見出し画像

効率アップ!似ているものを整理してインプット

本日は、取締役に委任できないことシリーズの解説をしていきます。

取締役会を設置していない場合

348条3項
前項の場合には、取締役は、次に掲げる事項についての決定を各取締役に委任することができない。
一 支配人の選任及び解任
二 支店の設置、移転及び廃止
三 第二百九十八条第一項各号(第三百二十五条において準用する場合を含む。)に掲げる事項
四 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
五 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除

348条3項に列挙されているような重要な事項に関しては、原則どおり、取締役の過半数をもって決定することが必要です。

過去問もご紹介しておきます。

司法試験平成24年第43問
取締役会設置会社でない株式会社において,A及びBの2名が取締役に選任され,Aが代表取締役に選定されている場合に関する次の記述の正誤をこたえよ。
ウ.Aは,単独で,株主総会の日時及び場所等の株主総会の招集事項を決定することができる。

答えは、✖ですね。

取締役会設置会社(監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社を除く)の場合


取締役会設置会社についても似たような条文がありますよね。
さて何条でしょうか。


362条4項
取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
一 重要な財産の処分及び譲受け
二 多額の借財
三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
四 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
五 第六百七十六条第一号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
六 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
七 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除

こちらの条文は論文式試験でも狙われやすいやつですね。


監査等委員会設置会社の場合

似た条文シリーズということで、こちらも確認していきましょう。
どんどんややこしくなっていきます。

399条の13第4項
監査等委員会設置会社の取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
一 重要な財産の処分及び譲受け
二 多額の借財
三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
四 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
五 第六百七十六条第一号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
六 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除

362条4項とほぼ一緒ですね。
内部統制システムの構築については、399条の13第4項に書かれていません。
ただ、内部統制システムの構築は取締役会で決定すべきと規定されている(399条の13第1項1号)ため、取締役に委任ができないと解されているようです。
このあたりは諸説あるかもしれまんせんが、今回は説明を割愛します。

注意すべきなのは、399条の13第4項で取締役に委任できないとされているものであっても、同条5項または同条6項の要件を満たせば、取締役に委任できるという点です。

399条の14第5項
前項の規定にかかわらず、監査等委員会設置会社の取締役の過半数が社外取締役である場合には、当該監査等委員会設置会社の取締役会は、その決議によって、重要な業務執行の決定を取締役に委任することができる。ただし、次に掲げる事項については、この限りでない。
一 第百三十六条又は第百三十七条第一項の決定及び第百四十条第四項の規定による指定
二 第百六十五条第三項において読み替えて適用する第百五十六条第一項各号に掲げる事項の決定
三 第二百六十二条又は第二百六十三条第一項の決定
四 第二百九十八条第一項各号に掲げる事項の決定
五 株主総会に提出する議案(会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関するものを除く。)の内容の決定
六 第三百四十八条の二第一項の規定による委託
七 第三百六十一条第七項の規定による同項の事項の決定
八 第三百六十五条第一項において読み替えて適用する第三百五十六条第一項の承認
九 第三百六十六条第一項ただし書の規定による取締役会を招集する取締役の決定
十 第三百九十九条の七第一項第一号の規定による監査等委員会設置会社を代表する者の決定
十一 前項第六号に掲げる事項
十二 補償契約(第四百三十条の二第一項に規定する補償契約をいう。第四百十六条第四項第十四号において同じ。)の内容の決定
十三 役員等賠償責任保険契約(第四百三十条の三第一項に規定する役員等賠償責任保険契約をいう。第四百十六条第四項第十五号において同じ。)の内容の決定
十四 第四百三十六条第三項、第四百四十一条第三項及び第四百四十四条第五項の承認
十五 第四百五十四条第五項において読み替えて適用する同条第一項の規定により定めなければならないとされる事項の決定
十六 第四百六十七条第一項各号に掲げる行為に係る契約(当該監査等委員会設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
十七 合併契約(当該監査等委員会設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
十八 吸収分割契約(当該監査等委員会設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
十九 新設分割計画(当該監査等委員会設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
二十 株式交換契約(当該監査等委員会設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
二十一 株式移転計画の内容の決定
二十二 株式交付計画(当該監査等委員会設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
6項
 前二項の規定にかかわらず、監査等委員会設置会社は、取締役会の決議によって重要な業務執行(前項各号に掲げる事項を除く。)の決定の全部又は一部を取締役に委任することができる旨を定款で定めることができる。

