権は本件訴訟の開始前から相殺適状になっており、仮定的抗弁として主張することができたのにそれをしなかった、という反論が考えられる。しかし、仮定的抗弁であっても、代金弁済の抗弁が認められない場合には抗弁として採用されることとなり、もし採用されれば、Yは反対債権を相殺により失うこととなってしまうという点において、通常の抗弁と何ら変わりない。また、処分権主義から、反対債権を別訴で訴求する利益も認められるべきである。そうであれば、やはりYとしては仮定的抗弁であっても訴訟の早期の段階での提出は期待可能性がないといえる。
3 以上から、裁判所は相殺の抗弁を却下するべきではないと解する。
第2 設問2
1 Xは、法53条4項による参加的効力により本件におけるAの主張を排斥できると考えているものと思われる。これは認められるか。
2 「参加することができる第三者」(法53条1項)とは、「訴訟の結果について利害関係を有する第三者」(法42条)と同義であると解されるが、Aは補助参加の利益を有していたのであるから、「参加することができる第三者」といえる。そして訴訟告知を受けた者が参加しなかった場合において、46条の参加的「効力」が及ぶこととなるが(法53条4項)、この「効力」の意味が問題となる。
3 この点につき46条は「効力」の及ばない例外的な場面を複数設けており、既判力と同様の効力とみることはできないと解する。そして、法42条の趣旨は、被参加人とともに十分な訴訟手続きが与えられた者が、被参加人敗訴の場合に、後訴においてそれと矛盾した主張をすることを許すことは、訴訟上の禁反言により許されず、また、紛争の一回的解決の要請にも反する点にある。そうであれば、参加的効力とは、被参加人敗訴の場合に、参加人と被参加人との間で生じる効力で、紛争の一回的解決の要請から、判決主文中の判断だけでなく、主文の判断を導くために必要な理由中の判断にも及ぶと解するべきである。
本件訴訟では、YはAに対して代理権を授与しておらず、また、表見代理の成立は認められないことを理由としてXの請求を棄却するとの判決がなされている。にもかかわらず、Aは、後訴においてAはYから代理権を授与されていたと主張している。これは判決主文中の判断を導き出す理由中の判断に反する主張である。
4 よって、Aの後訴における主張は参加的効力に反する主張であり、訴訟告知の効果によって排斥されると解する。
以上
コメント
民法の次に最初は商法を解いていたが捗らず、気分転換に民事訴訟法を先に解いた。設問1は、少し足りないような気がするが、設問2はまあ書けてるんじゃないかな。
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