令和6年予備論文 刑事訴訟法再現

第1 設問1

1 甲が事件①の犯人であるという事実(以下本件間接事実という)を、事件②の犯人が甲であることを推認させる間接事実として用いるためには、本件間接事実に証拠能力が必要である。本件間接事実には、甲が少なくとも事件①の犯人であることを推認させるものとして、要証事実に対する最低限度の証明力があると考えられるので、自然的関連性は認められる。また、証拠禁止を疑わせる事実もない。では、本件間接事実に法的関連性が認められるか。

2 本件間接事実を甲が事件②の犯人であることを推認させる間接事実として用いるのは、甲が以前に同様の事件を犯しているという事実から、甲の犯罪性向という科学的実証的根拠の乏しい証拠により、事件②の有罪を立証するものであり、誤判の恐れがあり原則として許されないと解する。そこで、以前に犯した犯罪事実と今回の犯罪事実が顕著な特徴を有し、相当程度類似しているといった特段の事情がない限り、本件間接事実を甲が事件②の犯人であることを推認させる間接事実として利用することはできないと解する。

3 事件①と事件②は、被害者の背後から黒色の軽自動車が近づき、被害者に衝突して男性が車から降りてきて、被害者の安否を尋ねながら近づいてくるという点で類似している。しかし、事件①では犯人は被害者の顔面を殴っているのに対し、事件②では殴っておらず、相当程度類似しているとは言えない。また、上記犯行の手口自体は、車を手段として利用し、被害者に接触させる強盗事件としては通常普通にあり得る手口であり、顕著な特徴を有しているとは言えない。

4 よって、本件間接事実を事件②の犯人が甲であることを推認させる間接事実として用いることはできないと解する。

第2 設問2

1 事件①で甲が金品奪取の目的を有していたことを事件②で甲が同目的を有していたことを推認させる間接事実として用いることができるか。

2 犯罪事実の客観面に争いがない場合に、目的のような主観的要素について、以前に犯人が同様の目的を有していたという事実を、今回の犯罪でも同様の目的を有していた事実を推認させる間接事実として用いることは、科学的実証性の乏しい根拠による推認にはあたらず、合理的な推認にあたると解する。

3 本件では甲及び甲の弁護人は、事件②について、甲が軽自動車をBに衝突させたという犯罪事実の客観面については争わず、金品奪取の目的を否認しているに過ぎない。よって、以前の犯罪において金品奪取の目的を有していた事実を、今回の事件においても同様の目的を有していたことを推認させる間接事実として用いる場合にあたり、合理的な推認といえる。

4 よって、事件①で甲が金品奪取の目的を有していたことを、事件②で甲が同目的を有していたことを推認させる間接事実として用いることができると解する。

                              以上

コメント

「前科」にせずに本人が認めている「事実」を問題にしている点でいやらしいなあ、と思った。他にもっと思いつかなければならないことがあったのかもしれないが、現場思考問題ならもっとじっくり考える時間を与えてほしいと思う。今年は刑法が鬼畜的分量だったから55分くらいで解く羽目になった。

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