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11/16 稲毛 K's DREAM"忘却の曲線"高木フトシワンマン

act:髙木フトシ

 稲毛にあるライブハウス、稲毛k‘sDREAMにて行われた髙木フトシのワンマンライブ。オファーされてから約2年経過し遂に実現した髙木フトシの待望のワンマンライブだ。
 
 このライブハウスはアメリカのロックバンド、ニルバーナをリスペクトしていることで有名。店内にはいたるところにニルバーナのポスターが貼られている。毎年4月にはニルバーナのvo.カートの追悼ライブイベントが行われている。髙木フトシも毎年欠かさずこのイベントに参加しているのだ。髙木フトシ、彼自身もカートのことを好きだと語る思い入れのあるライブハウスだ。

 会場はライブハウスの地下にあるメインステージ。地下に続く階段を降り会場に入いる。入った瞬間、ステージの背面に設置されているスクリーンが目に飛び込んできた。スクリーンには今回のワンマンライブのフライヤーが大きく写し出されていた。このスクリーンを見ただけで激しくテンションが上がってしまう。この日のライブの期待値が一気に最高値まで急上昇するのを感じた。髙木フトシの過去のMCでライブハウスがこの日のワンマンライブの準備のために半端なく気合いを入れていると語っていたのだ。ライブが始まる前にしてわくわくが爆発しそうな勢いだ。そして、絶対に最高のライブになるに違いないと確信した。

 
 ライブスタート時間を少し過ぎたところでSEが流れ始めた。髙木フトシワンマンライブの開始である。始まりの曲はLost。静かにLostのギターを奏で静かに歌いだす。背後のスクリーンには映像が映し出された。幻想的な映像で沢山の丸い光が川の流れのように下へと流れている。映像と曲が見事に合っている。映像の前で髙木フトシが歌う。そのステージに目を奪われずにはいられない。視覚の効果は想像を遥かに超え素晴らしく、照明と映像が髙木フトシの歌の世界観をより一層引き立てていた。それは曲ごとに変化し見事に曲とマッチしていた。両サイドからの照明も効果的に髙木フトシの歌を装飾していた。

 この日の髙木フトシのワンマンライブのステージは今まで観たことのない光景だ。より鮮明に髙木フトシの歌世界に引き込まれていった。セットリストは重く暗めな曲が続き、ノイジーなギターの音が爆音となってアンプから響いていた。髙木フトシの歌声はいつになくシャウトがかっていてグランジを彷彿とするものだった。

12弦ギターに持ち替え、緑の深淵。緑の光に包まれながら歌う。幻想的で樹々の映像と歌が最高に溶け合っている。

 緑の深淵からSEへ切り替わり、高木フトシが客席に向かって「楽しもうぜ」と発した。楽しもうぜコーナーの始まりである。ここからは12弦ギターの派手な音色でアッパーな曲が続く。客席からは歓声が上がり、このコーナーは定番となっていた。観客の盛り上がり方は人それぞれで手拍子したり、体でリズムを取ったり歌ったりと自由に楽しんでいる。観客のテンションは最高潮に上がり曲が終わるごとに歓声が上がる。歓声の中に「フトシー!」と彼に向けての掛け声もあったりと史上最高に盛り上がりをみせていた。客席の盛り上がりと同じく髙木フトシの歌声も力強く会場に響かせていた。

 楽しもうぜコーナーで一通り盛り上がった後、静かにSEが流れる。このSEでテンション高く熱を帯びた会場はクールダウンする。重厚なギターの旋律が響き渡り、一気に会場の雰囲気が変わり重々しくなった。ニルバーナのSomething in the way。この曲は他のライブでも歌われているがk‘sDREAMで聴くと格別である。この曲の叫びはカートが憑依したかのようであった。

 SEを挟んでの15曲を一気に歌い切ったところでこの日初めてのMC。「いやーっもう終わってしまう」これが第一声だ。髙木フトシのこの第一声は最高に充実した時、まだ終わりたくないと言う彼の気持ちだろうか。こちらも同様の気持ちだった。
 
 この日のワンマンは約二年越しのオファーだと話し始めた。彼は今日、この日を楽しみにしていたと語っていた。この日をやっと迎えられたことの喜びを伝えていた。

 この会場にはカートの写真が飾ってある。「カートがいるからさー」と切り出した。ステージ上からどこ見てもカートが居ると。「俺さ。逃げ場がない。歌って手が抜けないと言うか」と言いカートの存在について話し始めた。過去に一回音楽をやめて、もう一回音楽をやらなきゃいけなくなった時の初心を思い出すと。ほんとに音楽をやりたくなかった。歌はほんと嫌だったと。その時にカートだけは大好きでカートだけが理解出来る存在だったと語る。髙木フトシの心の中にはカートは特別な存在だと言うことがわかる。

