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平成25年予備試験商法 参考答案

令和6年5月3日付オンライン合宿の予備試験過去問ゼミで扱った問題の参考答案をつくりました。
出題趣旨を網羅しようとすると、4枚におさまらなくなるくらい書くことが多すぎたので、あてはめ薄めの仕上がりです。


第1 設問1
1 Aは、本件株主総会の取消の訴え(831条1項1号)を提起し、決議の効力を争うことができるか。
(1)AはY社の「株主」(831条1項柱書)である。また、本件株主総会は、平成24年6月1日付けであり、同年8月時点では、「3箇月」(同条同項柱書)を充たす。
2 では、「決議の方法が…法令…違反」(同条1項1号)を充たすか。
(1)Aは「株主」(314条本文)であり、「株主総会において」(同条本文)、取締役Aの解任理由という「特定の事項について説明を求められ」(同条本文)ている。この質問は「株主総会の目的である事項に関しないもの」(同条ただし書き)及び「株主の共同の利益を…法務省令で定める場合」(同条ただし書き)に該当しない。
必要な説明とは平均な株主が議題を理解できる程度の説明をいう。Bは「あなたもわかっているはずであり、答える必要はない。」としか述べておらず、平均的な株主が議題を理解できる程度の説明がなされたとはいえない。そのため、「取締役」(同条本文)たるBは「必要な説明」をしたとはいえず、314条違反がある。
よって、「決議の方法が…法令…違反」を充たす。
3 314条違反は、「重大でな」(831条2項)いとはいえないため、裁量棄却はされない。
3 以上より、Aは本件決議の効力を争うことができる。

第2 設問2
1 Aは、Y社の株式を15%保有しており、「発行済株式…の100分の3…以上の数の株式を有する株主」(433条1項柱書)である。また、Aは、株式交換比率の妥当性検討のためという「理由を明らか」(同条1項柱書)にして、適法に会計帳簿及び資料の閲覧請求をしている。
2 Y社は、433条2項3号を充たすとして請求を拒むことができるか。
(1)「請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み」とは、近い将来において競争関係に立つ蓋然性が高い場合を含み、主観的意図は問わない。
Y社は日本国内で新築マンションの企画及び販売を行う会社であり、Z社は関東地方を中心に中古不動産の販売を行う会社である。いずれも不動産販売という同種の事業を扱っており、販売エリアも関東地方という範囲で重複している。さらに、近い将来においてY社が中古マンションの販売を扱うことやZ社が新築不動産を扱うことも十分に想定できることから、近い将来競争関係に立つ蓋然性が高いといえる。
 Aは株式交換の交換比率を調査するために本件請求をしているものの、主観的意図は問われない以上、この事実は何ら意味を持たない。
 Z社の取締役はAとAの親族のみである。また、Aは、Z社株式の過半である67%を保有しているから、実質的にAとZを同視することができる。
そのため、「請求者」であるAが「当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営」んでいるといえる。
 よって、Y社は請求を拒むことができる。

第3 設問3前段 効力発生前
(1)株主総会取消の訴え(831条1項3号)
ア Aは「株主」である。「特別の利害関係を有する者」とは、決議により他の株主と共通しない利益を取得する者をいう。X社は、本件株式交換の相手方であり、有利な条件で株式交換をすることで利益を得ることができる。そのため、他の株主と共通しない利益を取得する者といえ、本要件を充たす。
Y社株式とX社株式の割合は10対3が適正であるところ、本件交換比率は10対1である。そのため「著しく不当な決議がされた」といえる。
イ 上記は「重大ではな」(同条2項)いとはいえないため、裁量棄却はされない。
ウ よって上記方法は認められる。
(2)差止請求(784条の2第1号)
ア Aは「株主」にあたる。前述のとおり、831条1項3号に該当し、決議取消事由があるため、「法令…違反」があるといえる。
本件株式交換比率での株式交換は、Y社株主の有する財産の価値を低下させるものであるため、「株主が不利益を受けるおそれ」があるといえる。
イ よって、上記方法は認められる。
(3)反対株主の買取請求(785条1項)
Aは、本件本件総会で株式交換の議案に「反対」(同条2項1号イ)している。そのため、「株主総会に先立って…反対する旨…通知」(同条2項1号イ)をしていれば、「反対株主」(同条2項柱書、同条1項柱書)にあたり、Y社に対し株式買取請求ができる。
(4)効力発生前に採ることができる手段は以上のものが考えられる。
第4 設問3後段 効力発生後
(1)株式交換無効の訴え(828条1項11号)
ア AはY社の「株主」(828条2項11号)である。無効原因は明文で規定されていないが、株式交換は利害関係を有する者が多数存在するため、法的安定性を重視すべきである。そのため無効原因は重要な手続上の瑕疵に限定されるべきである。
 そして、株式交換の承認決議に取消原因があることは、重要な手続上の瑕疵があるとえる。ただし、法律関係の早期安定の観点から株主総会決議取消の訴えと同様「決議の日から3箇月」前に訴えを提起すべきである。
 前述のとおり決議取消原因があることから無効原因があるといえる。また、前述のとおり平成24年8月時点であれば、「3箇月」以内であるといえる。
イ よって上記方法は認められる。
(2)損害賠償請求(429条1項)
イ Y社の「役員」であるBは、本件株式交換比率での株式交換をしているところ、交渉を尽くしたとの事情もない以上、善管注意義務(330条、民法644条)に反しているといえる。そのため、Bには「職務を行うについて悪意又は重大な過失」があったといえる。そして、Aは本来、Y社株式10株につき3株のX社株式を得るべきであったにもかかわらず、Y10株式につき1株のX社株式しか得られないという直接「損害」が生じている。
ウ よって、上記請求が認められる。
(3)効力発生後に採ることができる手段は以上のものが考えられる。



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