令和5年予備試験論文再現 民事実務
第1 設問1
(1)保証契約に基づく保証債務請求権
(2)YはXに対して220万円を支払え
(3)
1 XはAに対して令和4年8月17日本件車両を240万円で売った
2 1の契約につき、XとAは、代金の支払いにつき令和4年8月から令和6年7月まで毎月末日限り10万円ずつの分割払いとし、Aが分割金の支払いを2回以上怠ったときは、催告等要せず、当然に期限の利益を喪失する旨を合意した。
3 XとYは令和4年8月17日、Yが1の債務を保証することを合意した。
4 3の合意は書面による
5 令和4年10月および11月の各末日は経過した。
(4) 下線部の事実は、請求を理由づける事実として本件訴状に記載するべきである。本件契約には、毎月に支払うべき分割金を2回以上支払いを怠ったときは、催告等要せず、当然に期限の利益を喪失するという特約があり、これはXにとって有利な事実であるのでXが主張するべきである(法律要件分類説)。
第2 設問2
(1)①本件車両が保安基準に適合していない
②本件車両が保安基準に適合しており車検は通る
③Aが本件契約を取り消すまで保証債務の履行を拒絶する
(2) 主たる債務者が取消権等の抗弁権を有するとき保証人は主たる債務者が取り消すまで履行拒絶の抗弁権を有するから。
第3 設問3
(1)令和4年9月末日に本件売買代金の分割金の支払いとして10万円を支払った
(2)再抗弁とは、抗弁事実と両立し、抗弁によって発生する法律効果を障害消滅阻止し、請求原因による法律効果を復活させる事実をいう。本件では、Aは、遅くとも令和4年9月15日に本件車両が保安基準に適合しないことを知っていたのに、それより後の令和4年9月末日に本件代金債務の一部である10万円を支払っている。これは、追認をすることができるとき以後に、取り消すことができる行為について「一部の履行」を行っているといえる(民法125条1号)。よって、Aは追認をしたものとみなされるので、抗弁によって発生する法律効果を消滅させ、請求原因事実による法律効果である、保証債務履行請求権を復活させるので、再抗弁となる。
第4 設問4小問(1)
⑤Yの印章によるものと同じである
⑥Yの意思に基づいて押印された
第5 設問4小問(2)
1(1) 本件契約書の連帯保証人の署名欄には既にY名義の署名押印があり、Aは印鑑登録証明書を持参していた。Y名義の印影は間違いなくYの実印によるものである。そうすると、その印影はY自身の意思により顕出されたことが推定され(一段目の推定)、その結果、その書面がYの意思に基づいて作成されたことが推定される(二段目の推定、民事訴訟法228条4項)。そして本件契約書はその意思表示が書面でなされている処分証書であるので、高度の信用性があり、本件保証契約が実際に締結されたことが強く推認される。
(2) これに対してYは、ちょうど同じ令和4年8月に、Aが賃貸借契約を結ぶことになったので、保証人になることを承諾し、AにYの実印と印鑑登録証明書を渡したことがあり、その時にAがそれを悪用し、本件契約書にYの実印を無断で押したと主張している。
(3) しかし、Aの住民票によれば、AがYの自宅から住所を移転したのは令和4年12月15日である。住民票は通常、引っ越し後の短期間のうちに移転手続きをしなければならないのであり、この日付と直近の時期にAが移転していることが強く推認される。そうすると本件保証契約の締結日(令和4年8月17日)よりも約4か月も遅い時期に移転していることになり、AがYの実印を悪用したという主張は信用できない。よって、一段目の推定は覆らない。
2(1) Xは、令和4年8月17日の夜に、Y宅に電話し本件契約書の調印が終わり、Yとの間で本件保証契約が成立したことを報告した際、Yは、「Aから聞いており、問題ない」と応じている。
(2) これに対して、Yは知らない男性から電話があり、保証がどうとか言われたので、Aがアパートを借りた際の不動産仲介業者だろうと思い、適当に相づちを打ってしまったと主張している。しかし、先述の通り、Aの移転は契約の約4か月も後であり、Yの主張は時期的に説明がつかない。
3 Yは令和4年8月当時、既にAの200万円の借り入れについて保証人になっており、当時月15万円程度の年金暮らしである自分にこれ以上の保証は無理であり断ったと主張している。しかし、たとえ自分の経済状態が厳しくても、子供のために保証するということは通常あり得ることである。よってYの主張は信用できない。
4 また、Yは日記にも保証を断った旨の記載があると主張しているが、日記は自己の主観を交えて作成されるので、公的文書のような信用性はないといえる。
5 以上から、Yの主張は合理性に欠け、信用できず、本件保証契約が締結された事実が認められる。
以上