 カートがいる気がするライブハウスで歌いたかった曲と伝え曲紹介をした。

Death in the snowstorm。
 静かに髙木フトシが歌い出す。「自分には何もない」と絶望する感情が生み出され、徐々にこの感情が救いようがない絶望感へと変化していき感情がMAXに達した時。狂気の幕開けのごとく爆発的な熱量で憂いた絶望を叫ぶ。光に包まれた髙木フトシの表情は逆光で見えない。表情が見えない分、叫ぶ姿が迫り来る狂気、憎悪の感情をよりこの世界線を想像させていた。これは絶望感の渦、壮絶な嵐の中にいるようだった。存在を意義を見出せないまま悲しみ、心が絶望に襲われ、侵食され闇に落ちて行くような不気味な彼の歌声で静かにこの曲は終息した。髙木フトシが用いる全表現力でDeath in the snowstorm歌い上げていたように思えた。

 アンコールを受け再び登場の髙木フトシ「またやりたいな」と客席に向けて呟く。どうしてもhatehoneyの歌を歌いたいとBlueberry motelの曲紹介。ガットギターでBlueberry motelを静かに歌う。これはMCで語った初心の思いへの伏線だろうか。再びhateで歌うことになった時を思い出しての選曲なのだと感じた。

 最後はSLIDE。当初ガットギターでの予定だったのか準備を仕掛けたところで。何か思うところがあったのか。客席にガットが良いか?爆音が良いか?と問う場面があった。客席に挙手を求めて多数決でガットギターのSLIDEに決まった。彼が促すことなく観客は彼に向けてしっかりと手を挙げていたのがとても良き光景であった。観客は髙木フトシのこの日のパフォーマンスに満足しているのがわかる。髙木フトシ、
彼もまた表情が笑顔だった。爆音は封印され静かだが熱を帯びたSLIDEでこの日の髙木フトシのワンマンは幕を閉じた。
 ワンマンライブを終えて終始ライブハウスの髙木フトシ愛が満ち満ちていることを感じるライブだった。来年もまた髙木フトシ、ライブハウスの素晴らしいライブパフォーマンスが観てみたい。

 エビングハウスの忘却曲線というものがある。これは「一度記憶した無意味な情報を、時間が経過してから再度記憶する際に節約できる時間の割合」と記載されていた。(Google検索)
 今回のワンマンタイトル“忘却の曲”がここから取られたものかは定かでない。しかし、この忘却曲線から人の記憶をみた時、人は時が経つと記憶は薄れ忘れてゆく生き物であることが分かる。自分ごとではないとすると忘れる速度は早く簡単である。
 
 “忘却の曲線”

 人は時が経つと忘れてゆく生き物だとしたら、、、。日々、世界で起きている様々な事象はその時は強烈な出来事として人々は怒り、恐れ、悲しみ、、etcの感情を抱く。しかし、時間が経つにつれ記憶は薄れてゆく。自分ごとではないと一層その出来事があったことさえなかったことのように通常日常に戻っていく。しかし忘却することで人が前に立ち向かうことが出来るにではないかとも思う。
 今回、このワンマンで歌われた曲は遠い何処かで起きた出来事、例えば戦争、天災など想起される。また忘れていた自分の過去の出来事を思い出すこともあった。
 自分からは遠い場所の出来事は忘れていってしまう。本当は忘れてはいけないことなのかも知れないが。当事者にとっては出来事を忘れないでいてほしい思っていたりすることもあると。。立場によって思いは様々。忘れたい記憶、忘れちゃいけない記憶、忘れて欲しくない記憶、忘れていて欲しい記憶、忘れられない記憶、、、etc 
 
 髙木フトシの歌を聴くことで忘却していた出来事、感情があったことに気づく。忘却の曲線を描いていた。(エビングハウスの忘却曲線の概念とは逸脱してる。。)
 彼の後日のブログにこの日にワンマンに込めたメッセージについて記されていた。

“今は良くてもね、必ず忘れられる。
そんな下り坂の曲線。
自分のことでもあり、みんなのことでもあり。
けど、長く、もう長い間、忘れられないことがあり。
なんか、思い出すことが多いことってあるなぁと。
けど、下り坂の曲線。
それは受け入れていたいなぁと思って。
そんなメッセージを持って挑みました。”

(髙木フトシ公式HP 2024/11/18ブログより転載) 

 私は2024年11月16日と言う日の記憶は忘却曲線に抗ってみたいと思う。この日は最高に楽しい1日で髙木フトシは宇宙一最高な歌を聴かせてくれた。


稲毛K‘sDREAM 2024/11/16 SET

SE 01
01 Lost
02 Where
03 無知の支配

SE 02
04 Illusionary eyes
05 Graphic pain
06 Eisweinsong

SE 03
07 Unbirthday
08 Clown smile and lies

SE 04
09 Cold
10 緑の深淵へ

SE 05
11 Even if it evil
12 Lost mercury
13 No one knows that fact

SE 06
14 Something in the way
15 What

Mc
16 Death in the snowstorm
17 Blind / Blind

En
01 Blueberry motel(the hatehoney)
02 SLIDE

髙木フトシ公式HP 2024/11/17ブログより転載


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