指名委員会等設置会社の場合

ややこしい条文が続いておりますが、執行役への委任に関する規定もみていきましょう。

指名委員会等設置会社は、各委員会に指名、監査、報酬の権限を担わせており、かつ各委員の過半数は社外取締役となっているため、監督機能が高いです。

400条3項
各委員会の委員の過半数は、社外取締役でなければならない。


そのため、監査等委員会設置会社のように、399条の13第5,6項の要件を設けるまでもなく、委任できる範囲がひろくなっています。

416条4項
指名委員会等設置会社の取締役会は、その決議によって、指名委員会等設置会社の業務執行の決定を執行役に委任することができる。
ただし、次に掲げる事項については、この限りでない。
一 第百三十六条又は第百三十七条第一項の決定及び第百四十条第四項の規定による指定
二 第百六十五条第三項において読み替えて適用する第百五十六条第一項各号に掲げる事項の決定
三 第二百六十二条又は第二百六十三条第一項の決定
四 第二百九十八条第一項各号に掲げる事項の決定
五 株主総会に提出する議案(取締役、会計参与及び会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関するものを除く。)の内容の決定
六 第三百四十八条の二第二項の規定による委託
七 第三百六十五条第一項において読み替えて適用する第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において読み替えて準用する場合を含む。)の承認
八 第三百六十六条第一項ただし書の規定による取締役会を招集する取締役の決定
九 第四百条第二項の規定による委員の選定及び第四百一条第一項の規定による委員の解職
十 第四百二条第二項の規定による執行役の選任及び第四百三条第一項の規定による執行役の解任
十一 第四百八条第一項第一号の規定による指名委員会等設置会社を代表する者の決定
十二 第四百二十条第一項前段の規定による代表執行役の選定及び同条第二項の規定による代表執行役の解職
十三 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除
十四 補償契約の内容の決定
十五 役員等賠償責任保険契約の内容の決定
十六 第四百三十六条第三項、第四百四十一条第三項及び第四百四十四条第五項の承認
十七 第四百五十四条第五項において読み替えて適用する同条第一項の規定により定めなければならないとされる事項の決定
十八 第四百六十七条第一項各号に掲げる行為に係る契約(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
十九 合併契約(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
二十 吸収分割契約(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
二十一 新設分割計画(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
二十二 株式交換契約(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
二十三 株式移転計画の内容の決定
二十四 株式交付計画(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定

はい、条文は以上です。
お疲れ様でした。

いまご紹介した条文に関する過去問です。
力試ししてみてください。

司法試験平成26年46問
会社法上の公開会社である委員会設置会社の業務執行に関する次の1から5までの各事項のうち,その決定を執行役に委任することができるものを2個選びなさい。
1.重要な財産の処分
2.取締役の報酬の決定
3.株主総会に提出する会計監査人の解任に関する議案の内容の決定
4.執行役が2名以上ある場合における代表執行役の選定
5.払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額でない場合における募集株式の発行に 係る募集事項の決定

答えは、1と5です。

平成24年予備試験21問 
監査役会設置会社における取締役と委員会設置会社(改正前の表記ですがそのまま転記しています。)における執行役に関する次の記述の正誤をこたえよ。
ウ.取締役及び執行役は,いずれも,多額の借財の決定について,取締役会から委任を受けることができない。

答えは×です。
監査役会設置会社は、取締役会設置会社です。

327条1項 
次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならない。
一 公開会社
二 監査役会設置会社
三 監査等委員会設置会社
四 指名委員会等設置会社
327条4項
監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、監査役を置いてはならない。

前述のとおり、取締役会設置会社は、多額の借財の決定について取締役に委任できません。
しかし、委員会設置会社(指名委員会等設置会社)は、多額の借財の決定について執行役に委任できます。

本日の解説は以上です。
長文を最後まで読んでくださり、有難うございました。

Instagramのご紹介

Xやnoteにも法律イラストを投稿していますが、Instagramは一覧になっていて、復習する際に便利です。
イラストを見て、条文や判例がすぐに想起できるか試すことができるので、復習ツールとしてご活用いただけます。
最近インスタに力を入れておりますので、フォローいただけると嬉しいです。


いいなと思ったら応援しよう!