条文を眺めるだけの勉強から卒業!!会社法をストーリーで理解する!
この物語は、「ゆやさん」(架空人物)が一人会社(株主ゆやさんのみ、取締役ゆやさんのみ)を設立するという物語をとおして、条文をご紹介したり、解説したりしていくものです。
会社法に苦手意識のある方々のお役に立てれば嬉しいです。
会社法は、イメージをしたもの勝ちです。この物語をとおして、少しでも会社法のイメージを掴んでいただけると幸いです。
「定款をつくっていこう」の巻
ゆやさんは、定款を作ることにしました。
自分で一から定款を作るのは大変なので、こちらのフォーマットを利用しました。
定款のサンプルだけでなく、補足説明までついていて、非常に便利ですね。
今回は、サンプル定款のうち「小規模な会社」のものを利用していくことにします。
1条から27条までありますが、これは全部書かないといけないのでしょうか?
いえ、違いますね。定款認証前の定款に絶対に書かないといけない事項はこちらだけです。
第二十七条 株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一 目的
二 商号
三 本店の所在地
四 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
五 発起人の氏名又は名称及び住所
※発行可能株式総数も絶対的記載事項なのですが、定款認証前の定款に書いておく必要はありません。詳しくは第4話をご覧ください。
結構少ないですね。
定款サンプルの文言を見ていきましょう。(以下、定款サンプルの文言はこちらから引用⇒
https://www.koshonin.gr.jp/pdf/kaisya-teikan01_s_2021.pdf )
目的
(目的)
第2条 当会社は、次の事業を行うことを目的とする。
1 ○○の製造及び販売
2 ××の輸入及び販売
3 前各号に附帯又は関連する一切の事業
会社は、目的の範囲内で権利能力を有します。
民法の条文を見ておきましょう。
民法 第三十四条 法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。
まだ始める予定のない事業であっても、目的として定款に記載することが可能です。
設立後に目的を変更しようとすると、目的変更登記をする必要があります。
その場合、登録免許税が3万円(登録免許税法別表第1(24)(一)ツ)かかります。
ゆやさんは、今後するかもしれない事業についても目的に記載しておくことにしました。
商号
(商号) 第1条 当会社は、株式会社○○○○と称する。
商号は前回決めましたね。
前回の物語はこちら↓
本店の所在地
(本店所在地) 第3条 当会社は、本店を東京都○○区に置く。
本店所在地は、最小行政区画(市町村、東京都の特別区) の記載で足ります。
もちろん番地(〇丁目〇番〇号)まで書いてもOKです。
しかし、ゆやさんは、番地までは書きません。
それはなぜでしょうか?
会社設立後、同一市町村内で本店移転をしたとします。
定款に番地まで書いてしまうと、定款変更が必要になってしまいます。一方、定款に番地を書いていなければ、定款変更が不要になります。
1人会社の場合、他の発起人や役員との関係などに気を配る必要がないので、設立後の管理や手続きの容易さを重視しつつ定款を作っていきます。
ちなみに定款変更をするためには、特別決議が必要です。
第六章 定款の変更
第四百六十六条 株式会社は、その成立後、株主総会の決議によって、定款を変更することができる。
三〇九条二項
前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
十一号 第六章から第八章までの規定により株主総会の決議を要する場合における当該株主総会
ちなみに、今回設立する会社の株主は、「ゆやさん」一人だけです。
特別決議だろうと普通決議だろうと、ゆやさん一人の決断があればいいのです。
設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
(設立に際して出資される財産の価額及び成立後の資本金の額)
第23条 当会社の設立に際して出資される財産の価額は、金100万円とす る。
2 当会社の成立後の資本金の額は、金100万円とする。
サンプル定款には、資本金の額まで書いてあります。しかし資本金額は、絶対的記載事項ではありません。
定款で資本金額を決めない場合は、どうやって資本金額を決定するのでしょうか?
そうですね、発起人全員で決定していきます。
(設立時発行株式に関する事項の決定)
第三十二条一項
発起人は、株式会社の設立に際して次に掲げる事項(定款に定めがある事項を除く。)を定めようとするときは、その全員の同意を得なければならない。
一 発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数
二 前号の設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額
三 成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項
発起人の氏名又は名称及び住所
(発起人の氏名ほか)
第26条 発起人の氏名、住所、設立に際して割当てを受ける株式数及び株式と引換えに払い込む金銭の額は、次のとおりである。
東京都○○区○町○丁目○番○号
発起人 ゆや たろう
10株、金100万円
「発起人の住所、氏名」は、絶対的記載事項です。
一方、「設立に際して割当てを受ける株式数及び株式と引換えに払い込む金銭の額」は、絶対的記載事項ではありません。
では、定款で「設立に際して割当てを受ける株式数及び株式と引換えに払い込む金銭の額」を決めない場合、どのようにこれらを決定するのでしょうか。
そうですね。先程と同じです。発起人全員で決定します。
(設立時発行株式に関する事項の決定)第三十二条一項発起人は、株式会社の設立に際して次に掲げる事項(定款に定めがある事項を除く。)を定めようとするときは、その全員の同意を得なければならない。
一 発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数
二 前号の設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額
三 成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項
サンプル定款のとおり、絶対的記載事項以外にも定款に書いておいた方がいいことは、たくさんあります。
次回は、定款の任意的記載事項についてみていきます。(続く)