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条文操作力を鍛える過去問解説〜吸収合併、解散、清算結了〜
こんにちは。今日は予備試験商法の過去問解説をしていこうと思います。
平成26年予備試験商法第25問
株式会社を当事会社とする組織再編行為と登記に関する次の各記述の正誤を答えよ。
ア.吸収合併存続会社は,吸収合併の登記をした日に,吸収合併消滅会社の権利義務を承継する。
イ.吸収合併消滅会社の吸収合併による解散は,吸収合併の登記の後でなければ,これをもって第三者に対抗することができない。
ウ.新設合併設立会社は,その本店の所在地において設立の登記をした日に,新設合併消滅会社の権利義務を承継する。
答えは、次のとおりです。
ア ✕
イ 〇
ウ 〇
まずアの解説からしていきます。
ア.吸収合併存続会社は,吸収合併の登記をした日に,吸収合併消滅会社の権利義務を承継する。→✕
![](https://assets.st-note.com/img/1730610334-ect6OA7d0FIZfl1pxvq9Wj5m.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1730610320-4iNGvZ8WV7XICRzauhqP5c3D.jpg?width=1200)
登記をした日ではなく、効力発生日ですね。
吸収合併による変更、解散登記は吸収合併の効力要件ではありません。
(株式会社が存続する吸収合併の効力の発生等)
第七百五十条一項 吸収合併存続株式会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継する。
次にイの解説をしていきます。
イ.吸収合併消滅会社の吸収合併による解散は,吸収合併の登記の後でなければ,これをもって 第三者に対抗することができない。→○
これは条文そのまですね。
![](https://assets.st-note.com/img/1730610378-yp3GevQR8K7Cgbxl94rf2dV5.jpg?width=1200)
(株式会社が存続する吸収合併の効力の発生等)
第七百五十条二項 吸収合併消滅会社の吸収合併による解散は、吸収合併の登記の後でなければ、これをもって第三者に対抗することができない。
吸収合併による解散というキーワードが出てきたので、解散についても条文を確認していきましょう。
面倒な作業ですが、関連する条文も地道にひいていくと会社法の条文の全体像がみえてきます。
条文の全体像を掴むことができると、会社法の勉強がぐっと楽になります。
(解散の事由)
第四百七十一条 株式会社は、次に掲げる事由によって解散する。
一 定款で定めた存続期間の満了
二 定款で定めた解散の事由の発生
三 株主総会の決議
四 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 第八百二十四条第一項又は第八百三十三条第一項の規定による解散を命ずる裁判
消滅会社は、吸収合併の効力発生日に解散することになります。
解散したら通常清算手続きをする必要がありますが、前述のとおり、合併の効力発生日に消滅会社の権利義務は存続会社に承継されますから、清算手続は必要ありません。
そのため、合併による解散は、清算開始原因から除外されています。
(清算の開始原因)
第四百七十五条 株式会社は、次に掲げる場合には、この章の定めるところにより、清算をしなければならない。
一 解散した場合(第四百七十一条第四号に掲げる事由によって解散した場合及び破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く。)
二 設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合
三 株式移転の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合
ちなみに株主総会での決議により解散したような場合、解散しただけでは法人格は消滅しません。
清算手続きをして清算結了してはじめて法人格がなくなります。
(清算株式会社の能力)
第四百七十六条 前条の規定により清算をする株式会社(以下「清算株式会社」という。)は、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなす。
ちなみに令和4年にはこんな問題も出題されています。
令和4年26問オ
株式会社は、株主総会の決議によって解散した時に消滅する。
前述のとおり、これは✕ですね。
吸収合併による解散の場合、清算手続は不要ですので、吸収合併の効力発生日に消滅会社は法人格を失います。
消滅会社の合併による解散登記手続きは、存続会社が申請することになります。
申請書のひな型(一部)を載せておきます。
![](https://assets.st-note.com/img/1730095392-FV4ski3CWajItpdLubX1Jyqc.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1730095402-W7wdqUbcmiTOe8NyMX6QBAtI.png?width=1200)
最後に、ウを説明していきます。
ウ.新設合併設立会社は,その本店の所在地において設立の登記をした日に,新設合併消滅会社の権利義務を承継する。→○
吸収合併の場合は、存続会社はすでに存在している会社であるのに対し、新設合併の場合は、新しく会社をつくることになります。
そのため、新設合併の場合、新設会社の成立の日(=設立登記の日)に、合併の効力が発生日し、消滅会社の権利義務が設立会社に承継されることになります。
(株式会社を設立する新設合併の効力の発生等)
第七百五十四条 新設合併設立株式会社は、その成立の日に、新設合併消滅会社の権利義務を承継する。
(株式会社の成立)
第四十九条 株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。
本日は、以上になります。
長文を読んでくださり、ありがとうございました。