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【丸暗記からの解放】会社法をイメージで記憶する!会社設立物語第3話

この物語は、「ゆや たろうさん」(架空人物)が一人会社(株主ゆやさんのみ、取締役ゆやさんのみ)を設立するという物語をとおして、条文をご紹介したり、解説したりしていくものです。

司法書士として、数多くの会社の登記手続に関与してきた経験を活かし、中小企業の登記実務と会社法がどのように絡んでいるのかをお伝えしていきます。

会社法に苦手意識のある方々のお役に立てれば嬉しいです。

会社法は、イメージをしたもの勝ちです。この物語をとおして、少しでも会社法のイメージを掴んでいただけると幸いです。


第1話はこちら↓

第2話はこちら↓


「定款をつくっていこう」の巻 続編


前回は、定款の作成に着手し、絶対的記載事項を整理していきましたね。
ゆやさんは、引き続き、定款作成をすすめていきます。

今回もこちらの日本公証人連合会HPにアップされているサンプルを使っていきましょう。

(以下、サンプル定款の文言はこちらから引用⇒
https://www.koshonin.gr.jp/pdf/kaisya-teikan01_s_2021.pdf  )



発行可能株式総数を決定しよう❗️


今日は、発行可能株式総数を決めます。

「設立に際して割当を受ける株式数を10株にすることに決定したし、発行可能株式総数も同じにしておこうかな。」

(発起人の氏名ほか)
第26条 発起人の氏名、住所、設立に際して割当てを受ける株式数及び株式と引換えに払い込む金銭の額は、次のとおりである。
東京都○○区○町○丁目○番○号
発起人 ゆや たろう
10株、金100万円

サンプル定款

「いや、待てよ。
設立後、募集株式を発行して、増資することもあり得るかもな。
もし、発行可能株式総数を10株にしてしまったら、募集株式を発行するときに、発行可能株式総数を増やすための定款変更をしないといけなくなる。

それは面倒だな。

よし、じゃあ、発行可能株式総数は100株くらいにしておこう。」

ゆやさんの設立する会社の発行可能株式総数は、100株になりました。

(発行可能株式総数)
第5条 当会社の発行可能株式総数は、100株とする。

サンプル定款

ちなみに、公開会社の場合は、発行可能株式の上限規定があります。

(発行可能株式総数の定め等)
第三十七条三項
設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の四分の一を下ることができない。ただし、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。

公開会社の場合、募集株式の発行を取締役会で決定できる(有利発行を除く)ため、株主の関与がなくても発行済株式数を増やすことができます。


第百九十九条一項
 株式会社は、その発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式(当該募集に応じてこれらの株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式をいう。以下この節において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。
<一号から五号省略>
二項
 前項各号に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)の決定は、株主総会の決議によらなければならない。

第二百一条 第百九十九条第三項に規定する場合を除き、公開会社における同条第二項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。この場合においては、前条の規定は、適用しない。

取締役会が暴走して、発行済株式を10株から100倍の1000株にして
しまったらどうなるでしょうか。
そんなことをしてしまうと、既存株主の持株比率が様変わりしてしまいます。既存株主は黙っていないでしょう。
37条3項本文には、このような取締役会の暴走を抑止する効果があるわけです。

<注意>
募集株式の発行については、簡単な説明にとどめます。上記は、ざっとしたイメージを掴んでもらうための簡略化した記載です。ご理解いただけますと幸いです。

しかし、ゆやさんは、今回作る会社を公開会社にはしません。(公開会社にしないことのメリットについては、別の回で説明していきます。)

37条3項ただし書のとおり、公開会社でない会社の場合、発行可能株式総数の上限についての規定はありません。
そのため、ゆやさんは、発行可能株式総数を1000株にすることも、1万株にすることも可能です。

でもまぁ、今回は100株にしておきましょう。

次回、第4話「発行可能株式総数は必ず定款に記載すべき?の巻」 
                              (続く)

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